April 10, 2019

ジョナサン・ノット指揮スイス・ロマンド管弦楽団

●9日はサントリーホールでジョナサン・ノット指揮スイス・ロマンド管弦楽団。いつも東響で聴いているノットを来日オーケストラで聴けるとは! そして、ノットはほかのオーケストラを指揮してもやっぱりノットだった。プログラムからして刺激的。曲目が固定化しがちな来日公演だが、ノットは東響を指揮するときと同様に自由な発想でプログラムを組んでくれた。ドビュッシーの「遊戯」とピアノと管弦楽のための幻想曲(独奏はジャン=フレデリック・ヌーブルジェ)、ストラヴィンスキーの「3楽章の交響曲」、デュカスの「魔法使いの弟子」。メイン・プログラムは、最後の曲と見るなら「魔法使いの弟子」、これをあらかじめ組み込まれたアンコールと見るなら「3楽章の交響曲」。いずにせよこれらを一夜の演奏会の柱に置いて来日するオーケストラなどまずありそうもない。一曲目の「遊戯」が予告するように、プログラム全体を貫くのは一種の遊戯性、遊び心といったところか。
●スイス・ロマンド管弦楽団、久しぶりに聴いたけど、メンバーはアジア系も少なくなく、多国籍化が進んでいる様子。しかしサウンドのキャラクターは、ノットが語っているように「フランスの美学をもつオーケストラ」。前半のドビュッシーは柔らかくて澄んだ音色に聴き惚れる。ドビュッシーの幻想曲はとらえどころのない曲だなあと感じるんだけど、第2楽章の繊細な響きの移ろいは絶妙。ヌーブルジェ、アンコールはドビュッシーかと思いきや、ショパン。24の前奏曲から第8番嬰へ短調と第17番変イ長調を続けて(間に拍手が入らなかった)。
●ストラヴィンスキーの「3楽章の交響曲」はこの日の白眉。オーケストラを巧みにドライブして本番ならではのスリリングな音楽を作っていく様子は東響での指揮ぶりと同様。そしてこんなに次から次へと魅力的な楽想を繰り出してくるストラヴィンスキーの天才性に改めて感嘆。ファミリーコンサートなどでよく取り上げられるデュカス「魔法使いの弟子」が、これほど壮麗かつ鮮烈に聞こえることもまずないわけで、まるでこの曲を初めて聴いた気分。続けて聴くと、どこかストラヴィンスキーと一脈通じるような気も。なお、弦楽器の配置は東響と同様の対向配置。
●演奏が終わってカーテンコールを繰り返す間に、ホルン奏者が退出するのが目に入った。えっと、舞台裏でホルンが演奏するようなアンコール曲ってあったっけ?……と思ったら、あったのだ。ノットがお礼を一言述べてからアンコール曲を案内。リゲティのルーマニア協奏曲より第4楽章。ノリノリ。エネスコのルーマニア狂詩曲のモダン・バージョン。痛快。

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