October 10, 2019

「B→C バッハからコンテンポラリーへ」 成田達輝

●8日は東京オペラシティのリサイタルホールで「B→C バッハからコンテンポラリーへ」成田達輝(ヴァイオリン)。共演は百留敬雄(ヴァイオリン)。くらくらするような強烈な一夜。看板に偽りなしの「B→C」、プログラムは前半にバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調とファーニホウの「見えない色彩」、後半にマテウ・マロンドラ「24のモジュラー・セル ~2台のヴァイオリンのための」(2019、成田達輝委嘱作品/世界初演)、パガニーニの「24のカプリス」から第24番イ短調、エルンスト「夏の名残のバラにもとづく変奏曲」、クラウス・フーバー「インタルシーミレ」(2010)、ヴィヴァルディのトリオ・ソナタ ヘ長調RV70、ジョン・ボールドウィン「ウト、レ、ミ、ファに基づいて」。
●切れ味鋭くパワフル、音色は輝かしく、強靭さとしなやかさを兼ね備えたヴァイオリンで、とにかくうまい。キレッキレのヴァイオリンが唸りをあげる。ファーニホウはどこか発話風で、能弁な語りを耳にするかのよう。続く初演作マロンドラの「24のモジュラー・セル」はまさに対話で、2台ヴァイオリンのひとりが発話すると、それに被せ気味でもうひとりが発話する。反復的な対話のおもしろさ、にじみ出るユーモア。これらモダンな超絶技巧曲の後で聴くパガニーニは、もはや軽やか。続くエルンストとともに余裕綽々のヴィルトゥオジティ。この文脈に乗って、2台ヴァイオリンによるヴィヴァルディやボールドウィンから予想もつかない風景が見えてくる。HIPとは正反対で、「もしこれらの曲が今書かれたばかりの新作だったらどう弾くか」というアプローチなんだと思う。鋭利で遊び心にあふれたヴィヴァルディ。ボールドウィンでは成田ひとりがステージで弾き、バスを奏でる百留は袖からスタートして歩きながら客席を一周してステージに帰ってくるという趣向。このプログラムにこれだけ楽しさが詰まっていたとは。脱帽するしか。アンコールはなし、成田の短いあいさつで終演。

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