August 5, 2016

飯森範親指揮東京交響楽団のポポフ

●4日はサントリーホールで飯森範親指揮東響へ。ポポフ(ポポーフ)の交響曲第1番日本初演という貴重な機会。平日夜にこんな珍曲で大丈夫なのかと思いきや、客入りはまずまず。前半はまずは超名曲、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。ソリストはオルガ・シェップス。ソニーから録音を出している人で、モスクワ生まれのドイツ育ち。長身でビジュアル的にも華やか。ていねいというか、入念に歌いこむラフマニノフ。アンコールにはサティの「ジムノペディ」。これがダイナミクス、フレージング、音色の変化など、ねっとり濃厚な表情が添えられた「ジムノペディ」で、アンチ「アンチ・ロマン」的というか。最新アルバムがサティだからという大人の事情による選曲ではあるんだろうけど、結果的に意外なところでラフマニノフにつながっているのかも。しかも、アンコールがもう一曲で、プロコフィエフのピアノ・ソナタ第7番終楽章。客席は沸いた。メイン・プログラムの前に予想外の満腹に。
●後半は未知の作曲家ポポフ。ざっくりとした印象でいえば「ショスタコーヴィチになれなかった男」。同じ時代と国を生き、同じように当局から批判され、同じように体制に適応した。交響曲第1番は当局から槍玉に挙げられたほうの作品で、ホルン16本(倍管仕様)を含む総勢120人超の大オーケストラが舞台を埋め尽くすという、ステージを見ただけで轟音が聞こえてきそうな怪作。苛烈な音楽を覚悟して臨んだ。
●で、たしかに轟音なんだけど、音楽的にはむしろショスタコーヴィチよりもフレンドリーなんじゃないだろうか。というか、ショスタコーヴィチほどの厳しさはなく、屈折した二枚舌の音楽でもない。むしろのびのびと荒くれているというか。第3楽章はマシーンの音楽、工場の音楽だと思った。でも最後はなぜか思い切り官能的になって、この終わり方ってスクリャービンそっくりじゃないのというエンディングであっけにとられる。うーむ、おもしろすぎる。激烈な音楽でありながら予想以上のエンタテインメント性で、これは日本初演したかいがあったのでは。なんなら、レパートリー化されてもいいんじゃないかと思うくらい。また聴きたい。

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