February 8, 2005

人口減少社会の設計―幸福な未来への経済学

人口減少社会の設計●最近、「これから日本の人口は減るから、長期的には日本の景気は悪くなる」とか「少子化社会だから経済に悪影響がある」とか、いろんな人がスポーンと気軽に未来予測しちゃってくれてるのだが、どうもしっくり来ないというか、やっぱりそういう話は統計なしに語るのって思いっきり意味レスでアホくさくね?と思ったので、「人口減少社会の設計―幸福な未来への経済学」(松谷明彦、藤正巌著/中公新書)を読んだ。目から鱗がポロポロと落ちた。
●やっぱ統計っすよ。ちゃんとあれがこうなってこうなるってグラフやら表で説明しないとさ。で、ニッポンの人口が2007年をピークとして減少するんだが、それがなぜかといえば「少子化」のせいじゃないとこの本は教えてくれる。人口ピラミッドを見るとわかるのだが、一言でいえば「長寿社会」になったから。高齢社会は必然的に多死社会でもあるとか、言われてみれば当然だけど、こういう視点は持っていなかったなあ。
●で、経済の本なので、人口減少社会では企業や社会のあり方がどんな風に変化するか、たとえば成長社会を前提とした売上高主義や終身雇用はそぐわなくなるけど、経済が縮小してもちゃんと現在の生活水準を維持して行くことはできるんだという将来像が描かれている。ワタシはおおむね安心した。ただ、気がかりなこともある。「人口減少」というテーマとは別に、日本は他の西欧先進国に比べて労働生産性が低いことや、労働分配率が低い(=利益に対して賃金が低い)ことが指摘されていた。たとえば、

ドイツやフランスの労働者が100時間働いて得られるのと同じ量のモノを買おうとするならば、日本の労働者は139時間働かねばならない。アメリカとの比較では147時間にもなる。GDPあるいは国民一人あたりのGDPの目覚しさに比べてあまりにもみじめではないだろうか。

 と言われれば、みじめです、としか言いようがない。しかもである。ワタシは無知でわかっていなかったのだが、日本の「国民一人あたり」GDPは圧倒的に世界最強であるが、実は「労働者一人あたり」GDPだと、ドイツ、フランス、アメリカなどと大差はない。要するに、他の先進国に比べて日本はずっと労働者の割合が高いということにすぎない。大勢が働いて、労働生産性は低いけど長時間労働するから、GDPは高くなる、と。そして、以下の記述がワタシの魂を激しく揺さぶるんである。

1990年代でみると、日本では52~53%の人が働いているが、先進国で過半数の人が働いている国はほかにはない。アメリカでもドイツでも45%前後であり、フランスでは40%を下回っている。

●なんとー! そうだったのか。見る見るうちに全身から勤労意欲が抜けていくのはなぜだ(笑)。これ知ったら日本人はもうみんな働かねえぞ、ったくフランス人は偉すぎるぜ、トレビア~ン。

トラックバック(1)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.classicajapan.com/mtmt/m--toraba.cgi/328

本日は、「産官学セミナー 人口減少社会の到来と、これからの技術のあり方− 社会の変化を見据えた都市における技術の取り組みについて −」を聴講してきた。 (貼り付け開始) 日本の人口は、ここ数年をピークに減少を始めると予測されています。 政策研究大学藤... 続きを読む

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「脳内ぐるぐるメロディ脱出策」です。

次の記事は「フィッシング詐欺とか、カード番号とか」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ

国内盤は日本語で、輸入盤は欧文で検索。