October 15, 2019

ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団の「答えのない質問」「未完成」他

●台風19号が猛威を振るった週末、首都圏の多くの演奏会が中止になった。気象庁の予報技術が進化したおかげなのか、一昔前と違って台風は事前の予報通りにやってくる。逸れてくれないし、消えてくれない。上陸するといったら本当に上陸する。12日は鉄道各社は計画運休に。電車が止まれば、もうどうにもならない。催事が軒並み中止になり、多くのお店も会社も休業、学校も休校。一日じっと引きこもって台風を待ち構えるしかない状況。食べ物を用意して、モバイルバッテリーを充電し、お風呂に水をためる。大混雑の街から人がいなくなる。コンビニからは食べ物がなくなる。いやでも2011年を思い出す。
●ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団が用意したプログラムは、アイヴズ「答えのない質問」とシューベルトの「未完成」交響曲、ブラームスのピアノ協奏曲第1番(独奏はヴァーヴァラ)。12日のサントリーホール公演は中止するしかないが、同じプログラムが13日のミューザ川崎でも予定されており、問題はこちらの公演が開催できるかどうか。13日になれば台風も去り、朝から天候は回復することはまちがいないが、台風の被害がどれだけ出るのか、電車が動くのかどうか、だれにもわからない。前日の段階では、「開催の予定だが、最終的には当日の正午頃に決定」と発表があった。で、翌日。いつもは品川から川崎まで東海道線か京浜東北線を使うのだが、どちらも午前中は止まったまま。ただ、京急は動いていたので、品川から京急川崎に行くことに。京急川崎とJR川崎って、つながっていないんすよね。初めて降りたので、方角がわからず、地図を見て歩く。結局、演奏会は開催されることになり、予定より10分開演時間を遅らせることになった。客席は状況を考えれば予想以上の入り。
●前半はアイヴズ「答えのない質問」とシューベルトの「未完成」交響曲がつなげて演奏された。Unanswered Question の回答が Unfinished だという趣向が、あやうく Unperformed になるところだったが、一公演だけでも開催されたのは救い。「答えのない質問」、やはりライブで聴くとトランペット(舞台裏)と木管楽器の対話性が引き立つ。アイヴズでの静かな弦楽器の動きが、続く「未完成」冒頭のうごめくような弦楽器とどこかで対応しているように思える。後半、ブラームスのピアノ協奏曲第1番でソロを務めたのはヴァーヴァラというモスクワ生まれのピアニスト。本当はヴァーヴァラの後に姓が続くんだろうけど、芸名がヴァーヴァラということなのか(ウ濁マニア垂涎)。2012年にゲザ・アンダ国際ピアノ・コンクールで第1位を獲得していて、そのときの審査委員長がノットなんだとか。演奏前はナーバスになっていたようだが、始まってみれば聴きごたえのあるすばらしいブラームス。音色はブリリアントではなく、むしろ渋みのあるくすんだトーンで、詩情豊か、随所にはっとさせられるような表現がある。メカニックよりも、第2楽章のような内省的な楽想の玄妙さが印象に残る。終楽章はパワーを振り絞って、勢いよく駆け抜けた(おしまいのほうでチェロの弦が切れて、チェロ・リレーの場面あり)。アンコールでブラームスの間奏曲作品118-2。納得の選曲で、自家薬籠中のものといった感。
●終演後、JR川崎駅に向かうと東海道線が動いていた。帰宅途中、コンビニをのぞくとやはり棚がからっぽ。ニュースで北陸新幹線の車両が長野で浸水していることを知る。すでに予約している切符があるのだが、はたして車両のやりくりができるのかどうか。

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