October 17, 2019

ニコラ・アンゲリッシュ ピアノ・リサイタル

●15日は紀尾井ホールでニコラ・アンゲリッシュのピアノ・リサイタル。プログラムが魅力的。前半にバッハ~ブゾーニ編のコラール「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」、ブラームスの7つの幻想曲集op116、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番「月光」、後半にシューマンの「クライスレリアーナ」。「月光」の本来の呼び名が「幻想曲風ソナタ」であり、「クライスレリアーナ」が「ピアノのための幻想曲集」と題されているということで、全体が「ファンタジー・プロ」になっている。ブラームスにしてもシューマンにしても一曲一曲は短いミクロコスモスの集合体なんだけど、全体を通して聴くとほとんど叙事詩的な大きなドラマが浮かび上がってくるおもしろさ。アンゲリッシュのピアノは陰影豊かで、音色の表現も多彩。白眉はやはり入神の「クライスレリアーナ」。この曲集の終曲がもたらす情趣をどう言語化すればいいのだろう。荒れ地をさまようかのような孤独と寂寞、あるいは妄執の喜び。アンコールにシューマンの「子供の情景」の「見知らぬ国から」、さらにブラームスのop116-4のインテルメッツォ。
●ヨーロッパでは絶大な名声を築いているのに、日本での人気がぜんぜん追いついていないピアニスト。今のところアンゲリッシュはそんなふうに言われている(紀尾井ホールで満員にならない)。なにしろ来日回数が少なく、リサイタルがほとんどなかった。ラ・フォル・ジュルネの初期に来日していたとは言うんだけど……(「実は昔LFJに来ていた」パターンがまたしても発動)。でも、今回の来日でずいぶん事情が変わるかも。この日のリサイタルはNHKのテレビ収録あり。さらに今週末はN響定期への出演もある。

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