June 10, 2016

ヒラリー・ハーンのヴァイオリン・リサイタル

●8日はオペラシティでヒラリー・ハーンのヴァイオリン・リサイタル(東京オペラシティ)。ピアノはコリー・スマイス。今回も果敢なプログラム。前半にモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ ト長調K.379とバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調、後半&アンコールはコープランドを別とすれば自らが委嘱した作品ばかり。アントン・ガルシア・アブリルの「6つのパルティータ」より第2曲「無限の広がり」、第3曲「愛」、コープランドのヴァイオリン・ソナタ、ティナ・デヴィッドソンの「地上の青い曲線」。ティナ・デヴィッドソンはアンコールが前もって本編に組み込まれているようなものだが、続いてアンコールとして、佐藤聰明「微風」(作曲者臨席)、マーク・アントニー・ターネジ「ヒラリーのホーダウン」、マックス・リヒター「慰撫」と続く。ティナ・デヴィッドソン作品以降はいずれもDGでレコーディングも果たしている「27のアンコールピース」プロジェクトの一環として委嘱された小品。
●前半のバッハが圧巻。異次元の巧さに場内絶句といった感。盛大な喝采が寄せられてひとまず充足できたわけだが、で、後半はどうなるかといえば、みんなぞろぞろと帰り出す……わけはなくて、しっかりお客さんは付いてきてるんすよ。いやー、ホントはバッハをもう一曲聴きたくないすか、みたいなイジワルな心の声に惑わされつつも、思い切り楽しむ。コープランドは少しジミな選曲かなと思いきや、これがとても味わい深く聴けるヒラリーの魔術。見たこともないアメリカの原風景を想像して仮想ノスタルジーに浸りつつしみじみと聴き入る。ティナ・デヴィッドソンは「地上の青い曲線」の題名通りの爽快な曲で、左手ピツィカートとハーモニクスを使った澄んだイントロダクションに続いて、のびやかなメロディが延々と繰り出されるという、果てしなく続く青空感。佐藤聰明「微風」で癒され、軽快なターネジ「ヒラリーのホーダウン」に胸がすく。
●で、これで終わりかな、終わってもおかしくないけど、なんだか一曲くらいはもっと激烈な曲、クレイジーな曲があってもいいんじゃないかなと期待しなくもない。が、最後にやってきたのはマックス・リヒターだった。かなりしっとりとアンビエントな(?)雰囲気で終わったのだが、これが目下自分にとって踏み絵みたいになっている痛いところを突かれた気分。LFJの「四季」リコンポーズドはどうしようかとさんざん迷った末に見送ることにしてしまったのだが、うーん、もう少しお友達になるべきなんだろうか、ポスト・クラシカル全般に。と迷い中。

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