September 24, 2019

パーヴォ&N響とヴァイグレ&読響のマーラー5番祭り その1

●この週末はパーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団とセバスティアン・ヴァイグレ指揮読響が、ともにマーラーの交響曲第5番を演奏するという偶然が生んだマーラー5番祭り。N響は20日と21日、読響は20日と21日と22日。両方を聴くにしてもいろんな順序が可能。悩んだ末に、20日(金)にNHKホールでパーヴォ&N響、21日に東京芸術劇場でヴァイグレ&読響を聴くことに。
●20日のN響はいろんな意味で波瀾万丈の演奏会に。なにしろ開演時間になっても舞台にだれも出てこない。収録用のテレビカメラにも人が立っていない。開演が遅れるとだけアナウンスがあって、みんな15分ほどずっと席に座って待っていた。感心するのはN響のお客さんで、これだけ待たされても泰然としたもの。だれもブーもしないし口笛も吹かないし、楽員がステージに出てきてもやんやの喝采もなく、いつもと同じように静か。どうやらパーヴォが渋谷のデモで渋滞に巻き込まれたということのようで、当人のインスタに動画があがっていた。デモは世界各地で行われた「グローバル気候マーチ」で、遅刻しつつもデモの若者たちに全面的に連帯の意を表するあたりが、さすがのパーヴォ。
●ようやく開演すると、まずはヴァレンティーナ・ファルカシュのソプラノで、リヒャルト・シュトラウスの「カプリッチョ」から「最後の場」。幕切れのしみじみ感から始まる公演。後半、マーラーの交響曲第5番。これまでのパーヴォのマーラーから推進力があるタイトな演奏を予想していたら、ずいぶん違っていた。伸縮自在のテンポ感、舞踊性と民族色の強調、あくの強い語り口。前半は楽器間のバランスなど、やや雑然としたところも感じたのだが、第3楽章からは強烈だった。オブリガート・ホルンを福川さんが下手側から上手側のヴィオラ後方(この日もいつもの対向配置)に移動して立奏、完全に主役となってのびのびと爽快に鳴り響かせた。第5楽章はスリリングで一気呵成。圧倒的なクライマックスを築きあげて、客席から最近ではまれなほどの盛大な「ウオオーー」。地響き風のブラボー。パーヴォに対しても嵐のような喝采。
●その後、珍しいシーンがあった。指揮者のカーテンコールがなんどかあった後、意外とあっさりと拍手が止む。楽員が退出し始める。開演が遅れた分、終演も遅れたからな、さあ、出口に向かおうというところで、またパラパラと拍手が始まった。なんと、これは舞台上に残っていたトランペットの菊本さんへの拍手。続いて、やはり舞台上に残っていたホルンの福川さんへの拍手が。これはぐっと来る場面だった。指揮者へのソロ・カーテンコールではなく、演奏者個人に向けてこんな形で拍手が起きるのはきわめてまれ。というか、だれへの拍手なのか、みんなが暗黙のうちに「わかる」のも、この曲だからこそ。まったく演奏会はなにが起きるかわからないと感慨にふける。(つづく)

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「「蜜蜂と遠雷」(恩田陸著/幻冬舎)」です。

次の記事は「パーヴォ&N響とヴァイグレ&読響のマーラー5番祭り その2」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ