November 2, 2015

東京芸術劇場「ジョワ・ド・ヴィーヴル~生きる喜び」

ジョワ・ド・ヴィーヴル~生きる喜び●1日は東京芸術劇場開館25周年コンサート「ジョワ・ド・ヴィーヴル~生きる喜び」へ。鈴木優人さんがアーティスティック・ディレクターを務め、第1部「祈り」と第2部「希望と愛」の2部構成。第1部はバッハ・コレギウム・ジャパン他が参加して、マショーやスウェーリンク、バッハからリゲティ、ペルト、鈴木優人作品など古今の祈りの音楽、第2部では芸劇ウインド・オーケストラによる小出稚子「ウィンド・アンサンブルのための玉虫ノスタルジア」(バリトン・サクソフォン版世界初演)とストラヴィンスキー~R.アールズ編曲の組曲「火の鳥」吹奏楽版、そして東京交響楽団によるメシアンの「トゥーランガリラ交響曲」(ピアノ:児玉桃、オンド・マルトノ:原田節)という二部構成。指揮はともに鈴木優人。これを一日で全部やってしまうという大胆な企画。
●で、本来なら全部聴いてこその企画ではあるけど、前半は都合がつかず第2部から。吹奏楽とオーケストラを同一指揮者の同一公演で聴くという珍しい体験。ピアノを含む14人の編成のために書かれた「玉虫ノスタルジア」は特殊奏法も活用しながら、多彩なニュアンスを生み出すチャーミングな作品。「火の鳥」はおなじみの1919年版組曲を吹奏楽用に編曲したというもので、原曲になじむ人にも違和感が少ないかと。芸劇ウインド・オーケストラは次世代のプロ演奏家を育成するためのアカデミーとして結成されたという団体で、さすがに巧い。吹奏楽もこの水準になると響き自体の美しさに魅了される。
●第2部後半、東京交響楽団とのメシアンの大作「トゥーランガリラ交響曲」は圧倒的な響きの洪水。作品の官能性と歌謡性がひしひしと伝わってくる。「トリスタンとイゾルデ」の延長上にある愛の音楽としての饒舌さを堪能し、この日のテーマが「ジョワ・ド・ヴィーヴル~生きる喜び」であることを思い出す。

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