my disc of the year 96





 1996年ももうすぐ終ろうというところで、ここはやっぱりホメパギャーの「お約束」のマイ・ベストものを。個人ページらしく、昨年同様「たぶん今年発売されたと思う」→「その辺に転がってるCD」をざっと見回すスタイル(調べりゃ分かるんだろうけど、労力の割りに意味ないので、発売年って)。


●ってことで、この1年間、何度もトレイに突っ込んだディスクはいずこと探してみると、いきなり苦戦模様。新譜として出た中でムチャクチャお世話になりました系が昨年に比べると少ない。つうか、全然ないかも(笑)。聴いた絶対量の問題かなあ。DISC WOW参照すれってやって逃げるかとも思ったんだけど、そりではあんまり。で、順不同で捻り出せな満足系。愛着の強さ、体験の深さ、ではなく、消費の喜びという道楽者的基準でGO! そう、キーワードは「道楽」。

●モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ集(ヒロ・クロサキ)

 まずは、ヒロ・クロサキのヴァイオリン、リンダ・ニコルソンのフォルテピアノによる、モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ集(ワーナー:WPCS4962/5)。4枚組でまとめて16曲の快楽の宝庫。で、一般的にこのディスクについてまず聴いてなくても言えそうなのは(苦笑)、3つほど。オリジナル楽器だからこそのニュアンスの豊かさ(弓も3本使い分けてるし)、ヒロ・クロサキの音楽的オリジンはやっぱりウィーンにあるんだなと感じさせられる、曲的にはヴァイオリン付きピアノ・ソナタなのでリンダ・ニコルソンはうまいなあと褒める、って3点。が、ここはもっとプリミティヴに、これらの曲の水準高げな演奏が古楽器でようやく聴ける(まあ、過去にも多少はあったけど)ってレベルで感謝するという、道楽者路線を走りたい。モダンのピアノと弦楽器って、やたら押しつけがましいピアノの金属的な響きが耳についてなんかヤだなあってクラシック聴きはじめた頃に思いませんでした? その辺の響きの自然さっての得るにはやっぱりフォルテピアノ必須だろーみたいな。と言いつつもグリュミオー&ハスキルなら全然満足とか矛盾もあるんだけどさ。

●ギャヴィン・ブライアーズ/farewell to philosophy、吉松隆/サイバーバード〜須川展也サクソフォン協奏曲集

 お次は、現代の作曲家関係を2つ。まず、ギャヴィン・ブライアーズのfarewell to philosophy (POINT MUSIC:454-126-2)。表題作はジュリアン・ロイド・ウェッバーに献呈されたチェロ協奏曲で、farewell(=告別) to philosophy(→哲学者)ってことで、やはり傑作チェロ協奏曲を書いているハイドンがタイトルに隠されてる仕掛け。「どこを切ってもブライアーズ」、基本的にディスクはデフォルトで「買い」。そういやこの人の来日公演行ったのって今年だっけ去年だっけ?(ボケ気味)。
 もうひとつは、吉松隆/サイバーバード〜須川展也サクソフォン協奏曲集(東芝EMI: TOCE9152)。吉松作品以外はグラズノフ、ドビュッシー、イベールの純サクソフォン作品のアルバム。ロンドンまで行ってフィルハーモニア管と録音、オーケストラのメンバーがソリストの巧さに舌を巻いたってウワサの一枚。曲、美しい、演奏、うまい。ゆえに大吉。
 もうちょっと硬派な現代音楽もいろいろ買ってはあるんだけど、そっち系はCD袋に寝たままになりがちなのは、1996年がそういう年であったという時代の要請のせいにしてしまおう。いきなり97年に急激にそっちに向いてしまうって可能性もあるんだし。

●ブロムシュテット、バルビローリ、新旧シベリウス

 お次、シベリウスの交響曲。どういうわけかシベリウスが苦手で、ニールセンなら肌に合うというワタシとしては、フットボール的にもフィンランドよりもデンマークがんばれ、すなわちリトマネン@アヤックスよりラウドルップ@ヴィッセル神戸に心情的に傾きがち。ってのは関係ないが、とにかくブロムシュテット/サンフランシスコ響のシベリウス/交響曲全集をちょっとズルしてゲット。特に6番、3番を聴きたかったってのと、ニールセンのほうで同じコンビにお世話になってるのでって合わせ技ワンセット。やっぱ、いいじゃん。晩秋のホメパゲ作りの友となって、アップデイトしながら聴きの堕落した喜びを得る。勢い付けて、バルビローリの5番&7番も国内盤で安くなって出直してるので買って(名盤だけど聴いたことなかった。そんなもんっす)、さらに感動。5番の1楽章のおしまいのプレスト、最強だなあ、これって(←いかにもシベリウス分かってない系かもしれない感想、われながら)。新譜から話がずれるけど、この東芝のグランドマスター1700ってシリーズ、買い漏らした過去名盤拾うにはすごくいいかも。ケンペとかクリュイタンスとか。

●バーバーのヴァイオリン協奏曲他

 バーバーのまだ知らない音楽聴きたいって欲求一時的に高まる。「弦楽のためのアダージョ」って超よく出来た名曲で、道楽者にお手軽な抒情を与えてくれることにかけては最強の愛すべき9分間なんだけど、もっと他にも聴きたくなって、スラトキン/セントルイス響のバーバーを。イチオシはヴァイオリン協奏曲(竹澤恭子)、チェロ協奏曲(イッサーリス)、カプリコーン協奏曲の3曲入って強まった一枚(RCA 09026-68283-2)。特にヴァイオリン協奏曲が泣かせる旋律横溢、輝かしいドラマティックな作りがカッコいい、洒落っ気もたっぷりで、音楽の喜び256%増し(当社比)。96年にこだわらなきゃギル・シャハム&プレヴィン/ロンドン響っていう相当オススメな選択肢もDGにあり。こっちは併録にコルンゴルドのヴァイオリン協奏曲。

●あとはビオンディのバッハ/ヴァイオリン・ソナタ集(Opus 111)とか。全然新しい録音じゃないけど、前から探してたオリヴィエ・ボーモンのラモー/LES INDES GALANTESのチェンバロ版(ADDA)が見つかったのが嬉しかったっす。ピアソラ大ブレイク中? すんません、96年最大のトレンドを聴いてなくて。(96/12/21)



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