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グループリーグ(3)
決勝トーナメント

デンマーク 2 - 0 フランス
1ゴールも決めずに韓国を去る前回王者。
満足度
★★★★
伝説度
★★
●セネガルに敗れ、ウルグアイに引き分けたフランス。この試合は2点差以上で勝たなければ、ほぼ敗退が決まる。前の試合で退場になったアンリを欠いた王者は、ついに怪我のジダンを先発させる。中盤にはプティに代えてマケレレ。トップはトレゼゲとデュガリー(→シセ)。左にリザラス、右にカンデラ。とにかく攻撃的に戦うしかないわけだ。
●デンマークの偉大なところは、攻撃に対して攻撃で立ち向かったところである。守備的に戦い安全圏へ逃げようという発想ではない。したがって、試合はオープンで見ごたえのあるものになった。
●ジダンはときどきさすがと思わせるプレイも見せるが、やはり怪我が完治しておらず、痛々しい。気のせいか、デンマークのプレーヤーたちもジダンに気を遣って激しいタックルを控えているようにすら見えた。
●北欧の強豪は、そんな堂々たる戦いぶりを見せ、なおかつ勝者となった。だれも文句のつけようのない完璧で紳士的な勝利である。かつてダークホースといわれながら欧州選手権を制したことを思い出す。このチームは強い。
●なぜフランスがこんなに早く敗れ去ることになったのか。直前の韓国との親善試合でジダンを失ったことはもちろんだが、前の2戦に関する限り、「受けて立ってしまった」ことも要因に挙げられると思う。さらにツキもなかった。巧いことは巧い。また挑戦者の側にまわれば強豪国となるだろうが、それにしても今回の決勝トーナメントが寂しくなってしまった。まだ勝ち抜けが決まらないアルゼンチンやイタリアがどうなるか、心配である(6/12)

カメルーン 0 - 2 ドイツ
芸術より実用、奇抜なアイディアより基本……なのか。
満足度
★★★
伝説度

●この試合、16枚(!)のイエローカードと二人の退場者を出す荒れた試合になったのだが、どうしてそうなったのかがわからない。ほとんどボールを無視してつかみ合いの喧嘩になりかけていたシーンまであった。なにがあったの?
●勝者が決勝トーナメントへ、負ければ脱落決定、引き分ければ同時刻のアイルランドvsサウジアラビアの結果次第(ただしドイツがかなり有利な状況)。カメルーンは攻撃するしかない。開始早々からカメルーンがゲームを支配、テクニックとアイディアのあふれる攻撃的で楽しいサッカーを見せてくれた。相手ディフェンスラインの裏をとろうという狙いもはっきりしており、12分、オレンベがスルーパスに反応し相手ディフェンス・ラインを抜け出て、カーンとの一対一に。ここで先制していればまったく違うゲームになったのだが、好機を無駄にしてしまう。ドイツは前半の内にラメロウを2枚目のイエローカードで失ってしまったにもかかわらず、徐々にペースをつかみ、気がつくと「いつものドイツ」の試合になっていた。基本に忠実に守り、教科書通りの攻撃でゴールを奪い、だれも風変わりなプレイもしないし、華麗なドリブルもないが、終わってみたら勝っていたという「いつものドイツ」。つまり、強いドイツがワールドカップに帰ってきたのだ。
●クローゼはこの日のゴールでほぼ得点王を手中にしたかも。今回のドイツは決勝まで進んでもおかしくないと思うが、一方でトーナメント1回戦に出場停止となる選手が多いのが不安材料。カメルーンは中津江村の騒動が話題になりすぎ、民放での中継はバラエティ番組化してしまっていたが失礼な話である。ドイツよりもずっと美しく、しかも洗練された好チームだったが、勝負強さ、粘り強さ、集中の持続を欠いていた。ワールドカップは「楽しいチーム」に対して辛辣である。 (6/12)

ナイジェリア 0 - 0 イングランド
(裏:スウェーデン 1-1 アルゼンチン)
すっかり親善試合化。イエローカード・ゼロ。
満足度

伝説度

●負けなければいいイングランド。すでに敗退が決まったナイジェリア。しかもこの日の大阪は暑かった。そして試合はすっかりお上品な親善試合に。昨日のカメルーンvsドイツのイエロー16枚に対し、この日はなんとゼロ。選手は正直だ。ファウルもオフサイドも少なかった。「死のF組」の反対側ではスウェーデンとアルゼンチンの死闘が繰り広げられていたわけだが、こちらは牧歌劇。そもそもイングランドは1位になっても次の相手はセネガル。2位ならデンマーク。1位を狙う理由すらない。
●今回、全試合の放映権を持っているのはスカパーのみ。NHKはこの日、ナイジェリアvsイングランドの放映権を獲得していた。真剣勝負を無視し、予定調和を放映することになってしまったわけだ。これまでだったら、急遽放送予定を変更したりすることもできたが、今回はそれができない。地上波の放映試合数を見て「これなら十分」と思いスカパー導入を見送ってしまったのだが、この日の夜の伝説的なパラグアイの逆転勝利を見逃したことも含め、いまさらながらやや後悔。
●裏で同時に行なわれていたスウェーデンvsアルゼンチンはドローに終わり、結局、優勝候補のアルゼンチンが敗退してしまった。専門筋が優勝候補に挙げていたフランスとアルゼンチンの2強がグループリーグで消えてしまうとは、まったく残念(つうか、個人的にはアルゼンチンを応援してたのでねえ)。決勝トーナメントが地味になってしまうんじゃないかという危惧も正直あり。それどころか決勝戦がデンマークvsセネガルとかになったらどうしよう(ってそれが悪いことのような言いようだな)。これまでにいくつかあった「ワールドカップの法則」(主に伝統的強豪国以外は決勝に進めないとかそういうこと)が今回は破られそうな予感があるわけだが、果たして。実際には前回および前々回ではあわやというところまで行ってるんすけどね。 (6/13)

エクアドル 1 - 0 クロアチア
(裏:メキシコ 1-1 イタリア)
横浜国際で生観戦。やっぱり3戦目はおもしろい!
満足度
★★★★
伝説度
★★

●世の中の注目が追い詰められたイタリアに集まる本日、しかしワタシは横浜国際の裏カードを生観戦。前の試合でクロアチアがイタリアに勝ってくれたおかげで、同組4チームともに決勝トーナメント進出の可能性を残すという、大変スリリングな状況である。試合前の漠然とした予想で言えば、イタリアがメキシコに勝ち、クロアチアがエクアドルに勝つ。そしてイタリアとクロアチアが勝ち抜け、この日まで2戦2勝のメキシコが得失点差で敗れる……。
●が、クロアチア、勝ちを狙わなければいけないのに、意外と積極性を欠く。エクアドルは高いパス能力を持ち、中盤をワイドに使い、横パスをつなぎながら攻撃を組み立てるチーム。ディフェンスの強さはあまり感じられない。どうもクロアチアは簡単に得点できると思っているのか、なかなか思い切った攻撃を仕掛けられないように見えた(その後テレビの監督の談話によると「決勝トーナメント進出がかかり、選手たちは緊張していた」とのこと。そうだったのか)。前の試合で大活躍のオリッチ、途中出場のヴグリネッチともにぱっとしない。ラパイッチは気を吐いていたが。
●途中経過が入ってきた。なんと! メキシコがイタリアから先制ゴール! えええ、ってことはそのままいくと、この試合でエクアドルが勝たない限り、イタリア敗退が決まってしまうではないか。フランス、アルゼンチンという優勝候補を失い(ついでにいえばオランダは出場すらしてない)、ここでさらにイタリアという伝統国が消えてしまっては、あまりにも決勝トーナメントが寂しい。がんばれ、イタリア。エクアドル人たちとともに、エクアドルの勝利を祈る。
●後半3分、あっけなくゴールが生まれる。デラクルスからのクロスをデルガドが頭で落とし、中央でメンデスが豪快に蹴り込む。押されていたエクアドルがゴールを決めた。エクアドル人も、イタリア好きな日本人も喜ぶ。後半からさすがにクロアチアにも必死さが感じられるようになり、ワールドカップの3戦目らしい雰囲気になってきた。その後、終盤にイタリアがメキシコに追いつき、さらに脆弱そうに見えたエクアドル守備陣も崩壊せず、無事に1−0で勝負がつく。勝ち抜けたのは「表」のメキシコとイタリア。目の前にいるクロアチアとエクアドルはともにここでワールドカップが終わってしまった。
●が、会場の雰囲気は完全にハッピーエンド。落胆しているのはクロアチアのみ。そりゃそうだ、エクアドルはワールドカップ初出場にして、初勝利を、しかも強豪クロアチアから奪ったんだから。嬉しいに決まっている。大いに盛り上がるエクアドル人たち。イタリアの勝ち抜けが決まって安心する日本人たち。スタジアムの出口に向かう人の群れは「エクアドル! ニッポン! エクアドル! ニッポン!」と友好のコール。皆、穏やかな幸福感に包まれて横浜国際競技場を後にしたはずである……クロアチア・サポーター以外は。 (6/14)

チュニジア 0 - 2 日本
(裏:ベルギー 3-2 ロシア)
祝、決勝トーナメントへ1位通過!
満足度
★★★★
伝説度
★★

●「2点差以上で負けなければ決勝トーナメント進出決定」という、予想以上に緩い条件で迎えた第3戦。大阪・長居の雰囲気は明らかに前2戦とは異なっていた。厳しい真剣勝負の雰囲気ではなく、すでにお祭り、お祝いモード。日本の先発メンバーはロシア戦同様、GK:楢崎−DC:中田コ、宮本@マスクマン、松田−ML:小野、MR:明神−MC:稲本、戸田−AMC:ナカタ−FW:柳沢、鈴木。
●これまでの慎重な戦い方とは異なり、この日はニッポン代表らしい攻撃的なサッカーを見せてくれた。スリルはやや欠いたが、第三者が見る試合としてはおもしろいものになっていたと思う。特に後半、稲本を下げて(次を見据えたコンディション調整だろう)明神を中へ、右アウトサイドに市川、フォワードの柳沢に代えて森島を入れて運動量を回復してからは見ごたえあり。2つのゴールはいずれも交代選手がからんだもの。相手ディフェンダーのクリア・ミスを拾った森島の1点目、右アウトサイドから体を揺らしたフェイントだけでディフェンダーに尻餅をつかせた市川のクロスボールにナカタがヘディングで決めた2点目、どちらも美しかった。特に市川はそれまでなかなか正確なクロスが入らなかっただけに、このすばらしい一本で一挙に汚名挽回。
●鈴木の前線での献身的な動きもすばらしかった。宮本も安心して見ていられた。でもやっぱり、ナカタのチームっすね、ニッポンは。堂々たるH組1位通過である。シード国という開催国の有利さがあったことは確かだが、これを生かせるのも実力あればこそ。2勝1分。次の対戦相手はC組2位のトルコ。強いチームだがブラジルとあたるよりはいい。
●この先はトルシエが言うところの「ボーナス」である。 思い出せ、ワールドユースの決勝を。トルシエは決勝を「ボーナス」と呼び、駆け引きなしでスペインに真向勝負を挑んで大敗した。この先、トルシエはこれまでのような慎重な戦い方をしてこないような気がする。フランス人指揮官のコントロールを離れたところにある、ニッポン・サッカーを久しぶりに見ることになりそうだ。奇矯なフランス人との別れが近づきつつある。(6/15)

ポルトガル 0 - 1 韓国
(裏:ポーランド 3-1 アメリカ)
祝、韓国。ただしグループリーグ最大の「問題の一戦」かも。
満足度
★★
伝説度

●ワタシの周囲でも論議を呼んでいるのがこの試合。韓国のグループリーグ突破を祝福する一方、フィーゴらのスターを抱えるポルトガルの敗退が決まってしまったのは残念。それ自体はともかく、結果的に「もしこの試合がドローで終わっていれば、韓国、ポルトガルともにトーナメントへ進出できたのに」という思いが後に引きずってしまったわけだ。
●もっとも、試合開始時にはそんな状況はあまり考えられなかった。同時刻のポーランドvsアメリカの行方などだれにもわからないし、ここまでの戦いぶりを見ていればアメリカが勝つと予測するのが自然。であれば、韓国は引き分けでもいいが、ポルトガルは勝ちにいかなければならない。
●ところが、試合開始早々、ポーランドがアメリカから1点、2点とゴールを奪う意外な展開に。ポルトガルと韓国は前半を終えて0-0。前半にジョアン・ピントがレッドカードで退場している。ポーランドとアメリカはこの時、2-0。つまり後半はお互いにボールをまわして試合を殺してしまえば、めでたく両者決勝トーナメント進出が濃厚だったわけだ。
●でもそうはならなかった。ポルトガルから二人目の退場者が出た。ベットに2枚目のイエロー。韓国からスーパーゴールが生まれた。パク・チソンの見事な個人技。二人少ない状況でもポルトガルは必死に攻め、いくつかのシュートは伝説の一歩手前まで達していたが、ゴールは生まれない。不思議に韓国にもゴールは生まれない。
●韓国はこの試合の後半で、実質的にアメリカとポルトガルに対する二者択一の生殺与奪の権を握っていた。そしてこのホストカントリーはアメリカを助け、ポルトガルを退けた。ワタシらはサッカーの世界ではアメリカをあまり好まないし、ポルトガルには好感と憧れを抱いている。だから、ちょっとこの選択が物議を醸すものに見えてしまうわけだ。でも、韓国がアメリカ好きだったわけではないんだろう。満員のサポーターに押され、目の前の勝利を得たかったのではないか。もしニッポンが同じ状況になったら? ワタシならニッポンは後半の45分間だらだらとボールをまわすだけで構わないと思うし、相手とも無言の交渉があっさり成立することを期待する。でもこういうのがスポーツマンシップに反するという考え方もあって当然で、韓国はこの試合にシンプルに全力を尽くした。
● ポルトガルには無慈悲な結果となってしまった。もちろん、不用意にレッドカードをもらってしまったのはポルトガル側の取り返しのつかないミスだったので、「不運」ということではないのだが。 (6/15)

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