November 27, 2018

広上淳一指揮NHK交響楽団のアメリカ音楽プログラム

●24日はNHKホールで広上淳一指揮NHK交響楽団のオール・アメリカ・プログラム。これが激しくチャレンジングなプログラムで、バーバーのシェリーによる一場面のための音楽、コープランドのオルガンと管弦楽のための交響曲(鈴木優人)、アイヴズの交響曲第2番。どれもライブではめったなことでは聴けない曲ばかり。さすがに客席の入りは普段通りとは行かないが、エキサイティングなプログラムを聴けたことに感謝するほかない。コープランドの後は鈴木優人さんのアンコールでバッハの「われら苦難の極みにあるときも」BWV641。しみじみとした美しさに浸る。チェロのゲスト首席は辻本玲さん。アイヴズでのソロが絶品。ゲスト・コンサートマスターには白井圭さん。
●アイヴズの交響曲第2番は1902年の完成っていうんだから、作曲年代でいえば相当に古い。混沌とした引用の交錯や最後の痛烈かつ唐突な一撃など、モダニズムの到来以前にポストモダンに走っているというか、先駆的というよりは先走り感が半端ではないが、これが実際に音になるイメージをアイヴズはどれくらい持っていたのだろうか。完成から半世紀も経って初演され、なおかつその時点で作曲者が存命中だったという稀有な交響曲。そして、そんな曲をバーンスタインが初演するという運命の不思議さ。この日の演奏は最後の例の一撃が長くのばされてバーンスタイン風。もっとも、客席の反応に戸惑いや反発などは今や望むべくもないということか、大喝采と無関心のほとんど両極に収束している感。
●コープランドのオルガンと管弦楽のための交響曲、これはNHKホールのオルガンの場所ゆえかと思うのだが、事前に聴いておいた複数音源とはかなり違った印象で、オルガン・ソロがとても間近に聞こえて鮮烈。全般に「春の祭典」風味とかスケルツォでのミニマル・ミュージック先取り風味などを漂わせつつ、オルガンと管弦楽の力強い対話がくりひろげられ、終楽章では怒涛のクライマックスめがけて驀進する。おもちゃ箱をひっくり返した感は、アイヴズ以上かも。終楽章の歪んだ行進曲って、今にも怪獣が出てきそうな感じ。自分にとって20世紀大管弦楽曲に「ぐっと来る」バロメーターのひとつは、内なる中二病を刺激してくれる「怪獣出てきそう感」。その点、この曲は伊福部昭といっしょにゴジラが出てくる様子を連想させる感覚があって、それってなんでだろうと思って気が付いたのがオルガン。はっ。オルガンと言えばキングギドラの鳴き声。これはまさしく「キングギドラ出てきそう」感。伊福部vsコープランドの代理怪獣大戦争がここに(んなわけない)。

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