October 4, 2019

ハーゲン・クァルテット~ハイドン&バルトーク・ツィクルス第3夜

●3日はトッパンホールでハーゲン・クァルテット。3夜にわたるハイドン&バルトーク・ツィクルスの最終日にすべり込む。三夜とも3曲構成で、ハイドン+バルトーク+ハイドンというサンドイッチ型の配列。ハイドンとバルトークをハンガリーつながりでプログラムにする。これはクァルテットに与えられた特権だろう。一般的には渋いプログラムかもしれないが、トッパンホールのお客さんにとっては大歓迎なのでは。
●曲は前半がハイドンの弦楽四重奏曲第79番ニ長調「ラルゴ」とバルトークの弦楽四重奏曲第6番、後半がハイドンの弦楽四重奏曲第80番変ホ長調。前半はハイドン「ラルゴ」の第2楽章とバルトークの全楽章にともに「メスト」(悲しげに)と記される悲嘆の四重奏曲集。といっても、両者の性格の違いは際立っている。ハイドンの「ラルゴ」第2楽章に感じられるのが懐旧の念だとすれば、バルトークは1939年ヨーロッパの「今そこにある危機」。第2楽章、悲しみの主題に続いて登場する行進曲モドキは戦慄の20世紀軍隊行進曲。第3楽章はスケルツォならぬブルレッタ。諧謔の音楽というが、本当に「カッカッカッ」という笑い声を模したような嘲笑の音楽。えぐいジョークの連続の後、第4楽章でやってくるのは祈り、あるいは諦念か。ハーゲン・クァルテットの演奏は表現の振幅がきわめて大きく、生々しく苛烈。前半だけでほとんど充足してしまうが、後半はふたたびハイドン。この第80番、戯れに満ちた音楽ではあるんだけどバルトークの後に聴くと、さすがに軽い。これでおしまいでいいのかなと思ったら、アンコールでシューベルトの弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」から第3楽章メヌエット。深淵をのぞき込むような虚無の音楽。ここまで含めてひとつのプログラムなのかと納得。
●第2ヴァイオリンのライナー・シュミットのみ楽譜を持たず袖から出てくる。足元に黒いフットスイッチらしきものがあったので、なにか電子楽譜を使っていたのだろうか。

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