November 4, 2016

エンリコ・オノフリ バロック・ヴァイオリン・リサイタル 哀しみと情熱のはざまで

●名古屋グランパスのJ2降格という衝撃的な結果に驚きつつ、コンサートを振り返る。1日は東京文化会館小ホールでバロック・ヴァイオリンのエンリコ・オノフリ・リサイタル。今回の来日は静岡、兵庫、東京、京都の各都市で公演が行われるうえに、東京の会場も文化会館小ホール。しっかり客席が埋まっていて、人気の広がりを感じる。オノフリに加えて、杉田せつ子(ヴァイオリン)、リッカルド・ドーニ(チェンバロ)、桒形亜樹子(オルガン)、懸田貴嗣(チェロ)のメンバー。
●プログラム前半がなじみの薄いイタリア・バロックで、マリーニの2つのヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ「ラ・モニカ」、メアッリの教会または室内のためのソナタop3「ラ・チェスタ」、カルダーラの室内ソナタ ニ短調op2-1、ヴェラチーニのソナタ・アッカデミカ ト短調op2-5、後半は大作曲家たちのバロック名曲集でヘンデルのトリオ・ソナタ ト短調op2-6、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番から「シャコンヌ」、コレッリの合奏協奏曲op6の第4番ニ長調。前半ではヴェラチーニが楽しい。冒頭から大胆でドラマティック。曲名にはアカデミックとあるけど、聴くとエキサイティング。後半は「シャコンヌ」が印象的。同時期にリリースされたオノフリの無伴奏バッハのCDにも収録されていて、先にそちらを耳にしてはいたのだけど、オノフリはこのシャコンヌをバッハが最初の妻マリア・バルバラへの追悼曲として書いたものであるという既存の学説に立脚し、作品に喪失感や虚無感を読み取っている。どんな演奏スタイルであれこの曲から悲しみを感じるのは容易だとは思うが、高速テンポで鋭く短い言葉を吐き出すような冒頭部分はとても痛切に響く。一方で速さそのものが呼び起こすスリリングな興奮もまちがいなくあって、喪失の悲しみと名技性の併存が味わい深いところ。最後のコレッリでは一転して喜びが爆発する。爽快。アンコールにビーバー他。
●公演の翌日、オーケストラ・アンサンブル金沢からの依頼でオノフリのインタビュー。年明け1月にオノフリ指揮で金沢、富山、大阪、東京の4都市で公演を行なうので、その前宣伝用の取材。記事は石川県立音楽堂&OEKの情報誌「カデンツァ」に掲載される。

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