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2022年10月アーカイブ

October 31, 2022

優勝は決まらず、マリノスvs浦和レッズ J1リーグ第33節

●一時期、余裕で首位を走っていたはずのマリノスだが、終盤に来てガンバ大阪戦、磐田戦とまさかの連敗を喫し、2位川崎にあっという間に差を縮められてしまった。残り2試合で勝点差は2。中断期間をはさんで久々の試合は浦和戦。1位マリノスが勝って、2位川崎が勝ち以外ならマリノスが優勝、だがマリノスが負けて川崎が勝てばついに首位を明け渡すことになる。結果から言えば、マリノスは勝ち、川崎も勝った。勝点差2のまま、優勝のゆくえは最終節まで持ち越されることに。川崎は決してあきらめずに勝ち続けている。追われる立場としてはかなりの脅威。
●で、マリノスだが連敗中からなにを変えたのかというと、いろんな見方はあると思うけど、自分はなにも変わっていないと思う。マリノスは一貫して自分たちのサッカーを続けている。2連敗したといっても根幹の部分でなにかが機能しなかったわけではなく、やるべきことをやってもそういう結果もあるというだけの話で、同じように戦って浦和には4対1で勝った。試合の序盤までは浦和は五分に戦っていたし、浦和に先制点が入ってもおかしくない展開だと思ったが、17分にエウベルが先制ゴールを決め、その後プレイ強度の差が徐々に出て、局面局面での勝負が4対1の結果に反映されたゲームたったと思う。あとはエウベルの個人技が違いを生み出していた。
●ところで、マリノスのこの試合の先発メンバーだが、3年前にポステコグルー監督のもとで優勝したメンバーは2名のみ。当時の主力はずらりとベンチに並んでいた。ケヴィン・マスカット監督はポステコグルーの戦い方を継承しているが、選手はどんどん入れ替わっているので、チャレンジャーとしてのスピリットを保てている。以前は問題だらけだったが、今のマリノスは選手の獲得がうまくなった。

October 28, 2022

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮NHK交響楽団とムストネン

ヘルベルト・ブロムシュテット NHK交響楽団
●27日はサントリーホールでヘルベルト・ブロムシュテット指揮N響。95歳になったブロムシュテットが来日して指揮をする。それだけでも驚嘆せずにはいられない。ただ、常人離れした壮健さを誇るマエストロにも時は流れている。今回はコンサートマスターやソリストに支えられて楽員と一緒の入退場で、負担を最小限にとどめる形に。椅子に座っての指揮。
●プログラムはグリーグのピアノ協奏曲(オッリ・ムストネン)、ニールセンの交響曲第3番「広がり」(ソプラノに盛田麻央、バリトンに青山貴)。前半のグリーグはまれに聴く怪演。久々に見たムストネンはメガネをかけている。高い椅子を用いて、大きな体躯で高々と上げた手を高速で振り下ろしながら、独特のタッチで鍵盤を叩く。もともとムストネンのピアノはレガートを忌避して、点描みたいなタッチで旋律線を浮き上がらせる特異なスタイルだが、それがさらに進化しているというか暴走しているというか、もはや自由自在。その場の感興に任せたようなエキセントリックなフレージングやダイナミクスを連発。打鍵は強力なのでダイナミクスの幅は広いのだが、大きく振りかぶってからの弱音がうまく鍵盤にヒットしなかったりする。でも、ムストネンの側には首尾一貫したロジックがあっての作品解釈なのだろう。一部、ピアノの音がひずんでいて、強烈なうなりが発生しているのだが、前夜も同じ具合だったようなので、これも狙いがあってのことなのか。結果、グリーグとは思えないほど巨大な音楽が現出して、荒ぶるリリシズムみたいなものが伝わってくる。終楽章の異様な熱気はほとんど魔術的。ムストネンの意図をどれだけ受け止められたのか自信がないが、忘れがたい体験になった。アンコールにヘンデル「調子のよい鍛冶屋」。本編もアンコールもずっと楽譜を譜面台に置き、自分でめくる方式で吉。
●前半でブロムシュテット翁が霞んでしまうよもやの展開だったが、本来のお目当ては後半のニールセンの交響曲第3番「広がり」。ブロムシュテットも身振りは格段に小さくなってはいるが、最初の一音から引き締まった強烈なフォルテ。この作品ならではの大らかで力強い喜びにあふれた演奏を堪能。第4番「不滅」以降の交響曲とは違った健やかな自然賛歌、人間賛歌の音楽で、ひなびた楽想がたまらなく魅力的。最後はブロムシュテットのソロ・カーテンコールが2回。
●これで今月のマケラ指揮パリ管、ダウスゴー指揮都響、ブロムシュテット指揮N響による「勝手に北欧系指揮者フェスティバル」はおしまい。充実の3公演。

October 27, 2022

エクスプローラーのタブ、中村俊輔の引退

エクスプローラーのタブ

●以前「Windowsのエクスプローラーにタブが付くのを待っている」と書いたが、先日、ようやく実装された。てっきりWindows 11バージョン22H2へのアップデートで実装されるものと思っていたら、そうではなく、少し遅れて提供されたんである。いやー、これは快適。というか、なぜ今までエクスプローラーにタブがなかったのか、謎すぎる謎。だいたいPCでよく使うフォルダは5、6か所といったところなので、これらをタブで常時開きっぱなしにしておけばいい(エクスプローラーを複数開いておくのとはぜんぜん使い勝手が違う)。Windows 11の最大の不満が解消されて、すっきり。
●中村俊輔が引退。まさか44歳になるまで現役を続けるとは思わなかった。俊輔といえばフリーキックの名手だが、自分が最初にパッと思い出すゴールといえば、アジアカップ2004での超絶技巧ゴールだ。ダブルタッチで相手を交わしてから、ほとんど半身になりながら左足のアウトサイドで蹴ったボールが、相手ディフェンダーを巻きながらゴール右隅に吸い込まれるというゴール。ほとんど現実離れした美しさがあった。

October 26, 2022

シルヴァン・カンブルラン指揮読響のドビュッシー、一柳慧、ヴァレーズ

●25日はサントリーホールでシルヴァン・カンブルラン指揮読響。久々にカンブルランが読響に帰ってきてくれてうれしい。やっぱりこのコンビはいい。プログラムは前半にドビュッシーの「遊戯」、一柳慧のヴァイオリンと三味線のための二重協奏曲(世界初演、成田達輝のヴァイオリン、本條秀慈郎の三味線)、後半にドビュッシーの管弦楽のための「映像」から「イベリア」、ヴァレーズの「アルカナ」。10月7日に一柳慧が89歳で逝去したことから、一柳作品の演奏前に演奏者による黙祷あり。ヴァイオリンと三味線という不思議な組合せによる二重協奏曲。第2楽章で局所的に和風ミニマルみたいになるのがおもしろい。ソリストアンコールがなんの曲かわからなくて、切ない雰囲気がまるで追悼の音楽みたいだなと思っていたら、後で一柳慧作曲の映画「さらば夏の光」のテーマだったと知る。
●カラフルなドビュッシー「イベリア」も楽しんだが、お目当てはヴァレーズ「アルカナ」。サントリーホールのステージがびっしりと人で埋まる大編成で密の上に密、この怪作を聴く貴重な機会……なのだが、実は3度目だ。初めて聴いたのは2015年のメッツマッハー指揮新日フィルで、なんとこれが日本初演だった。こんな曲、もう一回聴くチャンスはアルカナ~と思っていたら、2回目が2021年のノット指揮東響だった。すごい曲だなー、さらにもう一回聴くチャンスはアルカナ~と思っていたら、3回目がこの日、訪れた。やっぱりすごい曲だなー、次のチャンスはア(以下略)。
●「アルカナ」、どう聴いてもストラヴィンスキーの「春の祭典」(さらに「火の鳥」も)の影響は濃厚で、何か所かはそっくりだと思う。「春の祭典」にあって「アルカナ」にないのは民謡成分で、そのあたりが「春の祭典」の古典性の源泉かなと思うのだが、代わりにヴァレーズにあるのはマッチョ成分とユーモアだと感じる。「春の祭典」には笑わないけど、「アルカナ」は「ふふ」って笑える、興奮しながらも。この日の「アルカナ」は今年の演奏会いちばんの痛快さだったかも。密であり圧。
●カンブルランはけっこうな年齢になっているはずだけど、相変わらず身のこなしが軽やか。ビバ、イカす爺。盛大な拍手が鳴りやまず、カンブルランのソロカーテンコールあり。

October 25, 2022

ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団のハイドン「無人島」

●23日は大阪音楽大学のザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団定期演奏会でハイドンのオペラ「無人島」(演奏会形式)。指揮は牧村邦彦、歌手陣は4名のみで大賀真理子(コスタンツァ)、内藤里美(シルヴィア)、中川正崇(ジェルナンド)、西村圭市(エンリーコ)。合唱も入らず、オーケストラも小編成で、エステルハージ侯の聖名祝日を祝うために作曲された小規模オペラ。演出は井原広樹。舞台奥にオーケストラが陣取り、前方で衣装をつけた歌手が演じるスタイル。もともと舞台設定はずっと無人島なので、舞台装置などなくても不都合は感じない。オーケストラは弦楽器を中心に好演、ハイドンの明朗な音楽を生き生きと伝えてくれた。HIPではなく、20世紀の伝統に根差したスタイル。歌手陣も役柄にふさわしい声とキャラクター。特に内藤里美のシルヴィアがいい。軽快。
●めったに上演されない作品だが、作曲は1779年でハイドンは40代後半。モーツァルトのオペラでいえば「イドメネオ」の2年前。台本作家はメタスタージオ。まだこのくらいだと近代的な人間ドラマとは異なって、先日のヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」などと同様、「シチュエーション付き歌合戦」といった趣で、終場を除いておおむね歌手が交互に歌う。一方でレチタティーヴォ・アッコンパニャートが多く、オーケストラが果たす役割が大きめ。ハイドンは本質的には交響曲のような構築感のある音楽でこそ本領を発揮する作曲家だとは思うが、オペラやオラトリオになると少し自由さを楽しんでいるというか、肩の力が抜けて、また別な顔を見せてくれる。ある意味ドラマの進行から離れたところで筆が冴えるような感もあって、疾風怒濤風のシンフォニアや、祝祭的なフィナーレが印象的。
●ちなみにこの物語、無人島に置き去りになった姉妹二人が、姉の夫によって救出されるというストーリーなのだが、姉妹は無人島で13年も生きていたっていう設定なんすよ! すごくないすか。しかも妹のほうは島の動物たちと仲良くなって天真爛漫に育っている。当時の欧州の宮廷的な自然観のあらわれと言うべきか。現代的な観点からすると、手付かずの自然は獰猛そのもの。姉妹は上陸したその日から容赦のないサバイバルに晒される。火をおこし、飲料水と安全な住居の確保をしながら、寒さや暑さ、獣や昆虫、動物由来の感染症、病気、怪我、嵐など無数の危機を乗り越えながら、漁猟により飢えをしのぐことになる。厳しい生存競争により精神の均衡も危うくなりそうだ。この物語はあるいは島でマラリアに罹った姉が朦朧とした意識で思い描いた夢なんじゃないかな……と勝手に解釈しながら観た。
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●お知らせを。N響ホームページにスラットキン指揮の11月定期および大阪公演について、聴きどころを寄稿。大阪公演は東京のBプロと同じくヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番がメイン。

October 24, 2022

チョン・ミョンフン指揮東京フィルのヴェルディ「ファルスタッフ」

●21日は東京オペラシティでチョン・ミョンフン指揮東京フィルのヴェルディ「ファルスタッフ」(演奏会形式)。演奏会形式とはいえ、「指揮・演出:チョン・ミョンフン」と銘打たれているだけあって工夫が凝らされた舞台で、演技あり小道具ありで、しっかりと物語を楽しめる。第1幕の幕開けからして、いきなりマエストロがホウキを持って掃除をしながら登場して笑いを誘う。ガーター亭の亭主なのだ。ふだんシリアス一辺倒のように思えていたチョン・ミョンフンの意外なるコメディアンぶりを目にすることに。随所に笑いのポイントが仕掛けられている。もっともオーケストラのサウンドは重厚で、金管もパワフルに咆哮する。全般にアンサンブルの小気味よさ以上にシンフォニックなテイストを堪能。
●歌手陣はファルスタッフにセバスティアン・カターナ、フォードに須藤慎吾、フェントンに小堀勇介、アリーチェに砂川涼子、ナンネッタに三宅理恵、クイックリーに中島郁子、メグに向野由美子、他。題名役は太っちょ老騎士というよりは精悍。小堀勇介と三宅理恵の若いカップル役がいい。歌も見事だし、かなり可笑しい。大騒動の渦中でも愛をささやくことに夢中の若いカップルという役柄は、プッチーニ「ジャンニ・スキッキ」のラウレッタとリヌッチョの先輩格か。休憩は1回で、第2幕の第1部と第2部の間に入れていた。アンコールとして最後のフーガの部分をもう一度。
●「ファルスタッフ」の台本作家はボーイト。シェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」をうまく簡潔にしているんだろうけど、変装したフォードの言動が意味不明だなといつも思う。あと第2幕の「キャベツの芯で撃たれる」もいつもひっかかるのだが、どういう表現なんだろう。全編にわたって何度も出てくる「角が生える」=「寝取られ男」は、西洋で広く見かける基本表現。
●作品中、ファルスタッフは太っていることを執拗にからかわれるわけだけど、今の時代だと少しドキッとする。男女が違えば絶対に成立しない笑いでもあるわけで、そのあたり、どうなんでしょね。
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●宣伝を。ONTOMOの新連載「心の主役を探せ! オペラ・キャラ別共感度ランキング」第5回はプッチーニ「トゥーランドット」。キャラ視点によるオペラガイド。

October 21, 2022

読響アンサンブル・シリーズ「鈴木優人プロデュース/ル・マルトー・サン・メートル」

●20日はトッパンホールで読響アンサンブル・シリーズ「鈴木優人プロデュース/ル・マルトー・サン・メートル」。ブーレーズの「ル・マルトー・サン・メートル」(主なき槌)をライブで聴く貴重な機会。鈴木優人の指揮(一部ピアノ)、湯川亜也子のアルト、林悠介のヴァイオリン、鈴木康浩のヴィオラ、富岡廉太郎のチェロ、片爪大輔のフルート、芳賀史徳のクラリネット、金子泰士、西久保友広、野本洋介の打楽器、大萩康司のギター、大井駿のピアノ。
●プログラムは前半にブーレーズの「デリーヴ1」、バッハ~鈴木優人編の「ゴルトベルク変奏曲の主題に基づく14のカノン」、ドビュッシーのマラルメの3つの詩、クセナキスの「プレクト」、後半にブーレーズ「ル・マルトー・サン・メートル」。一見、前衛ゴリゴリのプログラムのようでいて、案外フレンドリーな構成になっていて、各曲の長さは短いので聴いていて迷子になる(?)心配は少ない(「ル・マルトー」も各楽章は長くない)。当日編成に合わせて編曲されたバッハも効果的なアクセントに。前半はクセナキス「プレクト」を聴けたのがうれしい。生誕100年に聴くクセナキスはこれでしめくくりか。洗練された行儀のよいメンバーのなかにひとりワイルドな荒くれが混じっている感が吉。ドビュッシーで湯川亜也子が声を発した瞬間に、はっと場内の空気が変わった気がする。豊かで温かく、芯のある声。後半、「ル・マルトー・サン・メートル」は、録音から受け取る澄ましたおしゃれ感とは一味違って、もう少し前へ前へと進む音楽なんだなと感じる。編成の特異さも体感。打楽器群とギターやヴィオラが共存していて、録音みたいに等距離感でツルンとまとまるはずもなく、もっと凹凸のある音響になる。でも全体としてベースにあるのはリリシズム。
●この曲って、全9曲だけど、系列の違う3つのストーリーを行ったり来たりしてて、映画でいうと「ゴッドファーザー PART II」みたいな感じなんだけど、しかも各ストーリーの順序がややこしくて「孤独な死刑執行人」パートだと、第2曲「補遺1」、第4曲「補遺2」、第6曲「本編」、第8曲「補遺3」っていう並びになる。うーん、複雑すぎる。どうして補遺が先に出てくるの。各曲の題にもとづいた全9曲の並びとしては、A1、B2、A2、B3、C1、B1、A3、B4、C2、って感じかな。「ゴッドファーザー」にはテレビ用にわかりやすく時系列を直したバージョンがあったけど、「ル・マルトー・サン・メートル」もA1、A2、A3、B1、B2、B3、B4、C1、C2に並べ替えたバージョンがあっていいかもしれない……って、それはプレイリストを作ればいいだけか。
●この日の公演は19時半開演で、19時から鈴木優人さんのプレトークがあった。とてもありがたいガイドになっていた。プログラムにクセナキスの「プレクト」が含まれていたので、「プレクトのプレトークです!」と言うビッグチャンスでもあったわけだが、それはなかった。「プレクト」が一曲目だったらあり得たかもしれないんだけどなー(ありません)。

October 20, 2022

Gmailへの転送を止め、GmailでのPOP受信に切り替える作戦

Gmailアプリ
●これまで自分はメールを一通りGmailに転送して、一か所に集約していた。こうするとスマホから随時メールを確認できるし、Gmailの強力な検索機能も使える。とても便利だったのだが、最近、Gmail側のセキュリティが厳しくなったらしく、転送したメールが発信元に戻ってしまうケースが多発していた。戻ってしまうのはいくつかの特定ドメインに限られていて(しかも常に戻るのではなく、ちゃんと届くこともある)、困ったことに不達メールは転送元の私のアドレスではなく、発信者のアドレスに届いてしまう。これはトラブルのもとなので、どうにかしなくてはと思い、あれこれ調べたのだが、こちら側にできる対策はほぼないという結論に。
●そこでGmailへの転送を止め、代わりにGmailでプロバイダ等のメールをPOP受信することにした(参照:他のアカウントのメールを確認する)。そう、Gmailはヨソのメールでも受信できちゃうのだ。そのこと自体は知っていたのだが、昔設定しようとしたらエラーが出たんだよな……。で、今回やってみたら、やっぱり「POP3アクセスはサーバーで拒否されました」のエラーが出る。うーん、なんでかなーと頭を抱えつつ、なんどか試してみたら、あるときあっさりつながった。なぜだ。すっきりしないが、まあ、できたからいいか。
●以後、GmailでのPOP受信は快調。従来の転送した場合と同様に、Gmailの強力な検索機能も使える。ただし、POP受信であるからには、メールを即時受信するわけではなく、メールチェックをした時点で受信することになる。では、メールチェックの間隔は何分なのか。これがPCのメールソフトであれば「n分」と自分で指定するところだが、Gmailにはそのような設定項目はない。勝手に必要に応じて受信してくれるのだ。メールチェックの履歴は、「設定」→「アカウントとインポート」→「他のアカウントのメールを確認」→「履歴を表示」で確認できる。
●観察してみると、メールチェックの間隔は1時間以上空くこともあれば、5分以内の高頻度になることもある。どういうアルゴリズムなんだろう。どうやら前回のチェックでメールが一通も届いていなければ次回の間隔は長くなり、一通でも届いていれば次回の間隔は短くなる傾向があるっぽい。実際にはもう少し複雑なことをしているのだろうが、メールの受信数に応じて柔軟に変動しているようで、なかなかエレガント。

October 19, 2022

トーマス・ダウスゴー指揮東京都交響楽団のニールセン「不滅」他

トーマス・ダウスゴー指揮東京都交響楽団
●この週末にマケラ、ダウスゴー、ブロムシュテットの北欧系指揮者が集結していた東京。16日は東京芸術劇場でトーマス・ダウスゴー指揮の都響で、ランゴーの交響曲第4番「落葉」、シューマンのチェロ協奏曲(宮田大)、ニールセンの交響曲第4番「不滅」というプログラム。ダウスゴーは以前、新日フィルでも「不滅」を聴かせてくれたっけ。なんどでも聴きたくなる「不滅」。
●ダウスゴーはマスクを着用したままで指揮して、最後まで外さず。この付けっぱなしパターンは珍しい。一曲目のランゴーの「落葉」、ぜんぜん知らない曲だったのだが、曲名から想像する秋の侘しさみたいなものとはまったく違ってゴリゴリにパワフル。1916年、ニールセン「不滅」と同年の作曲ということだが、ティンパニの活躍もあって、作風的にも少し似ている。デンマークの落葉って、日本のとはずいぶん違ってそう。シューマンのチェロ協奏曲は宮田大の雄弁かつパワフルなソロがすばらしい。潤いのある音色で情感も豊か。ソリスト・アンコールが少しおかしくて、朗々と歌う「赤とんぼ」が始まったと思ったら、シューマンの「トロイメライ」がつながって、また「赤とんぼ」に帰る。山田耕筰とシューマンのキメラ仕様。
●ニールセン「不滅」は引き締まったサウンドによる緊迫感あふれる名演。猛烈なカッコよさ。2台目のティンパニは舞台前方上手側に置いてあった。終盤の太鼓無双は迫力満点。中二病がぶり返してきそうな熱さ。
●この日、場内で一曲目から小さな電子音というか警告音がときどき聞こえた。なんだか電池切れとか「電波が届きません」的な警告音みたいな音だなと思ったが、前半の曲間に場内アナウンスで補聴器のハウリングについての注意喚起があり、休憩後にふたたび注意があった。シューマンではまだ聞こえていたが、後半のニールセンでは収まった模様。不注意は万人にありうるので、機器側で技術的に解決できるスマートな方法があるといいのだが。

October 18, 2022

クラウス・マケラ指揮パリ管弦楽団の「春の祭典」他

●15日は東京芸術劇場でクラウス・マケラ指揮パリ管弦楽団。フィンランド生まれの新星をようやく聴けた。昨年、25歳の若さでパリ管弦楽団の音楽監督に就任したというのも驚きだが、すでに2027年シーズンからロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者に就任すると発表されていて「そんなのあり?」。こういう契約って、どれくらい未来まで先取り可能なんすかね。
●曲目はドビュッシーの交響詩「海」、ラヴェルの「ボレロ」、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」。3曲ぜんぶがごちそうプログラム。芸劇は珍しく反響板を下ろさず。前半はパリ管弦楽団の名人芸を味わったという感。特に「ボレロ」での管楽器奏者たちの超絶腕自慢大会は圧巻。この「オレがオレが」感は日頃なかなか聴けないもの。クライマックスは輝かしいスペクタクル。味が濃い。後半の「春の祭典」はマケラ印がよりはっきりと表れていたのでは。しばしばアクセントを強調してリズムのおもしろさを明確にする彫りの深い音楽。シャープかつパワフル。木管楽器群のベルアップが炸裂。長身痩躯を折り曲げながら、オーケストラをドライブする。
●マケラの短い英語メッセージがあった後、アンコール。てっきりフランス音楽が来ると思っていたら、ムソルグスキーのオペラ「ホヴァンシチナ」より前奏曲「モスクワ川の夜明け」。これは時節柄を反映しての選曲なんだろうか。拍手が続いて、マケラのソロ・カーテンコールあり。
●こういった演奏会では珍しく、ポスター等で「照明演出」がしっかりクレジットされていて、正直なところ警戒感を抱いていたのだが(完成された芸術品になにを足すのだろうか、と)、実際には「春の祭典」で曲調に応じてときどき色が変化するといったマイルドなもので安堵。

October 17, 2022

鈴木雅明「フーガの技法」全曲

●14日は紀尾井ホールで鈴木雅明のチェンバロによるバッハの「フーガの技法」全曲。2台チェンバロの曲では鈴木優人が共演。この曲を演奏会で聴く機会は貴重。おかげで今まで遠くから漠然としたイメージで眺めていたものが、ぐっとはっきりした像を結んだかのよう。そもそも「フーガの技法」全曲とはどこからどこまでなのかもよくわかっていなかったのだが、この日の演奏会は印刷譜に含まれる曲をなるべく多く聴いてもらうというコンセプト。なので、間に休憩をはさんで、前半にコントラプンクトゥス1~11、後半から2台チェンバロの曲も加わって、コントラプンクトゥス12の4声「鏡のフーガ」、コントラプンクトゥス13の3声「鏡のフーガ」のそれぞれ正置型、倒置型、さらに番外その1として3声「鏡のフーガ」2台チェンバロ用編曲の正置型、倒置型、番外その2に4つのカノン、それから未完のフーガ(コントラプンクトゥス14)、最後に本来は「フーガの技法」とは無関係だろうけど印刷譜に含まれているコラール「われら苦難の極みにあるとき」BWV668a。こうして文字で並べたところで煩雑で読めたものじゃないわけだけど、前半は単独行の孤独な登山、後半は下山後のいくぶんリラックスしたお楽しみ、みたいなつもりで聴いた。
●前半、おしまいのコントラプンクトゥス11は並々ならぬ気迫による峻厳な魂のバッハ。こうして聴くと、ここで大きなクライマックスが築かれており、これで曲はおしまいという気持ちになる。偉大な音の構築物が建造されて、ただただそれを仰ぎ見るばかり。フーガという技法が技法の陳列ではなく、凝縮された音のドラマに実体化してゆくプロセスを目にしたというか。それが後半に入って2台チェンバロになると、一気に親密な雰囲気が出てくる。チェンバロ2台で父子が向き合って「鏡のフーガ」を弾くという趣向はほかではできない。
●それで、未完のフーガ(コントラプンクトゥス14)なんだけど、雅明氏のお話によれば、これを「フーガの技法」に含めるのは大きな疑問なのだとか。この主題、「フーガの技法」の主要主題と似てるけど違っているし、ほかにもいろんな理由が挙げられるそう。録音を通して、尻切れトンボで終わるこれも含めて「フーガの技法」だと刷り込まれていたけど、そんなものなのか。未完のまま演奏。コラール「われら苦難の極みにあるとき」BWV668aが最初からプログラムに含まれているので、これがオートマティックにアンコールみたいになって、一種の中和剤に。
●今回の公演に先立って、レコーディングも行われたそう。

October 14, 2022

左にコロナワクチン、右にインフルエンザワクチン

ワクチンっぽい絵
●一昨日、新型コロナ&インフルエンザ・ワクチンを同時接種してきた。少し前に新型コロナワクチンの4回目の接種券が届いており、今回よりオミクロン株対応。しかしバージョン(?)は「BA.1」対応。まもなく「BA.5」対応のワクチン接種が開始されるので、一世代前のモデルになるわけで、気分的には最新スマホを買ったのにAndroidのバージョンがひとつ前だったみたいなモヤモヤ感が残る……。あ、これはウソ。ウソウソ。別にどっちだっていい。正直なところ、後回しにするほど無限にめんどくさくなるので、早いところ済ませたかったというだけ。
●例年、インフルエンザ・ワクチンは12月くらいに打っているのだが、いつも予約に苦労していた。しかし、今回はコロナと同時接種ができるので、一回で済ませるチャンス。近所にネットで予約のとれるお医者さんがあったので、そこで済ませた。コロナワクチンは1回目から3回目まで、毎回自衛隊大規模接種センターでモデルナを打ってきたのだが、4回目にして初ファイザー。ファイザーのほうが副反応が出ないということなのか、短時間の微熱があったくらい。2回目のときは38.9度の高熱と悪寒で寝込んだっけ。このまま熱が出ないことを願う。
●右にインフルエンザワクチン、左にコロナワクチンを打った。右往左往、右顧左眄、右投げ左打ち、右インフル左コロナ。

October 13, 2022

「マクロプロスの処方箋」(カレル・チャペック著/阿部賢一訳/岩波文庫)

●最近、岩波文庫からカレル・チャペックの戯曲「マクロプロスの処方箋」が刊行されたので、さっそくゲット。こういう本は買えるときに買っておかないと。チェコの作家カレル・チャペックといえば世間的にはなんといっても「ロボット」という語の発案者だが、クラシック音楽ファンにとってはヤナーチェクのオペラ「マクロプロスの秘事」(マクロプロス事件、マクロプロスのこと)の原作者だ。
●物語のテーマは不老不死。相続を巡る長年の裁判が続いている場面に、第三者の美貌のオペラ歌手がやってきて、だれも知るはずのない遺言書のありかを教える。どうしてそんなものの存在を知っているのか、皆が困惑するが、実はこの歌手は父親が作った秘薬により300年以上にもわたって、名前を変えながら生き続けているのだった。彼女はそのマクロプロス家の秘薬の処方箋を探し求めていた。処方箋は見つかるが、人々はこれをどう扱うべきかを議論する……。不老不死が得られるとしたら、だれがその恩恵にあずかるべきなのか。そもそもそれは欲しいものなのか。晩年のヤナーチェクのカミラ(38歳年下の人妻)に対する熱愛を思い起こせば、いかにもヤナーチェク好みの題材という気もする。
●些末なことだけど、オペラのタイトルは「マクロプロス事件」と記されることも多い。が、どうもこの訳題はまるで殺人事件でも起きたかのような重々しさで、中身に合致していない。だいたい事件なんて起きてないし。直訳すれば「マクロプロスのこと」のようだが、その意味するところをもう少し具体的に訳出すれば「マクロプロスの秘事」とか「マクロプロスの秘密」になるだろうし、もっと焦点をビシッと当てるなら本書のような「マクロプロスの処方箋」がいいと思う。オペラは実演の際に訳題をアップデートすることもできるんだけど、過去に発売されたパッケージメディアの題を変えられないのが泣きどころ。

October 12, 2022

ディズニープラスのドラマシリーズ「ボバ・フェット」

●プチ「スター・ウォーズ」祭ということで、先日の「オビ=ワン・ケノービ」に続いて、ディズニープラスで旧作の「ボバ・フェット」を観た。「マンダロリアン」のスピンオフ作品で、「スター・ウォーズ」本編にも登場する賞金稼ぎ、ボバ・フェットを主役とした物語。全7話のテレビドラマシリーズ。映画だと長くてなかなか見ないのだが、テレビドラマの尺ならまあまあ見やすい。
●舞台はタトゥーイン。犯罪組織のボスだったジャバ・ザ・ハット亡き後、ボバ・フェットが裏社会のボスとして後を継ごうとする。恐怖で街を支配したジャバ・ザ・ハットと違い、ボバ・フェットが目論むのは敬意による支配。そんな話なのでテイストとしてはマフィア映画。「ゴッドファーザー」のように始まって、西部劇テイストを交えながら、知られざるタトゥーインの歴史を描く。全般に話の「緩さ」が目立つのだが、映画なら許せないけどテレビドラマだと思えば荒唐無稽でもまあ許せる……かな。しかしボバ・フェットを主人公に進めるのは無理があるんじゃないかと思っていたら、途中から「マンダロリアン」の続編みたいな話にすり替わっていた。「マンダロリアン」ファンの人は、ボバ・フェットに1ミリも興味がなくても、このシリーズを観るしかない。
●ボバ・フェット、不屈のタフガイとして描かれているんだけど、本来このキャラの魅力は体中に装備されたいろんなギミックにあるんじゃないかなーとは思った。

October 11, 2022

ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団の「モーツァルト・マチネ」

モーツァルト・マチネ ミューザ川崎
●8日はミューザ川崎のモーツァルト・マチネ第51回。午前11時開演という本当の「マチネ」。休憩なしの短時間プログラム。ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団で、曲目はシェーンベルクの弦楽四重奏とオーケストラのための協奏曲変ロ長調(ヘンデルの合奏協奏曲op.6-7による)、モーツァルトの2台のピアノのための協奏曲変ホ長調(坂本彩&坂本リサ)。変則協奏曲プログラムというか。実はこの2曲にストラヴィンスキー「ダンス・コンチェルタンテ」を加えたプログラムが翌日の東響オペラシティシリーズにあったのだが、そちらは都合がつかず、朝から川崎まで遠征。
●ヘンデル~シェーンベルク作品は、弦楽四重奏を小林壱成、服部亜矢子、武生直子、伊藤文嗣の楽団首席奏者陣が務める。20世紀の拡張コンチェルト・グロッソとでもいうか。オーケストラの編成もそこそこ大きい。これがもっとコンパクトでポータビリティが高ければ20世紀バロックとして標準レパートリー化できたかもと思わなくもないのだが、それだとシェーンベルクにはならないか。ねじれの位置みたいなヘンデルとシェーンベルクの時空を超えた共作。
●モーツァルトでは坂本彩と坂本リサによる姉妹デュオ、Piano duo Sakamotoが独奏を務めた。第70回ARDミュンヘン国際音楽コンクール・ピアノデュオ部門で第3位および聴衆賞を獲得した若手。ピアノは向き合う形ではなく、2台横に並べて。とても息の合った、かなりしっとりとした潤いのあるモーツァルト。そして東響はやはりモーツァルトがうまい。生気に富み、柔軟。この曲、ほかのソロ協奏曲あるいは2台ピアノのためのソナタに比べると、少し趣味が上品というか、作風がおとなしい気がする。

October 7, 2022

サイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団のシベリウス、バルトーク他

lso2022suntory.gif●6日はサントリーホールでサイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団、ふたたび。他の日のプログラムがエルガーの交響曲第2番やブルックナーの交響曲第7番といった重量級の作品をメインに置いているのに対し、この日は大曲なしのバラエティ・プログラム。前半にベルリオーズの序曲「海賊」、武満徹の「ファンタズマ/カントスII」(トロンボーンはピーター・ムーア)、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」、後半にシベリウスの交響曲第7番、バルトークの「中国の不思議な役人」組曲。
●一曲目のベルリオーズ「海賊」から華麗なサウンド。やはりこのオーケストラのサウンドは明るい。そして武満作品を来日オーケストラの演奏で聴けるとは。トロンボーンのまろやかな音色による陰影に富んだソロ。トロンボーンのソリスト・アンコールがあったが、なんの曲かはわからず。ラヴェルの「ラ・ヴァルス」は分解能の高いサウンドで描かれるカタストロフ。後半のシベリウス7番とバルトークの「中国の不思議な役人」はともに1920年代半ばに誕生した作品。シベリウスは広大な自然の風景を思わせる作品だが、印象に残るのは音色の澄明さ。「弦に透明感がある」という言い方には、ときには響きが薄いという含意があったりすると思うのだが、LSOはもちろんそんなことはなく、密度もとても高い。終盤のヴァイオリン合奏の輝かしさと来たら。この日の白眉か。バルトークもスペクタクル。ラヴェルと同様、洗練されたおどろおどろしさを堪能。
●ラトルの日本語の挨拶とアンコールの案内があって、フォーレのパヴァーヌ。フルートのくすんだ寂しげな音色がたまらなくよい。拍手が鳴り止まず、この日もラトルのソロ・カーテンコールに。ミューザ川崎公演と同様に、ラトルは両手で天井を指さして、ホールの音響を讃えていた。

October 6, 2022

新国立劇場 ヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」(新制作)

新国立劇場 ヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」●5日は新国立劇場でヘンデルのオペラ「ジュリオ・チェーザレ」(ジュリアス・シーザー)。本来であれば大野和士芸術監督のバロック・オペラ・シリーズ第1弾として上演されるはずのプロダクションだったが、ウイルス禍で公演中止となってしまい、2年半の時を経てついに復活。 ロラン・ペリーの演出は2011年にパリ・オペラ座で上演されたもの。本来、シーザーとクレオパトラという歴史上の人物のロマンスを描いた物語だが、舞台は現代のエジプトの博物館のバックヤードに置き換えられている。巨大な彫像や絵画が収納されていて、そこで働く博物館の人々がいる空間に、シーザーやクレオパトラが現れて歴史劇を演じる。見たままに受け取ればいいとは思うが、あえて解釈をすれば博物館で働く人の古代幻想が実体化したファンタジーとでも。
●バロック・オペラなので近代的なドラマとは作法が違い、代わる代わる登場人物たちが歌を披露する「シチュエーション付き歌合戦」みたいな感じで、楽しさ爆発。このオペラって、本当に名曲ぞろいだと思うんだけど、なにがスゴいって第2幕までで相当たっぷりと美しい曲を堪能できているのに、第3幕になって「ピアンジェロ~」(この胸に息のある限り)と「難破した船が嵐から」という決定的な名曲がまだ出てくる。天才が惜しみなく才能を注ぎ込んだらこうなるというデラックス仕様。ヘンデル、恐るべし。
●ピットがすばらしい。指揮はリナルド・アレッサンドリーニ。録音ではコンチェルト・イタリアーノとの名盤でおなじみだけど、新国立劇場の指揮者として聴く機会が巡ってくるとは。オーケストラは東京フィル。通奏低音として桒形亜樹子(チェンバロ)、懸田貴嗣(チェロ)、上田朝子、瀧井レオナルド(以上テオルボ)が加わって、ぐっとバロック成分が高まったサウンド。ヘンデルの生気あふれる音楽を堪能。歌手陣はマリアンネ・ベアーテ・キーランド(ジュリオ・チェーザレ)、森谷真理(クレオパトラ)、藤木大地(トロメーオ)、加納悦子(コルネーリア)、金子美香(セスト)、村松稔之(ニレーノ)、ヴィタリ・ユシュマノフ(アキッラ)、駒田敏章(クーリオ)。森谷真理の「ピアンジェロ」は絶品。脇役だけど村松稔之のニレーノが歌も演技もすばらしくて、ものすごく効いていた。カーテンコールでも大人気。
●第1幕冒頭、物語上はチェーザレにポンペーオの首が差し出される場面があるじゃないっすか。大河ドラマなんかで敵将の首が入った首桶が出てくるけど、ああいうのを持ってくるのかと思いきや、博物館スタッフの人たちが巨大な石像の首(たぶんポンペイウスの)をリフトにぶら下げて運んでくる。笑。あちこち細部で気が利いている。全般に運搬機器の活躍多めで、荒唐無稽な歴史劇に黙役の博物館の人々による「仕事の風景」が重ねられているのがおもしろい。

October 5, 2022

10月10日は「記念日記念日」

october
●来週の月曜日、10月10日は「スポーツの日」で祝日。かつては「体育の日」と呼ばれていた。現在は10月第2月曜日に設定されており、今年は10月10日が該当する。
●実は10月10日にはほかにもさまざまな記念日が設定されている。日本記念日協会によれば、10月10日は「ふとんの日」「銭湯の日」「トマトの日」「おもちの日」「窓ガラスの日」「お片付けの日」「球根の日」「ポテトサラダの日」等々。やたらと数が多い。同協会の記事には「一年でいちばん記念日登録が多い日は10月10日と11月11日であり、約54件もの記念日が一日に重なっている」という。
●つまり、10月10日は「記念日の日」と言っていい。勝手ながら、この日を「記念日記念日」と定めたい。

October 4, 2022

水沼の2ゴール、マリノスvs名古屋グランパス J1リーグ第31節

●マリノスの調子が戻ってきた。3連勝の後、札幌には引き分けたが、1日の名古屋戦は大勝。名古屋 0-4 マリノス。DAZNで観戦。結果は大差だが、試合終了直前に2ゴールを奪ったためで、大味な試合ではない。15分と46分に水沼宏太が2ゴール。どちらも選手間の連動性の高いビューティフル・ゴール。先制点は左サイドバックの永戸勝也が中に入ってアンデルソン・ロペスとのワンツーから抜け出て、マイナス方向へのパスに右ウィングの水沼が飛び込むダイナミックな形。今のマリノスらしい。試合終了後、2位の川崎が札幌相手に102分(←どれだけ長いアディショナルタイムなの)に逆転ゴールを許して敗れる波乱があった。1位マリノスと2位川崎の勝点差は8に。が、ぬか喜びは禁物。かつて優勝はほぼ決まったと思ったところからひっくり返されたことがあるので。
●今のJリーグの日本人監督で気になるのは、セレッソ大阪の小菊昭雄監督とサガン鳥栖の川井健太監督。小菊昭雄監督はプロサッカー選手経験がなく、なんと、大卒後にセレッソ大阪にアルバイト採用され、そこからスカウトやコーチのキャリアを積んで、ついに昨年に監督まで上り詰めた。現在リーグ戦4位、ルヴァン・カップでは決勝進出を決めていて成績も立派。
●鳥栖の川井健太監督は愛媛FCで選手として3シーズンを過ごした後、早々に現役引退して指導者の道に進み、女子チーム等の監督を務めた後、愛媛FC監督に就任。その後、山形でコーチとしてピーター・クラモフスキーを支えた後、サガン鳥栖の監督に就任して、若き戦術家として注目を集めている。クラモフスキーはマリノスの前監督ポステコグルー監督の右腕だった人。鳥栖のキーパーは元マリノスの朴一圭で、相変わらずフィールドプレーヤー並みにビルドアップに参加している様子。そんな点でもマリノス・ファンにとって気になる存在。現在リーグ戦は8位と健闘。鳥栖と契約更新したばかりだが、遠からず有力クラブによる奪い合いが起きるのは。

October 3, 2022

サイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団のワーグナー、シュトラウス、エルガー

ラトル ロンドン交響楽団●2日はミューザ川崎でサイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団。すでにロンドンを離れバイエルン放送交響楽団に移ることが決まっているラトルの音楽監督として最後の来日。というか、「オーケストラの来日公演」そのものの貴重さが高まってる今、期待度はマックス。プログラムはワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死、シュトラウスのオーボエ協奏曲(ユリアーナ・コッホ)、エルガーの交響曲第2番。エルガーの第2番はなかなか聴けない。弦は通常配置。オーケストラの入場がアメリカのオーケストラと同様、分散入場で(そんな言葉ある?)、いつの間にか全員そろっている方式。このスタイルは好き。客入りは上々。
●たいへんすばらしい演奏で、同コンビの前回来日時以上の満足度。ロンドン交響楽団のサウンドは解像度が非常に高く、澄明で輪郭のくっきりしたサウンド。強奏時も見通しがよくクリア。ラトルのもと、ひとつにまとまって集中度も高い。LSOってこんなにも上質なオーケストラだったっけと思ったほど。最初の「トリスタンとイゾルデ」から名演。ドイツ的な重厚さとはまったく異なる、爽快なドライブ感に貫かれたドラマティックな演奏。ラトル自身が楽しんでいる様子。シュトラウスのオーボエ協奏曲では首席奏者のユリアーナ・コッホがソロを担う(ローター・コッホと縁があるのかどうか、わからず)。この曲、なぜか今年はたくさん演奏されている。オーボエの音色が甘くややスモーキーで、濃厚なテイスト。最初の長いソロを吹き終えたところで「ふー」と大きく深呼吸していたのが印象的。酸欠になりそうな曲だけど、出てくる音はなめらか。ソリスト・アンコールにブリテンの「オヴィディウスによる6つの変容」から第1曲「パン」。
●後半、エルガーの交響曲第2番はきびきびとした第1楽章で始まって明快。この曲、第1番の直線的なドラマとは違って、さまざまなエモーションが複雑に絡み合う。高貴さ、ノスタルジー、哀悼、歓喜、ユーモア、諦念……。来日前の記者会見でラトルが「エルガーがもしウィーンに生まれていたら、きっとマーラーになっていた」と話していたけど、この日のプログラムはワーグナーで始まってシュトラウスとエルガーに分岐する後期ロマン派プログラム。終楽章が終わった後、普通なら沈黙が訪れそうなところだがこの日はすぐに拍手が出たのはやや意外だった。アンコールの前にラトルから日本語を交えたメッセージ。「ブラボー、ミューザ」とホールの音響を称賛。以前からラトルはミューザ川崎の音響を絶賛しており、今回も満足そう。こちらのアンコールもお国ものでディーリアスのオペラ「フェニモアとゲルダ」から間奏曲。絶品。最後はラトルのソロカーテンコールでスタンディングオベーション。

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