June 2, 2010

アルゼンチンvsイングランド@ワールドカップ1986メキシコ大会準々決勝

アルゼンチン●いよいよ近づくワールドカップな今、過去の名試合をNHKが再放送してくれており、だからといってそんな試合を次々見てるヒマなんてないっすよねー、とつぶやきながらも力こぶマックスにしてこれだけはしっかり録画して見た、あのアルゼンチンvsイングランド戦、ワールドカップ1986メキシコ大会準々決勝。マラドーナの「神の手」ゴールと「5人抜きゴール」がこの一試合から生まれたというフットボール史上最強の伝説マッチ。
●覚えてますよー、あの試合はねえ……と、したり顔で講釈垂れたいところだが、実は覚えてなかったんである。えっ、これって2-0でアルゼンチンが勝ったと思ったら、イングランドも1点反撃してたんだ、とか。局所的にはこれまで何度もリプレイを見ているわけだが、もしかしたら1試合まるごと見るのは86年以来これが初めてかも。リネカー若いなあ。
●で、改めて2010年視点で見て、いろいろ驚く。86年というのはこんなにクラシックだったのかと。今のサッカーのほうがはるかにスピードがあり、ダイナミックで、よく走り、たぶん技術も高い。なんといっても自陣で相手のプレスを受けないのが違う。アルゼンチンもイングランドも、ディフェンス・ラインではゆっくりとボールを保持できる。それどころかボランチの選手くらいまではのんびりしていられる。今あんなことしてたら、ハイエナの群れのように相手選手が寄ってきて、たちまちボールを奪われてしまう。プレッシングしないので、前線とディフェンスラインの間隔も開いている。
●でも、これって当然なんすよね。だってこの頃はキーパーへのバックパスができたから。相手がつめてきたら、すぐキーパーに返せばOK。キーパーはボールを手で受け取れる。そこでゆっくり陣形を整えてからボールをフィードすればいい。フォワードが相手ディフェンスラインにプレスをかけるなんて、体力を浪費するばかりで割に合わない。
●「神の手」はどう見てもハンドなわけだが、イングランドの選手たちが猛抗議しないのに驚いた。何人か主審に詰め寄ったけど、あっさりしたもの。今だったら大変なことになるわけで、審判の権威の絶対性みたいものを感じる。ってのと、もう一つ、満員のスタジアムは圧倒的にアルゼンチンのほうを応援してたんすよね、メキシコだから。アルゼンチン・ホームの雰囲気ができていたのも影響していたのかも。
●マラドーナの「5人抜き」はやはり奇跡のプレイ。色褪せていない。「イングランドの選手はどうしてファウルを使って止めなかったんだ。他の国なら当然ファウルしただろう」とマラドーナ本人が語っていたっけ。マラドーナがハーフウェーライン手前でターンして二人抜いたあたりまでは、まだ神プレイが生まれる予兆はなかったが、そこからあっという間に加速して、あっけないほど軽々と5人抜きをしたような印象がある。「えっ、あれれ、なにこれ?」みたいな。
●集団的な守備戦術が今ほど発達していない一方、一対一の当たりの激しさは変わらない。ところが、選手が痛んでうずくまったり倒れたりしてボールを外に出すというシーンが見当たらない。アルゼンチンが2ゴールを決めた後、マラドーナが一度負傷でピッチを出たり、キーパーのプンピードが少し痛んだりといったのはあったけど、0-0の間、どちらかの選手が倒れてゲームが止まるという場面はあっただろうか? たまたまこの試合だけかもしれないけど、なんとなく「相手に弱みを見せない」という毅然とした姿勢が両者に感じられるような気もする。まあ、今の選手のほうが試合数も運動量も多くて消耗していることは確かなので、比較の対象にはならないんだけど。

トラックバック(0)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.classicajapan.com/mtmt/m--toraba.cgi/1444

ショップ

国内盤は日本語で、輸入盤は欧文で検索。