July 20, 2018

ワールドカップ2018ロシア大会をふりかえる

ワールドカップ2018ロシア大会
●さて、ワールドカップ2018ロシア大会を総括してみよう。クロアチアが決勝まで進んだ、ベルギーがベスト4まで来た、ニッポンがあと一歩でベスト8に届きそうだった……各国の力の差はますます小さくなってきた。そんな声が聞こえてくる。いやいや、そうかなあ? むしろ逆なんでは。
●だって、アジア勢は結局ニッポンしかグループステージを突破できなかったんすよ! しかもそのニッポンも相手がいきなりPKをプレゼントしてくれて一人退場したコロンビア戦しか勝っていない。4年前のアジア勢無勝の屈辱に比べればましにはなったけど、94年のアメリカ大会だってサウジアラビアは2勝して決勝トーナメントに進んだよ? あと強いはずの南米勢だって、次々と脱落して、途中からヨーロッパしかいない欧州選手権に変わってしまった。
●アフリカ勢に至ってはグループステージで全滅。一頃、アフリカ脅威論みたいなのがあったのに、どうしてこんなに弱体化してしまったのか。でも、これって前から言われていたことでもあるんすよね。つまり、アフリカのヨーロッパB化。アフリカから、あるいはアフリカの移民の子から、次々と才能は誕生しているけど、もっとも才能のある選手たちはヨーロッパの育成システムに乗っかって、ヨーロッパの代表選手になる。そこまでではない選手はアフリカの代表選手になる。優勝したフランス代表の23名のうち、13名はアフリカにルーツを持つ。その選手の多くたちはアフリカの代表選手になる資格も持っていたけど、フランスを選んでいる。一方、アフリカの代表選手にはヨーロッパで生まれ育った選手もたくさんいる。ワールドカップに出るためにルーツの国の代表選手になる。まるでヨーロッパが優先選択権を持っているような状態で、アフリカの代表がときどきヨーロッパBに見えてしまう……。いや、これは見方の問題かもしれない。反対側から見れば、フランスがアフリカSだったのであり、アフリカの勝利ともみなせるわけだ。
●もうひとつ、ニッポン代表監督の人事問題。西野監督の後任はまだ発表されていない。報道では森保監督になりそうな気配。でも、今大会でもはっきりしたけど、ワールドカップでベスト8とかベスト4に勝ち進むためには、監督以前にいかに選手が高いレベルのリーグでプレイしているかが最重要。もっといえば欧州を代表するビッグクラブの主力が何人いるか。クロアチアが決勝まで行ったのはモドリッチやラキティッチやマンジュキッチがいたから。ベルギーが強かったのはアザールやデブライネ、ルカク、クルトワといったスーパースターたちがいたから。今のニッポンの位置づけはブンデスリーガの中堅クラブくらい。現代の効率化した移籍市場では、未知の才能がワールドカップで発見されることなんてまずなくて、ヨーロッパでの評価というひとつの物差しだけで選手の能力が定められてしまう感がある。現状、「サッカーはますます世界へと広がっている」よりも「サッカーはますますヨーロッパに収斂している」が実態にふさわしいのでは。
●最後にあとひとつ、プレイスタイルの問題について。決勝のフランス対クロアチアが典型だけど、ますますもってサッカーは「ボールを持ったほうが不利」になっている。ワールドカップのような一発勝負になるといっそう顕著。ゴールのほとんどはカウンターとセットプレイで生まれる。流れのなかで攻撃を組み立ててディフェンスを崩すのは、かなり損だ。しかしボールゲームなのに、ボールを持つ側が不利というのは大いなる自己矛盾じゃないだろうか。それって楽しくない。システマティックな守備戦術は進化したけど、攻撃はどう工夫しても結局カウンターがいいって話に落ち着いてしまう。もし今後もこの状況が変わらないようであれば、どんなゴールも一点という等価でいいのかっていう疑問がわいてくる。

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