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CLASSICA News and Topics


三大テナーって国立競技場で歌うんだってね

 何日か前、ロンドンでの記者会見が解禁日となって新聞各紙でパヴァロッティ、ドミンゴ、カレーラスの三大テナーの来日公演情報が載せられていた。ワールドツアーの一環として、日本では東京で公演が行われるというもの。チケットの発売日はまだ発表されていなかったが、そのうち報道されるだろう。フジテレビも深夜のオペラ番組でドミンゴのインタヴューを行うなど、プロモーションに力が入っている。さて、会場が国立競技場であると知って驚いた方もいるだろう。まあ前回のワールドカップUSAでの会場もドジャースタジアムだったわけで、考えてみれば「ここしかない」のだが、あの日本のサッカーのメッカ(と勝手に思っている)で開催されるとは……。雨天の場合は予備日が取ってある。しかし余計な心配ながら「雨の降るかもしれない曇り日」の場合はどうするんだろうか。参考までに書いておくと、国立にはメインスタンドにしか屋根がない。スタジアムでカッパを売るんだろうかとか、タダでさえ足りない女性用のトイレは悲惨なことにならないかとか、レッズのファンがうっかり「ゲットゴール福田」を歌い出さないかとか、くだらんことばかりが気になってしまう。
 余談だが、三大テナーの公演が初めて行われたのはワールドカップ90イタリア大会決勝の前夜祭としてである。この時はドイツとアルゼンチンが戦い、PKによりドイツが1対0で勝った。第2回目の公演は、ワールドカップ94USA。ブラジルとイタリアが戦い、0対0のままPK戦になりブラジルが世界を制した。おそらく、次回の98フランス大会ではPKではないすっきりした形でワールドチャンピオンが決まるに違いない。(10/20)


英国系音楽ファン注目。「ピーター・グライムズ」の初LD登場

 ブリテンの「ピーター・グライムズ」に、ようやくLDが登場する。初演50周年を記念してイングリッシュ・ナショナル・オペラで上演された折りのライヴだ。タイトル・ロールはフィリップ・ラングリッジ、指揮はデイヴィッド・アサートン。北海に面した漁村で村人から疎外された偏屈漁師が殺人の疑いをかけられて、群集に糾弾され、自殺してしまうという、思いっきり重いオペラである。(10/20)


LDで陽の目を見るベームの「ナクソス島のアリアドネ」

 R・シュトラウスのオペラといえば往年の大指揮者カール・ベーム。1977〜78年、ウィーン国立歌劇場でのベームの「ナクソス島のアリアドネ」がLD化される。配役は、グルベローヴァのツェルビネッタ、ヤノヴィッツのプリマドンナ/アリアドネ、ルネ・コロのテナー/バッカスと、どうだまいったかの120分間。レーベルはもちろんドイツグラモフォン、国内11月25日売り。(10/14)


「ピアノ・レッスン」に飽きたら「キャリントン」

 マイケル・ナイマンの音楽が日本中を席捲した映画「ピアノ・レッスン」に続いて、またもや彼の音楽を映画で聴ける。95年カンヌ国際映画祭に出品された「キャリントン」(監督誰だっけ。映画のことはよく知らないのでご勘弁を)のオリジナル・サウンド・トラックが登場する(ポリドール、11月25日売り)。マイケル・ナイマン自身も12月から東京、名古屋、大阪で公演を行うということで、ナイマンの音楽聴きたさにレンタルビデオ屋でグリーナウェイの映画を借りてくるような輩は要注目だ。とゆーことで新春の映画は「寅さん」より「キャリントン」が吉。ちなみにメガストア系レコードショップのクラシック売り場では結構「ピアノレッスン」がかかっている。ホントはクラシックは嫌いなんだけど売り場の希望はなかなか通らないのよね、と思ってる系の店員が好んでかける傾向ありかも。(10/14)


フィリップ・グラスのシネオペラ「美女と野獣」って何だ?

 さらに映画関連の話題を。映画「美女と野獣」は1946年のジャン・コクトー監督作品。この映画にフィリップ・グラスが音楽を付けた。シネオペラ「美女と野獣」とは、コクトーの映画のスクリーンをバックに、フィリップ・グラス・アンサンブルがステージで音楽を奏でるというものなんだそうだ。イマイチ、想像がつかないが、とにかくこのシネオペラは日本公演が11月中旬から予定されている。場所は東京・天王州アイルのアートスフィア(詳しい日程等は知らんので、行きたい人は情報誌等で各自調べーい)。ちゃんとフィリップ・グラスが来日するのだ。東京なんて遠すぎる、とか、東京在住だけど天王州なんて遠くて行く気がしないという出不精な人はCDで我慢すべし、音だけだけど。NONESUCHレーベルから、国内ではワーナーミュージックより10月25日売り。(10/13)


「不滅の恋 ベートーヴェン」は「アマデウス」の夢を見るか?

 映画「不滅の恋 ベートーヴェン」が今秋公開される。ベートーヴェンの音楽をたっぷり収めたサウンドトラックはソニーから発売予定だが、ここぞとばかり、レコード会社各社一斉にスタート。ベートーヴェンのオムニバスCDがこれでもかとリリースされる。思い出すのは「アマデウス」。あの時のモーツァルト・ブームをもう一度といったところか。ベートーヴェンにも誰もが親しめる名曲はいくつもある。問題は肝心の映画がヒットするかどうか、だ。(10/04)


ついでに映画「静かな生活」

 大江健三郎原作、伊丹十三監督により映画「静かな生活」がこの秋公開される。その音楽は大江光。健三郎の息子にして知的障害者、そして作曲家。これまでに発売された大江光のCDは非常に売れている。サウンドドラックももちろん発売される。映画のプロモーションも兼ねてか、「徹子の部屋」には伊丹十三が招かれ、大江光の音楽についても語っていた。「本当に純粋な音楽ですものねえ……」。彼の音楽を「単に稚拙でシンプルなだけの音楽」と言う人もいれば、「彼でなくては書けなかった純粋な音楽」と形容する人もいる。私は聴いていないから判断はできない。ただ、「知的障害者だから純粋な音楽を書く」というのではあまりに失礼で短絡的なんじゃないっすか。(10/04)


しゃべるインバル

 またインバルの話題を一つ。10月21日にウィーン交響楽団を振ったショスタコーヴィチ/交響曲全集が出る(デンオン)。これに特典CDとして「レクチャー・コンサート・ライヴ」が付いてくる。第9番と第12番を題材としたものなんだそうだが、この説明癖がインバルなのか。(10/04)


営団地下鉄でグラモフォン

 東京ローカルな話だが、営団地下鉄の中吊りに、なんとドイツグラモフォンの1000円CDの広告が出ているではないか。カラヤン、ベーム、アバド、アルゲリッチらの名盤(ちょっぴり古い録音だけど)を超廉価で、ということなんだが、まさか中吊りで見るとは。とても目立っている。なにしろ、そのデザインが、ほら、例のごとくでナニというか、レコ芸の広告から想像付く通りで……。(10/2)


インバルのちょっぴり変わったシューマン/交響曲全集が開始

 11月に来日するインバルとフランクフルト放送交響楽団のシューマン/交響曲全集がスタート、皮切りに第3番「ライン」がデンオン・レーベルよりリリースされる(10/21)。おもしろいのはカップリング。シェーンベルクの「浄夜」(弦楽合奏版)とウェーベルンの「オーケストラのための5つの小品」が組み合わされる。今後もシューマンの交響曲とこれらのいわゆる新ウィーン楽派の音楽を一緒に収めて、時代の異なる作曲家の関連性を示唆しようとしている。
 この話を聞いて思い出したのがピアニストの内田光子のリサイタル。先頃行われたザルツブルク音楽祭では、彼女はシューベルトのソナタのシリーズに、新ウィーン楽派の音楽を組み合わせていた(この組み合わせは秋の来日公演でも聴けるようだ)。新ウィーン楽派の相棒に、インバルはシューマンを、内田光子はシューベルトを選んでいるというのが、なんとなく似てるようでちょっと違う音楽観をうかがわせる……ような気がする。

 と書いた後に、ある方からいただいたメールによると、インバルはブラームスでも新ウィーン楽派とのカプリングを行うとの話。別にシューマンだからというわけでもないようで。ついでに思い出したが、ドホナーニもモーツァルトの交響曲とウェーベルンを組み合わせたりしていた。それぞれウィーンをキーワードに音楽的な関連付けを狙っていることはいえるだろうが、商業的な理由もないとは言い切れまい。(9/23)


作れよ、食えよ、ペペロンチーニ

 イタリア音楽が好きな人も嫌いな人も、スパゲティが嫌いだって人は少ないだろう。そして、オリーブ・オイルとガーリック、そして赤唐辛子が妙なるハーモニーを奏でるペペロンチーニ中毒の患者も多いはず。Spa王のインスタントなお手軽さも悪くないが、これくらいは自分で作ってみたい。
 まず、ニンニクを薄く輪切りにし(異論1あり)、赤唐辛子の種を取り除いて小口切りにする(異論2あり)。フライパンにオリーブ・オイルをしき、ニンニクと赤唐辛子をじっくりと炒める。ここで慌てると香りが足りなくなるぞ。ニンニクの色がいい感じになったら、火を止めて、スパゲティのゆで湯をスプーンにとって少々加える(一人分当たり大さじ1杯換算か?)。とっとと塩で味を調節して、ゆでておいたスパゲティを軽く火を入れながらあえる。器に盛ってパセリをかければ、もう出来上がりだ。難しいのは辛さ。辛すぎては食えたものではなく、辛くなければ味気ない。スパゲティはアルデンテの硬さで、なんてことは言うまでもない(異論1:みじん切りにするという人もいる。異論2:小口切りが基本だと私ゃ思うのだが、これでは辛すぎになりがちなので細かく切らずに炒めて食べるときは取り除くという人もいる。でもそれじゃ色彩的に寂しくないか?)


クリスティのシャルパンティエとモーツァルト

 17世紀末、シャルパンティエ作曲の歌劇「メデ」に国王ルイ14世は深く感動、オペラは大成功を収めたという。しかし18世紀以降、このシャルパンティエの傑作は歴史の中で忘れ去られてゆく。それを現代に復活させたのが、ウィリアム・クリスティと彼のアンサンブル、レザール・フロリサンである(もちろん古楽器)。84年に一度録音もしているが、10年を経て再び録音が行われ、ERATOレーベルより発売される(国内盤は10月25日、ワーナーミュージックより)。この再録音ではオリジナルの楽譜により忠実な演奏が試みられ、演奏解釈をより劇的なものにしたと伝えられている。
 もう一つ、クリスティの注目盤を。なんとモーツァルトのレクイエムである(ジュスマイヤー版、つまりおなじみの版ですね)。同月同レーベルより発売だが、フランス・バロックの印象が強いクリスティと古典派のモーツァルトの組み合わせのおもしろさで目をひく。プレガルディエンのテノール、シュトゥッツマンのアルト他。(9/21)


ルセの「ゴルトベルク変奏曲」

 古楽界の若きスーパースター、ルセのバッハ/ゴルトベルク変奏曲が発売される(オワゾリール、国内ではポリドールより10月25日発売予定)。楽器はアンリ・エムシュ。前回のバッハもカッコよかったので期待大。(9/7)


古楽器オケのワーグナー

「古楽器でやればなんでもいいのか?」と言われると困るんですが、ワーグナーの管弦楽曲集をノリントン指揮ロンドン・クラシカル・プレーヤーズが録音、10月18日に国内リリースされる(EMI、国内は東芝EMI)。「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲と「愛の死」なんて、いったいどんな演奏になるのか? 他に「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲、「パルジファル」前奏曲他。もし、もう輸入盤屋の店頭に並んでたらゴメンよ。(9/7)


ウゴルスキに若貴もビックリ

 現代の鬼才ピアニスト、アナトール・ウゴルスキの新譜は「左手のためのノクターン」なる小品集。スクリャービンの「左手のための2つの小品」(これの1曲目がプレリュードで2曲目がノクターンね)、ブゾーニの「モーツァルトの主題によるジーグ、ボレロと変奏曲」があるかと思えば、リストの「愛の夢」、シューマンの「トロイメライ」、ショパンの幻想即興曲といった超有名曲が入っているという、ウゴルスキらしいブッ飛んだ選曲だ(ドイツ・グラモフォン、国内はポリドール)。9月25日発売で、国内盤にはなぜかウゴルスキの「原寸大左手手形」が付いてきて、関取並み。(9/7)


サイトウ・キネンの報道ドキュメント

 テレビ東京系で放送中の報道ドキュメント「ナビゲーター95」において9月29日(金)午後10時〜10時30分、「小澤征爾と仲間たち〜サイトウ・キネン・フェスティバル松本のボランティアたち」が放映される模様。全国12局ネット。おもしろいかもしれないけど、副題がちょっと気になる(--;)。ビデオを撮る人はちゃんと新聞orTV雑誌でも事前に日程を確認するように。(9/7)


ブリュッヘンの新録音はモーツァルト/フルート協奏曲集

 非常に人気の高い古楽器オーケストラ、フランス・ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラの新録音が10月25日に発売される。曲はモーツァルトのフルート協奏曲第1番と同第2番、フルートとオーケストラのためのアンダンテ、そしてフルートとハープのための協奏曲。フルート協奏曲は93年の来日公演でも好評を博した。1720年製のデンナー作のフルートを吹くのはコンラート・ヒュンテラー。ハープはヘルガ・シュトルク。例によって国内先行発売で、2500円。(9/1)


レジにゴム

 東京の大型レコード店戦争はいよいよ激烈を極め、各店とも他店との差別化に知恵を絞っているところだが、池袋のタワーレコードは意表を突いてきた。レジそばにLOVE AND PEACE というゴム製品を置いたのだ。しかも「責任を持って行いましょう」とわざわざ店員手書きの注釈付き(笑)。平日はレジはこの1ヶ所しか開いていないことが多く、たとえジャケットいっぱいにゲオルク・ショルティが微笑んでいるようなCDを買うときでも、ここを通過しなければいけない。大・中・小の3種類が揃えられている(サイズじゃねえぞ)。(9/1)


ヘルベルト・ケーゲルの演奏が廉価CD−ROM化

 音楽を題材にしたCD−ROMはすでに数多く発売されている。どれも「マルチメディア・タイトル」と呼ばれる類の作品ばかりだったが、9月21日に日本コロムビアより発売されるLASERLIGHT DIGITAL CD+ROMは、これらとは傾向を異にするシリーズだ。豊富なマルチメディア・コンテンツはここにはない。あるのはオーディオ・フォーマットで記録されたLASERLIGHTレーベルの音源と、その曲のフル・スコア、そして簡単な解説と風景画像。その代わり値段は1枚2500円と国内盤の音楽CDより安い。「今鳴っている音楽はスコアのどこか」、逆に「スコアのこの部分はどんな音がするのか」を知ることができるのがCD−ROMならではの機能だ。CD−ROMなんてものができる前に、スコアを手にした音楽ファンが「こんなことができたらいいのに」と夢想したのは案外、こういう単純な機能かもしれない(より詳しい紹介は来月18日発売の「音楽の友」10月号参照)。
 目玉は旧東独の指揮者ケーゲルとドレスデン・フィルによるベートーヴェン/交響曲第1番〜第9番(各曲分売)か。生前はザッハリッヒな解釈で知られる名指揮者だった(確か、ドイツ併合の後にピストル自殺したんだよね、この人)。(8/23)


オッリ・ムストネンの新録音は……

 ピアノに先駆けてチェンバロを学んだという珍しいフィンランドのピアニスト、オッリ・ムストネンの新録音は、なんとグリーグとショパンの1番というカップリング。普通のピアニストにとっては当たり前の選曲だが、ムストネンにとっては違う。なにしろ、アルカンとショスタコーヴィチの前奏曲でデビュー、その後、バラキレフ、ベートーヴェンの変奏曲集、ベートーヴェンのピアノ協奏曲(と言ってもヴァイオリン協奏曲を作曲者がピアノ用に編曲したものだ)など、ありきたりではないレパートリーがCDでの彼の特徴だったからだ。ひょっとしたら、がっかりしているファンもいるかも。共演はブロムシュテット指揮サンフランシスコso。
 かつて初来日(たぶん)したときにラヴェルのピアノ協奏曲を東京で弾いたが、その時はじめて「10秒以上完全に椅子から腰を浮かして弾くピアニスト」を見た。抒情的な旋律を弾くときの没入ぶりは並みではない。レコード会社の売り文句通り「誰も真似ができぬアグレッシヴな解釈」が聴けるか。ロンドン(デッカ) 国内盤は9/25


クレーメルとアルゲリッチの「クロイツェル」&第10番

 1984年以来、約10年をかけてようやくクレーメルとアルゲリッチのベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ全集が完結した。最後に登場するのが第9番「クロイツェル」と第10番ト長調のカプリング。一番おいしいところがトリだ。特に第10番は表題が付いていないためか「クロイツェル」ほどの人気はないかもしれないが、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ中では唯一、中期から後期にかけて書かれた作品であり、瞑想的で極めて美しい作品だ。まだ聴いていない人はこの機会に聴いてもいいかも。ドイツグラモフォン 国内盤は9/25


ヴァージン・コーラが来襲

 クラシック音楽ファンにもおなじみの新宿の大型レコードショップ、ヴァージン・メガストアに、ヴァージン・コーラの自動販売機が置かれ、ジャンクドリンク・マニアの熱い視線を浴びている。100円でサイズはどうやら500ミリリットルというヴァージンらしい気前の良さが特徴。ちょうど自販機の前を通ったファンキーなファッションの10代の若者が感想を述べてくれた。「すげー、100円であんなにでかいのかよ」。音楽ファンにはヴァージン・グループが航空会社やCDショップだけではなく、独自のレーベルを持っていたことはよく知られている。かつて日本のヴァージン・レコードは輸入盤並みの安さで国内盤を提供していたことを思い出した人もいるだろう。もっともヴァージン・グループは同レーベルをEMIに売却してしまったため、その際に日本のヴァージン・レコードは解散となってしまった(レーベル自体は残っている)。
 ちなみにヴァージン・コーラと並んで今注目のコーラはカルピス・ソーダ・コーラ。こちらもおススメ。(8/20)
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