June 30, 2004

死というものも知らずにいて

●ある人気小説を読みはじめて、わずか10ページ足らずで挫折した。別に作品の良し悪しとはまったく関係ない。冒頭、ある登場人物を紹介する過去のエピソードとして、ドーベルマンを無意味に殺すシーンがあるのだが、これでもうダメである。人を殺すシーンなら引っかからなくても、犬を殺すと理屈ぬきで引っかかる。ワタシはジャック・ケッチャムの動物愛護暴力小説「老人と犬」を共感をもって読むことができる。
●もちろん猫もダメだ。もっとダメだ。森茉莉の一節を。

死ぬ日の午後、寝台の下から私を見て、一声啼いたお前の声は今でも私の胸を掻きむしる。それは母親の死んだ時の記憶よりも切ない。何故ならお前は自分が猫であることも知らず、死というものも知らずにいて、そのために幸福だった。それが最後の日になって、やっぱり何かを感じたらしかったからだ……。(「私の美の世界」 森茉莉/新潮文庫)

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