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January 20, 2020

クリストフ・エッシェンバッハ指揮N響とツィモン・バルト

ブラームス●17日はNHKホールでクリストフ・エッシェンバッハ指揮NHK交響楽団。ブラームスのピアノ協奏曲第2番(ツィモン・バルト)とブラームス~シェーンベルク編のピアノ四重奏曲第1番のプログラム。「ほとんどピアノ付き交響曲」と「ピアノのないピアノ四重奏曲」という異形の傑作を並べたおもしろさ。
●前半はツィモン・バルト・ワールド全開で、まったく独自のブラームス。入念でスケールの大きな表現で、フレーズのひとつひとつに重々しく意味づけするような演奏。古風で大仰ともいえるのだが、冒頭のソロから説得力があってぐいぐいと引き込まれる。エッシェンバッハがかねてより共演を重ねているのも納得。ボディビルダー体形で最強音から最弱音までを自在に繰り出し、余裕で幅広いダイナミックレンジを実現。譜面あり、自分で譜めくり。エッシェンバッハもピアノにぴたりと寄り添い、前へ前へと進むのではなく、一歩一歩立ち止まって考えるような、そして鮮やかではなく鈍色のブラームスを描く。鬱々とした曇天のブラームスは絶品。曇り空を突き抜けて朗々と歌うチェロのソロは辻本玲さん、ホルンは福川さん。強力。
●シェーンベルクは、どうしてブラームスのピアノ四重奏曲第1番を選んだんだろうか。この曲が好きだというシェーンベルク本人の言葉も残っているけど、やっぱりあの強烈な終楽章を編曲したかったんだろうか。三管編成プラス多彩な打楽器を活用したド派手なハンガリー舞曲デラックス。前半とは対照的な開放的なフィナーレに客席はどっと沸いた。
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●アシュケナージが引退を発表。もう82歳だったとは。寂しい話題ではあるが、自ら引退すると決めて、それをウェブサイトで発表するというあり方はいいなと思う。大昔、モーツァルトのピアノ協奏曲(たしか第17番)の弾き振りを聴いて大感激したのを思い出す。