July 22, 2019

リュカ・ドゥバルグ トッパンホール/異才たちのピアニズム7

●20日はトッパンホールでリュカ・ドゥバルグのピアノ・リサイタル。前半はスカルラッティのソナタ集。ヘ長調K6、ヘ長調K438、イ長調K404、ホ長調K206、ホ長調K531、嬰へ短調K447、ロ短調K27、ト長調K14、変ホ長調K253、ハ短調K115(当初4曲目に置かれていたイ長調K405を本人希望で割愛)。ソニーの最新アルバムもスカルラッティのソナタ集で、そちらはCD4枚組もの分量があるのだとか。長身痩躯で遠目にも手の大きさ、指の長さが目につくドゥバルグ、ベースとなるタッチが力強い。筆圧が強く、かつキレのあるスカルラッティ。一曲完結のミクロコスモス的小品をこれだけ並べて、大きなストーリー性が感じられるかというと、やっぱり感じないのだが、後半に向けての長大なプロローグといった感も。後半はメトネルのピアノ・ソナタ第5番 ト短調とリストの「巡礼の年 第2年 イタリア」より「ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲」。つまり、オール・ソナタといえばソナタ・プログラム。進むにつれてモノローグ風の没入度の高い音楽に。
●で、本領発揮だったのはアンコールに入った「第3部」。スカルラッティのソナタを2曲弾くといって、ソナタ イ長調K208と同イ長調K24。これが絶品。特にK208から香る奔放な官能性は本編では聴きとれなかったもの。こういった自由さをドゥバルグに期待していたのかも。テンポが遅すぎないのも吉。はなはだ簡潔な曲なのに、万華鏡のようにさまざまなニュアンスが生まれてくる。以前、全集を録音したスコット・ロスがインタビューでスカルラッティのソナタ全曲から一曲を選ぶとすればと尋ねられて、挙げていたのがこの曲だったと思う(まあ、きっとなんども尋ねられた質問だろうから、答えは毎回違っていたかもしれないけど)。ドゥバルグはこのソナタでAABBからなる各部に移る際、毎回軽い即興的なパッセージをさしはさんで弾いていた。K24も大胆で、途中でゆっくりした同音連打を挿入してぐっとテンポを落として瞑想的な楽想に移行し、また加速するのがカッコいい。その後、「なにかジャズを」といって、即興演奏を披露して、ぐっとリラックスしたムードに。さらにジャズ?をもう一曲。こちらはワタシは門外漢なんだけど、ファブリツィオ・ボッソの Round Midnight という曲なんだそう。これでおわりだろうと思ったら、最後にシューマンの「ウィーンの謝肉祭の道化芝居 幻想的情景」より第4曲 間奏曲。満ち足りた気分に。

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