●映画館で「スパイダーマン3」(サム・ライミ)。傑作。
●前作「スパイダーマン2」は青春映画の傑作だった。子どもが大人を乗り越えるという物語。主人公がまだ己の力を知らない子どもなので、敵はみな大人だ。ドクター・オクタヴィウスにしてもグリーン・ゴブリンにしても、肉体を人工的な機械を付加して武装するのは権力や富の表現と見えた。主人公は若者の武器でこれに勝利した。
●では「スパイダーマン3」はどうなるか?(以下、ほんの少し筋を割ります)。 ここではすでに主人公はヒーローとして成功を収めている。すでに成功した若者にとって敵となるのは、傲慢や憤怒、そして娼嫉である。だから今回の真の敵といえるものは不定形な相手である。砂状の粒子で肉体を保つサンドマンしかり、負の感情をパワーとして増幅させる謎の黒い寄生生命体で覆われたヴェノムしかり。スパイダーマンたるピーターは自分の人気に酔うあまり、ガールフレンドのMJの内面すらまったく見えなくなる。慢心がブラック・スパイダーマンを生み、自己の制御を失う。
●ブラック・スパイダーマンは見失った自分を取り戻すため、教会で黒い寄生生命体と格闘する。スパイダーマンは偶然、この黒い生命体は鐘の音が弱点であることを発見する。なぜなら憤怒や娼嫉に打ち勝つのは赦しだから。今回の敵は本質的に弱者である。だからスパイダーマンも力による勝利ではなく和解と寛容によって戦いを乗り越え、大人への階梯を一歩上る。
●物語的にはこれで完結してるんだけど、次はあるんでしょか。役者が老けてきたので、同じメンバーではもうムリか。ピーター役のトビー・マグワイアは顔の輪郭にすでに中年の雰囲気が出てきてるからこわい。トビー・マグワイアはマイケル・ダグラスと共演した「ワンダーボーイズ」のときの「なにを考えてるんだかさっぱりわからない才能のある若者」役が最強にステキだったんだがなあ。