December 14, 2016

ポゴレリッチとカエターニ指揮読響のラフマニノフ

●13日はサントリーホールでオレグ・カエターニ指揮読響。前半にムソルグスキー(ショスタコーヴィチ編)のオペラ「ホヴァンシチナ」から「ペルシャの女奴隷たちの踊り」、ボロディンの交響曲第2番、後半にイーヴォ・ポゴレリッチのソロでラフマニノフのピアノ協奏曲第2番というロシア・プログラム。開演前、ステージ下手奥に置かれたピアノをポロポロと弾くニット帽の大柄な男性あり。いつものポゴレリッチの儀式が始まっている。リサイタルだけじゃなくて、オーケストラのコンサートでもやるんだ、出番は後半だけど……。ステージ上で音出しをする楽員が増えてくると、いつの間にかポゴレリッチは姿を消していた。普通だったら前半だけでも大いに聴きもの。ボロディンが次々と気前よく繰り出す民族色豊かなメロディ、カエターニの棒のもと引きしまったサウンドを聴かせるオーケストラ。ただ、後半のインパクトがあまりに大きかった。
●ポゴレリッチの協奏曲といえば、LFJで聴かせてくれたショパンのピアノ協奏曲第2番の怪演が忘れられないが、あそこまで特異なテンポ設定(主に超スローテンポ)ではないにしても、よく似た光景に出会うことになった。譜めくりを従えて楽譜を片手に悠然と舞台に登場し、ラフマニノフを弾き始める。冒頭からして強弱や音色の変化を大きく付けたまったく独特の演奏。全体に強い音はより強く、弱い音はより弱く、遅いところはより遅くという強いコントラストのなかで、細部まで入念に表情が添えられたラフマニノフ。あの極端なダイナミクスは打鍵の強靭さあってこそ。自在のソロに対して、指揮とオーケストラは献身的。エクストリーム・ラフマニノフ、エクストリーム・ショパン、エクストリーム・リスト、エクストリーム・シューマン……。ポゴレリッチだけの領域。
●後半が始まった時点でまだ20時。普通だったらずいぶん早く終演するところだが、そうはならなかった。喝采にこたえ、アンコールで第2楽章をもう一度(LFJでもそうだったっけ。当時のブログ隊記事参照)。弾き終わった後に、「もうおしまい」と言わんばかりに足で椅子をピアノの下に片づけるいつものポーズ。四方の客席に向かって、それぞれ深々とお辞儀をして悠然とステージを去った。

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