●ガブリエーレ・サルヴァトーレス監督の「ぼくは怖くない」を観た。舞台はイタリア南部の小村。ほんとになんにもないような寂しくて素朴な村である。この村の少年を主人公にしたささやかな物語。素朴な村だから、人々の生き方も素朴でのんびりしていて、ああ、シンプルな生活っていいわあ、こういうところに自分探しの旅に出かけようかしらん……なーんて思ったら大まちがい。素朴な村で生きる大人は、いかにそこで生き抜くか、さまざまな困難や葛藤を抱えながら生きている。そういう大人の事情を知らない少年の無垢な目から、小さな世界を描いたのがこのイタリア映画。傑作だと思う。
●10歳の少年は遊び場の廃屋で奇妙な穴を発見する。その穴に何かがいる。化け物なのか、天使なのか。まるでファンタジーのように始まりながら、背景にはイタリアの南北問題までうかがえる筋立て。アラブ系の血をうかがわせる顔立ちの村の男たちとミラノの人たちの対比は明白であるが、しかし一方でこの小村にふりそそがれる太陽の明るさ、見渡す限りに続く黄金色の麦畑の広大さはどうだろう。単に村が貧しいだけの土地だとしたらこの話はそれほど印象に残らなかったが、村には太陽がある。だから「告発の姿勢」を強調した小うるさい映画にならずに済んだ。進退きわまって悪事に手を染めるダメ親父がかなりいい感じ。