August 30, 2016

サントリー芸術財団サマーフェスティバル 2016 板倉康明がひらく〈耳の愉しみ〉ウツクシイ・音楽

●29日はサントリー芸術財団サマーフェスティバルで、サントリーホールへ。この日は大ホールで、板倉康明指揮東京都交響楽団。前半にブルーノ・マントヴァーニ(1974-)の「衝突」委嘱初演、リンドベルイのピアノ協奏曲第2番(小菅優)、後半にゲオルク・ハース(1953-)の「ダーク・ドリームズ」日本初演、ドビュッシーの「海」。この日も25日の小ホールと同様に、長大で晦渋な作品がなく、比較的フレンドリーな選曲。精緻な響きの美しさを楽しめる作品が中心。
●一曲目のマントヴァーニの「衝突」、作者のプログラムノートによれば、第1部が「ビッグバンドの響きを」、第2部が「子守唄を思わせる」。そうなんだ。ワタシは冒頭の木管楽器群の動きは「せせら笑い」と受けとって、これにシリアスな弦楽器群の対立が「衝突」するというストーリー性を思い描いて聴いていた。漠然と、参照点不明のセルフパロディ的な香りをかいだような気もするんだけど……オレたち、分かり合えないね! 2曲目のリンドベルイのピアノ協奏曲第2番は、臆することなくラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲に触発された曲で(作曲者自身がそう言ってる)、もう思いっきりラヴェル特盛版。21世紀にパワーアップしてよみがえった「シン・ラヴェル」(両手だけど)。ピアノは気迫のソロで圧倒的。
●この日の白眉はハースの「ダーク・ドリームズ」。これはラトルとベルリン・フィルのために書かれた曲で、緻密な響きの移り変わりが聴きどころ。なにせ曲名が「ダーク・ドリームズ」と中二病全開で、やたらとカッコいい。続くドビュッシーの「海」で描かれる光と波の世界のネガポジ反転版というか、ダークサイド・バージョンというか。妖しく美しい。フォースだ、これはきっと。

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