●10月21日より公開される映画「 トリスタンとイゾルデ」(ケヴィン・レイノルズ監督/リドリー・スコット製作)を試写で。
●クラヲタ的には「トリスタンとイゾルデ」といえばワーグナーである。ワーグナーは中世の悲恋物語であるトリスタン伝説にもとづいて、自ら台本を書いて楽劇とした。で、官能的で陶酔的な音楽は物語中に登場する愛の薬のごとく強烈なものであるが、ところでそもそのもこの物語、みなさんはとりあえずでも筋を承知してオペラを聴いていらっしゃるだろうか。ワタシは全然理解していなかった(トリスタン伝説についてまるで無知。岩波の「トリスタン・イズー物語」も未読)。「トリスタンとイゾルデが毒薬じゃなくて愛の薬を飲んじゃって、大変なことになるのであるよなあ」などと漠然とした筋だけ頭の片隅に入れてはいるが、実際には雄弁な音楽だけで頭グルグル状態、物語への関心はひたすら薄い。あー、そういやこの二人って、どうして困ったことになったんだっけ? みたいな。
●でも、これってしょうがないんじゃないだろか。だってワーグナーの楽劇では、幕が開けたらいきなりもうトリスタンとイゾルデはいっしょに舟に乗っている。イゾルデがマルケ王と結婚するためにコーンウォールへと向かう場面からスタートする。かつてトリスタンがイゾルデの許婚を殺したことや、二人の出会いなどといった、物語の前史が描かれていない(あるいはセリフでしか語られていない)。
●で、この映画「トリスタンとイゾルデ」をみて、ワタシはやっとわかったんですよ、この二人やマルケ王の関係性や、どういう因果があってワーグナーの楽劇の冒頭につながっているのかを。なんかすっごくすっきりした気がする。
●とはいえ、映画「トリスタンとイゾルデ」とワーグナーの楽劇は直接的には無関係。同じ伝説を素材にしているだけ。たとえば映画では愛の薬なんて出てこない。登場人物は同じなんだけど、途中で微妙に違う道を辿って同じ場所にたどり着いて、また別の場所に向かっていくみたいな関係で、まるでパラレル・ワールドの出来事みたいに感じられる。映画で「マーク」って呼ばれてるオジサンがマルケ王だったりするのも含めて。
●ところでワーグナーのほうだけど、最後にイゾルデが死ぬのはどうしてなんだっけ(←結局わかってないっぽい)。