May 1, 2018

マリノスvs鹿島アントラーズ、オレたちはカルトだ

トリコロール●ったく、日本サッカー協会に代わってハリルホジッチ前監督にお詫びしたい。いいのか、あれで。いいわけない。言いたいことは山ほどあるが、そこはぐっとこらえて、Jリーグだ。試合が終わったと思ったら、もう次の試合がやってくる。ワールドカップイヤーのうえにゴールデンウィークだ。盆と正月がいっぺんにやってきた。そんな嵐のようなリーグ戦で、わがマリノスは華々しい過激戦術を敢行してひそかに残留争いに巻き込まれつつある。Jリーグ創設時の「オリジナル10」のなかで、一度もJ2降格を経験していないのが、マリノスと鹿島アントラーズ。そんな両者がぶつかったマリノスvs鹿島アントラーズ戦。こちらも低迷しているが、鹿島まで低迷しているではないの。常勝軍団がこんなところにいるとは。
●さて、試合だ。試合前のインタビューで語っていたようにポステコグルー監督は、相変わらずハイライン、ハイプレス、異常ゴールキーパーポジションの戦術を貫徹するようである。が、どうだろうか、これまでよりも少し選手間の距離は広めなのでは。そして、攻め込まれたときは場合によってはクリアもやむなしという常識的な判断がほんの少しではあるが垣間見えた気がする。もちろん、ゴールキーパーの飯倉はこの日も走り回っている。自分たちがボールを保持している場面では、キーパーはディフェンス・ラインの一員としてビルドアップに参加する(だからゴールはガラ空きだ。今日もまた超ロングシュートを狙われてあわや)。そうすることでフィールドプレーヤーの数を11対10の数的優位に保つというのがポステコグルー戦術の肝。これによってマリノスはボール保持率を飛躍的に高めることができる。
●ところが、この鹿島戦、マリノスのボール保持率はちっとも上がらない。鹿島もまた前線からプレスをかけ、積極的なアタッキング・フットボールを目指してきた結果、ボール保持率もパスの本数もほぼ拮抗するという展開になってしまった。これは焦った。なにしろ今までなら楽にボールを持てたのに、この相手だと半分は相手にボールを持たれ、半分の時間は攻められてしまうのだ。いつもと同じ戦術で戦っているつもりが、こちらの目指すサッカーが体現できない。すると、どうなったか。ずばり、3対0で完勝してしまった! ゴールは遠藤渓太、天野純(俊輔ばりのフリーキック)、中町公祐(仲川の完璧なアシスト)。戦術がうまく機能しなかったら勝てたのだ。 ぐわぉ! どこまで倒錯的なんだ、ポステコグルー監督の戦術は。戦術が正しく機能すると負ける。機能しないと勝つ。ハハハ、これが負けるための戦術、ポストモダン・フットボールというものなのだよ。そんな監督の高笑いが聞こえてきそうである。事実、試合後のインタビューで監督はこう語っている。「うれしい結果になったが、非常に難しい試合になってしまった。ここ数試合と比べるとあまりコントロールできていなかった」。その「ここ数試合」でわれわれはずっと勝てなかったわけだが。
●負けても強気だったポステコグルー監督は、鹿島相手に完勝して反省している。そう、われわれは勝敗など眼中にない。順位もだ。大事なのは戦術を機能させること。これはカルトだ。革命的戦術のためなら勝敗がなんだというのだ。理想のフットボールの実現にむけて、われわれはポステコグルー同志とともに力強く歩みたい。伝説は続く。

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