スペインの天才作曲家、とあえて言いたい。カディス生まれ。この人、日本じゃ単なる「三角帽子」と「恋は魔術師」の通俗的な作曲家と認識されているような気がするが、きっとコレ、違う。孤高の天才、完全主義者タイプのほうがぴったりくる(自作に対する批評精神が強くて遅筆かつ寡作化だったんじゃないか)。前述2作に加えてちょっと変わったピアノとオケの協奏風作品「スペインの庭の夜」、この辺りは「アンダルシア時代」の作品。これだけでも立派な作品群だと思うが、その後「カスティーリャ時代」に入り、作風は厳しく変化、歌劇「ペドロ親方の人形芝居」やチェンバロ協奏曲(ワンダ・ランドフスカに献呈)などが書かれる。チェンバロ協奏曲なんて極めて現代的な曲だ。「ペドロ親方」にしても、「ドン・キホーテ」を題材に取りつつ、人形劇を観る観客を観る聴衆というメタフィクション的構造、現実と虚構の区別がつかなくなるという幕切れ、古い聖歌や世俗音楽を素材とする古典回帰性など、様々な現代的なテーマに溢れているではないかっ。生涯独身。
ポーランドの作曲家。前衛系。微分音(半音未満の音程)の集積による「トーン・クラスター」の技法が有名。60年代に書かれた「広島の犠牲者に捧げる哀歌」なる曲が知られているが、この意味深長な曲名は実は作曲後に付けられたものである。当初は「8分37秒」と記号的な題だったのを、「哀歌、8分26秒」として作曲コンクールに応募、さらにその後で現在の曲名で別のコンクールに応募、とまあなんだか節操なさげ。しかし曲の価値はそのタイトルにあるわけではなく音楽自身にある。さらに言えば、この初期の作品の後にもたくさんの曲が書かれ、ペンデレツキの名声は確立されているのだ。
今世紀のイギリスを代表する作曲家。しかし、ちょっと不幸な作曲家でもある。今でもそうかは知らないけど、学校音楽教育でこの人の「青少年のための管弦楽入門」を無理矢理聴かされ、それでブリテンのイメージが固定化されがちだった。この曲自体は結構カッコいい曲なんだが、題名がダサダサの上、授業で聴かされるっていうシチュエーションがどうも。大人になったら改めて出会おうねの作曲家だ。最近じゃこの人のオペラ(「ピーター・グライムズ」とか「カーリュー・リヴァー」とか)もLDが出たり、上演されたり(名古屋がすごいんだ)、認識も変わりつつあるかも。
スペインの作曲家。まだ健在なり。「アランフェスの協奏曲」と言ったら、あまりに有名。アランフェスのマドリッド近郊の歴代王室の離宮跡なんだそうだ。うむむ、マドリッド。ギター曲が特に愛され、他に「ある貴紳のための幻想曲」など。
ハンガリー生まれの大指揮者。ご存じフィラデルフィア管弦楽団との名コンビは遺された数多くの録音で聴ける。フィラデルフィア・サウンドって言ったらオーマンディ。もう、ホントにエンタテイナー系。サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」なんて、最強にゴージャス、テカテカ。
今がまさに旬の作曲家といえばこの人。ドイツの今世紀を語るとなれば、やっぱりこの人は外せん。従来からも交響曲「画家マチス」(あの有名なマチスとは別人なり)、ウェーバーの主題による交響的変容などは度々演奏されていたが、最近は室内楽にも脚光、ヴィオラ・ソナタなども人気か。なぜか(と言っていいのかどうか)グレン・グールドはヒンデミットに積極的だった。3曲のピアノ・ソナタに加え、歌曲集「マリアの生涯」まで入れたのだから。余談だが、ウィーン・フィルの初来日における指揮者はヒンデミットだった。不思議。
指揮者としてもピアニストとしてもこれくらい成功している人は稀。シカゴ響やベルリン・フィル、パリ管を振る一方で、いまでもときどきピアノのレコーディングまでやってるわけで、スーパースターな人……なんだが、日本での人気はスターという感じでもないような。病に臥すデュ・プレを捨てた過去のせいなのか(笑)。最近では映像でチェリビダッケと共演したチャイコフスキーやシューマンのピアノ協奏曲があった。やっぱりこの人の頭にはフルトヴェングラーがあるわけで、その流れからいくとチェリビダッケと共演するのも不思議ではない。頭頂部がちょっとかわいそうな感じになっているが(笑)、とにかく音楽家としては偉大なり(と、フォロー)。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの親父。で、作品は? 伝ハイドンの「おもちゃの交響曲」がレオポルド・モーツァルトの作曲だって説は生きてんだっけか? それとも元々俗説だったかな? まあ、どっちでもいいんだけど(なげやり系)
アメリカの作曲家(生没年がやたらにキリがいい)。ニューヨークに生まれ、パリに渡りナディア・ブーランジェに師事。非前衛畑。演奏や録音の頻度の高い曲としては、メキシコ・シティの酒場の名を題に取った「エル・サロン・メヒコ」、ベニー・グッドマンの委嘱で書かれたクラリネット協奏曲(最近ではストルツマンなんかも演奏。いいかも)、マーサ・グラハム舞踊団のためのバレエ組曲「アパラチアの春」、ずばり西部なバレエ組曲「ロデオ」、アメリカ民謡を用いたバレエ音楽「ビリー・ザ・キッド」などなど。アイヴズ〜ケージのラインとはまた違った、アメリカ20世紀音楽の姿がここにある。
ロシア国民主義作曲家。クラシック音楽ファンでなくとも、「だったん人の踊り」を耳にしたことのない人はいないだろう。テレビのコマーシャルやら場面音楽などとしても使われる永遠のロング・セラーか。本来は遊牧民だったん人と戦うイーゴリ公を描いたオペラ「イーゴリ公」の中の音楽である。他に交響曲第2番、交響的絵画「中央アジアの草原にて」、弦楽四重奏曲第2番などが有名。民族色濃厚系。
チェコに生まれミュンヘンで没した名歌手。若くして逝去したことが惜しまれる。ウィーン、ミュンヘンを中心に活躍したリリック・ソプラノ。
フランス・バロックの大作曲家である。超大作曲家、ウルトラ大作曲家とあえて言いたい。クラヴサン(チェンバロ)音楽の冒険者。その万華鏡的ミニチュア世界はまばゆい。職人型ポエジー系。ソロのクラヴサン曲集第1巻〜第4巻、アンサンブルの「王宮のコンセール」、そしてフランス、スペイン、神聖ローマ帝国、ピエモンテの人々を描いた組曲「諸国の人々」(私はサバール盤がお気に入り)など傑作は多い。ああ、バッハを「音楽の父」なんていまだに教えてる人たちは失礼千万にして反省。音楽はバッハより前からあるって。実は私もこのあたりのスゴさを気づいたのはつい最近。ラモー、リュリらとともに、今一番「もっと聴きたい」作曲家の一人なのだ。
イギリスの作曲家。最近、じわじわと日本でも録音を通じて聴かれるようになりつつある。英国系レーベルの尽力の賜物か。サーの称号もらっているから、サー・アーノルドだな。
オーストラリア出身のソプラノ。国際的なキャリアを築いた名オペラ歌手なんだが、好きな人は好き、嫌いな人はまるで嫌いというタイプか。たしか指揮者のボニングが旦那。デイムの称号もらっているから、デイム・ジョーンだな。
アメリカの軍楽隊楽長さん。マーチの王様ですなあ。「ワシントン・ポスト」とか「星条旗よ永遠なれ」とか。何年か前にショルティ/シカゴ響の来日公演を聴きに行ったとき、なんとマーラーの5番の後にアンコールでスーザをやったのだ。マーラーの後にスーザ。しかも異常に巧いスーザ。わからなすぎ。
ハンス・ザックスというのは、ワーグナーの著名な歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の登場人物。中世末期、市民階級が台頭する自由都市ニュルンベルクにあって、職人たちが形成する組合組織で最も「その道を極めた」人に与えられる呼称がマイスター(「親方」なんつー日本的な訳もあり)。良き職人であり良き歌い手であるマイスタージンガー(ジンガー、歌手ですね)は、同時にマンネリズムに陥りがちだったというが、そんな時に芸術的創造性によって名を残した人物がハンス・ザックスである。すなわち歌劇の登場人物として有名なだけではなく、実在の人物。ワーグナーはハンス・ザックスに自己を投影し、同時に当時の批評界の大御所ハンスリックを紋切り型で卑俗なベックメッサーにたとえ暗に揶揄した、という話はその手の解説本にはよく書かれる。ということで民衆歌手代表なり。現代ならカラオケ・マスターか(違うって)。
巨匠ピアニスト。伝説級。モーツァルト、ドビュッシー、ラヴェルなど録音も多く残されている。いつの間にか、生誕百周年。それにしても、これら伝説の人たちを最新のデジタル録音、いやせめてステレオ録音で聴けないかってのはリスナーの夢。
後世に大きな影響を与えたといわれるオペラ作曲家。歌劇「ノルマ」「清教徒」「夢遊病の女」が有名。「カプレーティとモンテッキ」(ロメオとジュリエット)なんかも時折上演される。オペラ以外では唯一オーボエ協奏曲が健闘か。
ウィーンを中心に活躍した作曲家。「古典派」と言いながら、事実上ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの3人しか念頭に置かれていなかったりするが、実はこういう人もいるのだ。いずれ旬の作曲家と呼ばれる日も来るだろう。
スペインのソプラノ歌手。バルセロナ生まれということで、この人もカタルーニャ人なのか。幾度となく来日、スペイン歌曲などで定評。
アメリカの作曲家。同時に指揮者であり教育者でもある。いくつかの交響曲他を残している。ロマン派の伝統の延長上にある保守アカデミズム派の作曲家と見たり。この人の経歴ですごいと思うのは、28歳でイーストマン音楽院の院長になったってこと。うーん、アメリカ。
「あなたの誕生日に誰が生まれたか?」が分かればいいなという趣旨のこのページ(1年続く保証はまるでないが)、私めの場合はこの人、パガニーニである。ヴァイオリン演奏のヴィルトゥオーゾとして完全に「伝説」となったスターだけど、なぜかこの人と誕生日が同じでもイマイチ嬉しくなかったりして(汗)。代表作といったらヴァイオリン一丁のカプリース集とか、ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番といったとこが妥当なんでしょーか。技巧系。
もう最強にセンスがいい作曲家と言ったらこの人でしょう。とにかく膨大かつ傑作ぞろいのソナタ。聴く人は聴くし、聴かない人はまるで聴かない。曲名もKとかLとか整理番号ばかりでどれがどれやら区別がつかん、というのはよく分かるが、見過ごすにはあまりにもったいない。ホロヴィッツのピアノで聴いても良し(ホロヴィッツの中でこれが一番好き)、スコット・ロスなりプヤーナ、コープマンその他いろいろのチェンバロで聴くも良し、(弾けるなら)自分で弾くも良し。現代のコンサート・ホール向けのレパートリーとは思えないので、この種の曲はCDで聴くのが基本か。
ビゼーと言えば「カルメン」。人口に膾炙しているといえばこれほどのオペラもあるまい。ぜひとも全曲を、できれば映像で観たいところ。「アルルの女」、交響曲ハ長調もよく知られる。オペラで「カルメン」に次いで聴く機会の多いのは「真珠取り」だ。ピアノ曲では、グールドの演奏で有名な半音階的変奏曲、連弾用ピースでおなじみの小組曲「こどもの遊び」。37歳で没した夭逝の天才。