モバイルPC購入&使用体験記 FMV-BIBLO NC13D

富士通 FMV-BIBLO NC13Dを買ったのだ。買い物をすると嬉しくなるので調子に乗ってこんなページまで作ってしまった(←バカ)



 モバイルPC? んなの何に使うのさ。関係ないっす。と思っていたが、その欲望は突然訪れた。ある日、唐突に携帯用のPCが猛烈に欲しくなったのだ。ちょうど仕事のピークを乗り切った頃、ムラムラと何かを購入したい衝動が湧きあがってきた(あまりにありがち)。欲望は満たすためにある、に違いない。

まずは用途を絞って考えてみた。理論派物欲王なのか

 ノート・パソコンはデスクトップに増して高価だ。いくら物欲大魔王と化したあげくのお買い物とはいえ、まるで使いもしないものを買うわけにはいかない。では、何のための携帯PCか。本質的には自分に買い与えるオモチャであるとはいえ(笑)、この辺をはっきりさせておかないと、電気街に出かけていってもひたすらオロオロするだけの優柔不断野郎になりかねないので、これだけは前もってしっかりと決めておいた。

 ワタシの場合、条件は、まずモノを書けること。それから、メールの送受信ができること(できればFTPも)。この2つができれば、まあいいだろうと。それも前者と後者の必要度は9対1くらいの感じ。あとは携帯性との兼合いのみ。
 最初は、この用途を満たすためには何もWindows95がなくても、それに目的を特化したようなマシンがあればいいのではないかと考えた。たとえばDOSマシンでも機能は十分果たせるのだから(なにしろDOS用のウェブ・ブラウザまであるんだし)。実際、同じく富士通のINTERTop(なぜかCMキャラクターがジャイアンツの松井)のようなタイプの携帯ツールがあれば、目的は達せられるうえに財布の痛みも小さくて済むんじゃないか。別段Win95なんて大仕掛けは要らない。

 が、それでもWin95機を求めてしまう理由はたった一つ。日頃使っているデスクトップと同じ日本語入力環境が欲しいってこと。モバイル機であれ何であれ、キーボードに向かったら常に同じ操作で同じ動作をしてくれることを期待しないわけにはいかない。日本語入力をしていて、文節の切れ目を右にずらしたいと思ったら、脊髄反射で「コントロール+F」とか、そういう指に覚えこませた癖ってものがある。こういったキーのカスタマイズは、DOSアプリでも不可能ではないが、どうしても細部で一致させられないところが出てくる。シンプルにいきたい。なるべく余計なことを考えずにすむように、そしてモバイル環境とデスクトップ環境で頭を切り替えるといった器用なことをしなくてもすむように。
 つうわけで多少の出費を覚悟して、結局、最初からWin95機に絞って機種を選ぶことにした。

で、何を買うのか

 6月のボーナス・シーズン前ということもあって、各社の新製品が出るという季節。まだ専門誌に使用レポート等が掲載される前だったので、ウェブ巡りをして主だったところを調べてみた。その結果、3種類の選択肢があるなと自分なりに勝手に分類して解釈(現時点ではさらに新モデルが出てるので多少事情が違うかも。詳細はリンクたどるが吉)

1) 携帯性優先:東芝のLibretto。Win95だとこれしかない、ホントに小さくて軽いものは。DOSマシンでもいいのなら他にもあるが……。もっとも安価な選択肢(これはじうようっす)。20万円を切れる。

2) 使用感優先:B5サイズまでガマンする代わりに、キーボードが打ちやすくて画面も広いものを、という案。1.5〜2kg強。画面は800×600も狙える。IBMのThinkPad 535、PanasonicのLet's Noteなどなど、選択肢は多い。ただしおおむね高価。30万円台前後か。

3) 妥協案:携帯性も使用感も少しずつ犠牲にすることでそれなりに満足しようという、煮えきらない案(笑)。富士通のFMV-BIBLO NC13D、日立のFlora210 (DSTNタイプとTFTタイプがあり)。1kg強。20万円ちょっと。いわゆる各社のChandora仕様っていう手もあるわけだが、あれはお値段がワンクラス上である(30万円弱か)等々の理由によって最初から考慮せず。

 もし「携帯性優先」のLibrettoが用途に合致してさえいれば、これは一番いい。値段も安いし、圧倒的な小ささ自体がマシンの魅力を高めている。すなわち「うぉー、こんなに小さいのかよぉ〜」っていう視覚的な感動っすね。人に自慢できそー。さらにバッテリー駆動時間も長い。もしかすると唯一ホンモノの携帯Win95機か。問題は、果たしてあんなに小さなキーで、ブラインド・タッチが可能なのかどうか。で、店頭で実際に触ってみると、ワタシの指ではまるでブラインドで打てない。人によっては打てないこともないようだし、短いメール書き程度の用途ならこれでもOKだろうが、仕事でもそれなりの長さの文章を打つことになることを考えると、もはや絶望的。最も「欲しいっ!」と思わせるマシンであったが、キーを自在に打てるように指を削るというような肉体のカスタマイズができるはずもなく、やむなく諦める。

 では、「使用感優先」の案はどうか。B5まで許せば、キーを打つことに関しては何の問題もない上に、SVGAの画面まで手に入れられる。画面が広ければ、2画面のエディタを広げられるので、テキスト入力環境としては最高だ。まさにデスクトップ環境そのまま。が、いかんせん重い。2kg前後の重量があるものを毎日のように持ち歩くのは、それなりの決心が必要というもんだ。こんなものを持ち歩いておきながら、さらに本屋で「インターネットマガジン」でも買おうものなら、もはやモバイル拷問状態。しかもカバンの巨大化は避けられない(悲しい)。車で移動する方や、「どこへいってもどうしてもPCを使わなきゃいかんから、多少重くてもガマンできる」という固い意思と決意を持ってPCと付き合おうという方ならともかく、ワタシの場合はこのクラスを使うのはムリがあると判断。

 つうわけで、「煮えきらない妥協案」である。A5サイズという、なんとかフツーのカバンにも入れられるサイズで(当然手帳だのなんだの他の荷物も入れるという前提)、ブラインド・タッチが一応はできるというキー・ピッチを持った微妙な線。携帯性も使用感もともにある程度満たすということは、別の言い方をすればどちらも満足させられない役立たずという見方もある(苦笑)。富士通のNCシリーズへの専門誌等の評価が辛めなのもしょうがない。事実、軽くて小さいといっても、本体の他にACアダプタだの増設バッテリだのが加わればカタログから感じられる以上の重さ・大きさになってしまうし、その割には640×480の7.2インチの画面というのはなんだか報われない気もする。
 さらに言えば、バッテリーの問題がある(後述)。BIBLO NCにしろ、フローラ210にしろ、電池が持たないのだ。この辺も妥協が必要。

 そんなわけで、いろいろ調べてみたところ、一つの結論にたどり着いた。満足できる商品など一つもない(笑)。まだまだこの分野は未完成だなという重い、ぢゃなくて、思いが強まってブルー入る。だが、ここまで盛り上がった物欲を引っ込めるわけにはいかない。しかもいったん秋葉原に足を踏みいれると、人間の物欲は16倍くらい強まる(当社比)。「今日はとりあえずいろいろ分かったから後日また考え直そう」と思って魔の街を後にしようとしたところから記憶が薄れ、ふと気がついたら汗ばんだ右手にコンパクトなBIBLO NC13Dの箱がしっかりと握りしめられていた(しかも増設バッテリまで→必須)。最初から「待つ」などという選択肢が用意されていないところが物欲ってもんだ。南無〜。

まずはセットアップ&インストール。めんどくさげ。

 近頃のパソコンはちゃんとOSが最初から入っているから、電源入れて簡単なセットアップの儀式がすめば、もうWin95が使える。アプリのインストールもWin95なら簡単だ。と思っていたら思わぬ陥穽が。当然ながらCD-ROMドライブはない。したがってフロッピーでデスクトップからピストン輸送できるようなタイプのものならいいが(といっても十分めんどくさいけど)、CD-ROMからインストールする必要があるものではそれなりの手順が必要だ。
 一番いいのは、その辺のお友達からドライブを借りてしまうことだろう(買えればもっといいんだけどさ)。どうせ普段は使わないわけだから、最初さえあればいい。
 が、ワタシの場合、不幸にもそうはいかず、Win95の「ケーブル接続」を使って、デスクトップ機のCD-ROMドライブからデータを引っ張ってくることにした。失敗だったのは、この時にシリアルで接続してしまったこと。これがどうしようもなく遅い。いろいろと設定をいじってみたがそれでも遅い。曖昧な記憶によれば、30メガ程度のデータを転送するのに、1時間半以上かかったような気がする(苦笑)。パラレルで接続すればずっとマシという話をすっかりと苦行が終わった後で知ったのである。

PC持って街に出よ。BIBLO NC13Dのマルとバツ

 さて、いよいよ街に出た。この原稿も全部外で書いている。そこでNC13Dの使い心地を◎、○、△、×の4段階評価で項目別に。ただしあくまでこれまで述べてきたワタシの使い方って視点での話なので、用途が違えば評価も違う。

○キーボード

 最初に店頭で触った感触からすると、ブラインド・タッチは可能だが多少の慣れは必要か、とも思ったんだが、実際使ってみると全然問題なし。おもちゃみたいなキーだが、これでもこのサイズなら他機種に比べてもいい方なのでは。ウィンドウズ・キーなど、別になくてもいいキーもいくつもあるが(Ctrl+Escでいいわけだから)、まあそれを言ってもしかたがない。キー配列に関しては、98からの乗り換え組なので、何が良くて何が悪いのかはよくわからず。フリーソフトでCapsLockとCtrlを入れ替えて、右AltでIMEが立ち上がる設定にできたので、特に不満なし。ホームポジションのキー(FとJ)には触って分かるようにキートップ下部が少し盛り上がっているのも親切。

○ポインティング・デバイス

 スペースバーの下に位置。ポインティング・デバイスだけを使って操作する分には使い勝手はいいのだが、指をホームポジションに置いたままで使おうとすると、親指で触るしかないわけで(しかも結構遠い)、ちょっと辛い。でも欲張らずに、潔くキーボードから指を離してしまえばこれでいいかって気もする。キーボードで文章を打つようなときはWindowsのショートカット・キーを使えばほとんどポインティング・デバイスは使わないわけだし、ネットサーフィンするようなときはポインティング・デバイスに指べったりという使用スタイルでいけば、まあ○かと。

△画面

 DSTNであることにはさほど不満なし。横から画面を覗きこまれる心配がないからいい(ってのは負け惜しみか)。むしろ、同じA5サイズでももっと画面を広く取れるんではないかという点が△。もっともそれでは価格も上がってしまうだろうから、難しいところ。

△デザイン

 本体それ自体のデザインは悪くない。あと、モデムを内蔵しているのもすっきりしてくれてワタシは好き(側面にモジュラー・ジャックが付いている)。が、背面にポート・リプリケーターor増設バッテリを排他利用で取り付けるんだが、これらの付け替えが結構面倒。FDのコネクタが本体の側に付いててくれればなあ。ってのは職場のネットワーク環境ゼロなワタシだからこその要望なのか?

◎CPU、HD

 エディタ文章を打って、あとはメールの送受信、他はたまにネットスケープを立ち上げるって程度の使い方なので、Pentium/133、HDが1Gともなれば十分すぎるくらい。メモリーさえあれば488/66でもよかったかも(笑)。

○サスペンド

 NCシリーズの前モデルNC/Sでは蓋を閉めてもサスペンドしなかったらしい。NC13Dではちゃんとサスペンドしてくれるので○。

×バッテリー

 これは弱点。増設バッテリは必須。カタログ値は増設バッテリを付ければ2.5〜5時間OKとなっているが、実際に使ってみた感覚からすると(省電力等の設定はデフォルト、作業は秀丸エディタで文章を打つのみ)、1時間をほんの少し越えたところで電池容量が50%を切ってしまう。CPUのクロックをhalfに設定してもまず5時間も使えることはないと思うぞ→カタログ。もっともカタログ値があてにならないのはどのメーカーも似たようなもんだろうな、きっと。2時間までを安全圏と見た。もし増設バッテリが安ければ、2個買っておいて充電しておいたものを予備バッテリとして持ち歩くという手もないことはないが、2万円もするのではなあ。真の携帯Windowsマシンへの道は険しい。

△携帯性

 本体だけなら非常に軽くて小さい。1.1kg。増設バッテリを付けると1.5kg弱くらいになるが、まあそれでも持ち歩いていて「パソコンを持っていることを忘れてしまえる」程度には軽い。むしろ、携帯性の妨げになるのは「大きさ」かもしれない。A5(+増設バッテリ)だからノートとしては確かに小さいが、いざカバンに詰めてみると、重さよりも大きさが気になってくる(特に厚さ)。ソフト・アタッシュのような大きめのカバンを持つと覚悟してしまえば余裕だが、あくまで日頃フツーに持ち歩くカバンに入れるのなら、このサイズで限界かも。ACアダプタも(もし持ち歩くなら)意外とかさばる。


 一週間ほど使ってみたが、細かい不満点はあるにしてもおおむね満足中。机の上で使うことも十分可能で、やっぱりというか何というか、結局仕事で使うことが一番多かったりする(苦笑)。やがて来るカードの引き落としを気にしつつも、次なるターゲットは増設メモリ32メガとセルラーケーブルで決まりの物欲再生産な道。うーん、ラブリー。もっと気合いの入った方なら、高速通信可能な最近のPHSも買うとか、LANカード買って自宅でネットワークとか、クルマ買ってカー・モバイル・コンピューティングとか(何だ、それは)楽しみはさらに強まる。
 どうっすか、あなたも次の休日は電気街でPCの夢を貪るってのは(ちょっとボンビーになるけどさ)。(06/26/97)




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