今週の音楽家はこの人だっ!


9月24日

アンジェイ・パヌフニーク
Sir Andrzej Panufnik
(SEP/24/1914--OCT/27/1991) 生きてれば81歳

ポーランドで生まれ、イギリスで活躍した作曲家。小澤征爾指揮ボストン交響楽団の演奏で、交響曲第8番'Sinfonia Votiva'がハイペリオン・レーベルに録音されている。

9月22日

ヘンリク・シェリング
Henryk Szeryng
(SEP/22/1918--MAR/03/1988) 生きてれば77歳

バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」などが代表盤として知られる大ヴァイオリニスト。ポーランドで生まれたメキシコへ。ドイツで最期を迎えた。

9月21日

グスターヴ・ホルスト
Gustav Holst
(SEP/21/1874--MAY/25/1934) 生きてれば121歳

ホルストといえば組曲「惑星」。冨田勲のシンセ版や80年代のSFブームが貢献してか、多くのレコードではジャケットを土星の絵が飾った。しかし、本来ここでの「惑星」とは占星術からヒントを得て性格付けられたものであり、未来的なイメージはない。作曲当時まだ冥王星が発見されていなかったため、曲は7曲しかない(もう一つないのは「地球」だ。占星術だからね)。吹奏楽向けの組曲も有名。

9月17日

ダヴィッド・オイストラフ
David Oistrakh
(SEP/17/1908--OCT/24/1974) 生きてれば87歳

ウクライナ生まれの旧ソ連の大ヴァイオリニスト。昔のことを知っている人に聞くと、オイストラフが初来日したときは大変な騒ぎだったらしい。「ソ連から天才が来日する」ということで、ニュースなどでも報道され、また共産圏から大物クラスの演奏家が来日すること自体これが初めてだったそうで、一種社会問題化するほどのホットな話題になったという(すべて伝聞)。「幻の演奏家」といったフレーズが日本で使われた最初の演奏家という話もある。最近、東芝EMIから彼の映像がまとめてLDで発売され、リヒテル、ロストロポーヴィチ、ロジェストヴェンスキーといった大御所と共演している古い映像が見られる(モノクロ)。

9月17日

イサン・ユン
Isang Yun
(SEP/17/1917--NOV/03/1995) 追悼。78歳

韓国を、そしてアジアを代表する長老作曲家。ずっとベルリンで教鞭をとっており、日本人で彼に師事した人も多いはず。10月末からの北九州国際音楽祭では委嘱作が披露される。

9月15日

ブルーノ・ワルター
Bruno Walter
(SEP/15/1876--FEB/17/1962) 生きてれば119歳

フルトヴェングラー、トスカニーニらと並ぶ巨匠指揮者として知られていた。ベルリン生まれ。独裁派ではなく穏健派の印象が強いが、リハーサル風景のCDを聴いてみると決して優しいだけのオジサンではない。ドイツ・オーストリア系の音楽を中心に、名盤を残している。ベートーヴェンの「田園」は一頃決定盤(ヤな言葉ですが)のように高く評価されていた。しかし今の耳で聴くと、弦のポルタメントがちょっぴり気持ち悪いかも。

9月13日

アーノルト・シェーンベルク
Arnold Schoenberg
(SEP/13/1874--JUL/13/1951) 生きてれば121歳

「この発見により今後100年間ドイツ音楽の優位は保たれるであろう」と語り「12音技法」というメソッドを開拓した。調性を捨て1オクターヴの中の12の音を平等に扱う、音列を作りそれに一定のオペレーションを加えて展開させる……。誰が見ても間違いなく20世紀音楽に決定的な一つの方向性を与えたわけだが、ドイツ音楽の優位はまったく築かれることはなかった。彼の作品で最もよく聴かれているのは「清められた夜(浄夜)」、「グレの歌」と、いずれも12音技法によらないスーパー・ロマンティックな作品なのだから、歴史は分からない。
 しかし、ほとんどのピアノ作品、弦楽三重奏曲、「モーゼとアロン」、ピアノ協奏曲といった、より硬派な作品群も歴史の淘汰に耐えた傑作である。

9月8日

アントニン・ドヴォルザーク
Antonin Dvorak
(SEP/8/1841--MAY/1/1904) 生きてれば154歳

 ボヘミアの大作曲家。9つの交響曲があり、交響曲第9番「新世界より」はあまりに有名。交響曲第8番(まれに「イギリス」などと呼ばれる)もよく演奏される。一頃、「ドヴォルザークの交響曲は第9番から順に遡って人気が増してきた」というようなことが言われていた。すなわち、第7番、第6番も傑作。

9月8日

ピーター・マクスウェル・デイヴィス
Peter Maxwell Davies
(SEP/8/1934--) 60歳

 現代イギリスの作曲家。「ブリタニカ・オンライン」によると「アヴァンギャルド」の作曲家ということになるが、これには?と思う人も多いだろう。どちらかと言えば穏健派。

9月6日

アントン・ディアベリ
Anton Diabelli
(SEP/6/1781--APR/7/1858) 生きてれば214歳

 ベートーヴェンの力作「ディアベリの主題による変奏曲」でその名を知られるディアベリ。この変奏曲、主題は退屈であるにもかかわらず、その変奏の見事さで名曲の名を勝ち得ている、さすがベートーヴェン……と一般的には思われがち。気の毒な作曲家である。しかしディアベリにすればいい迷惑だ。他人の作品の中で引き合いにされる小さな主題ではなく、ちゃんとオレの作品を聴いてくれとボヤきたくもなるだろう。

9月5日

ジョン・ケージ
John Cage
(SEP/5/1912--AUG/12/1992) 生きてれば83歳

 アイディア溢れる実験主義精神、偶然性の音楽、プリペアド・ピアノなどで知られるジョン・ケージ。超大雑把にアメリカ音楽に二つの流れを見てとるとすると、一方にヨーロッパ音楽の流れを組んだアカデミックな作品があり(コープランドとかピストンとか。今のアメリカのメジャーオケの定期演奏会でスポンサー付きの上演が行われるような曲は大概こっち)、その対岸にはアイヴズ、カウエル、ケージ、パーチらの非伝統的、非西欧的な音楽がある。カウンターカルチャーが(も)もてはやされるインターネットの中では、したがってケージ関連のサイトも少なくない(Links参照)。

 出世作「プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード」は通常のピアノに仕掛けを施してさまざまな音色を1台のピアノから引き出す名作。録音も多い。「南のエテュード」のように南半球の星図の上に、えいやっとトレペを置いて易で星を選択し五線符に写し取るといった、甚だ非論理的な偶然性の音楽もあれば、「イン・ア・ランドスケープ」や「ドリーム」のように調的で誰の耳にも美しい音楽もある。かの有名な「4分33秒」は演奏者がピアノの前で「何もしない」という作品。楽器が音を出すのではなく、聴衆がかすかな環境音を聞き取るというところに意味がある。「音をあるがままに聴く」というケージのコンセプトには確かにかなった曲?だが、名のみ先走って有名になっている感もあり。ケージのCDは山のように出ているので、まずはどれかを手に取るのが先決(もっとも恐ろしいことに「4分33秒」のCDまで存在するが)。


9月4日

アントン・ブルックナー
Anton Bruckner
(SEP/4/1824--OCT/11/1896) 生きてれば171歳

 代表作である9つの交響曲のほとんどが1時間を超えるという「重厚長大」な作品群を書いており、始終TVのチャンネルをガチャガチャ(ふ、古い)やっているようなタイプの人間には厄介な作曲家だ。ましてやネットサーファーが好んで使う cool といった形容詞とは無縁。しかし一度、その壮大さや敬虔さに心打たれると、もはやブルックナーの呪縛からは逃れられないと言われる。これから聴こうという向きには明快な交響曲第7番がおすすめ。さらに交響曲第4番「ロマンティック」、第8番、第9番あたりが代表作とされる。長調が好きなら4、7、短調なら8、9か。少しかじってくるとおもしろいのが第5番。終楽章で、1、2楽章を引用したり、対位法的に凝るためにわざわざソレ向きの主要主題を用意してフーガ風の展開をさせるなど、仕掛けが濃い。この作曲家につきまとう野暮ったい印象は今さらいかんともしがたいが、思いっきりメリハリが効いたスケルツォとトリオの対比や、アレグロ楽章での金管楽器の咆哮などにはカタルシスもあり。

9月3日

ピエトロ・ロカテッリ
Pietro Locatelli
(SEP/3/1695--MAR/30/1764) 生きてりゃ300歳

 イタリアの作曲家、ヴァイオリニスト。今年生誕300年を迎えて全世界的に記念イヴェントが盛大に行われている……かどうかは寡聞にして知らない。ヴィルトゥオーゾとして知られ、ヴァイオリンの技巧の発展にも大きく寄与したと言われる。イタリア・バロックの魅力を満喫させてくれる作曲家。合奏協奏曲集などが代表作。

9月1日

小澤征爾
Seiji Ozawa
(SEP/1/1935-- ) 60歳

 なんともう還暦である。白髪が増えたとはいえ若々しい。アメリカ、日本はもちろん、ヨーロッパでも八面六臂の活躍を続ける。松本で毎年開催されるサイトウ・キネン・オーケストラとの演奏会は、チケット入手の難しさで有名。CDではそのサイトウ・キネンとのチャイコフスキー/交響曲第4番が発売されたばかりだ。国内盤では初回特典としてリハーサル風景のシングルCDが付いているのがファンには嬉しいかも(マーキュリー PHCP5340)

8月31日

イツァーク・パールマン
Itzhak Perlman
(AUG/31/1945-- ) 50歳

 イスラエル生まれのヴァイオリニスト。ギドン・クレーメルと並んで現代を代表するヴァイオリニストとされる。これを書いていて偶然気がついたのだが、パールマン、小澤征爾、バーンスタインという誕生日の近い三者がそろったCDが最近発売されている。バーンスタイン作曲の「セレナード」をパールマンのヴァイオリン、小澤指揮ボストン響で演奏したというもの(国内盤は東芝EMI TOCE8671)。他にバーバーのヴァイオリン協奏曲、ルーカス・フォスの「3つのアメリカン・ピース」を収め「アメリカン・アルバム」と題されている。日本では冷遇されがちなアメリカ音楽の価値を知らしめる親しみやすい一枚。

8月28日

カール・ベーム
Karl Boehm
(AUG/28/1894--AUG/14/1981) 生きてれば101歳

 生前はカラヤン、バーンスタインと並ぶ大巨匠として称えられていた大指揮者。最晩年には「日本で最も人気のあるジイさん」と呼ばれていた(ウソ)。晩年にウィーン・フィルと来日、ベートーヴェンの交響曲第2番&第7番のプログラムで公演を行ったが、その時の模様はNHKの追悼番組で「指揮者だけを映し続けたアングル」で放送されたという、それくらい敬意を払われていた巨匠だったのだ(その身振りはおそろしく控え目)。没後は不思議と話題に上ることが激減、これからは「カール・ベーム知らない世代」のリスナーも増えると思われる。まだ聴いたことがないという方にはモーツァルト、R・シュトラウス、ベートーヴェンあたりがおすすめ。ドイツ・オーストリアの伝統の具現者。

8月25日

レナード・バーンスタイン
Leonard Bernstein
(AUG/25/1918--OCT/14/1990) 生きてれば77歳

アメリカが生んだ最大の指揮者の一人。ピアニスト、作曲家、教育者としても活躍した、なんてことは誰もが知っている。作曲家としてのバーンスタインを評価しない人もいるようだが、没後なおその作品が演奏され続けている以上、「指揮者としても作曲家としても大成功した現代では稀な音楽家」と言わざるを得ない。代表作はもちろん「ウェスト・サイド・ストーリー」。さらに序曲単独でも人気が高い「キャンディード」、ケネディ大統領を追悼した交響曲第3番「カディッシュ」、歌詞はミサ通常文だが編成はロック・バンドやら踊り手が入ってどう見ても通常ではない「ミサ」など。他にも「エレミア」とか「不安の時代」とか「セレナード」とか、結構名前くらいは聞いたことがあるような作品がいくつもあがるわけで、やっぱり彼は聴衆に愛された作曲家なのだ。
 指揮をしてもピアノを弾いてもカッコいいのがバーンスタイン。だからピアノと指揮を兼ねたベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番の映像(東芝EMI)なんて無茶苦茶カッコいい。


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