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June 9, 2021

DSH エルサレム弦楽四重奏団 ベートーヴェン・サイクルⅠ サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン

●現在開催中の「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」、今年はエルサレム弦楽四重奏団がベートーヴェン・サイクルに挑んでいる(ヴァイオリン:アレクサンダー・パヴロフスキー、セルゲイ・ブレスラー、ヴィオラ:オリ・カム、チェロ:キリル・ズロトニコフ)。その初日となる6日夜の公演を、デジタルサントリーホール(DSH)の配信で観た。プログラムは弦楽四重奏曲第1番、同第7番「ラズモフスキー第1番」、同第12番の3曲。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲をサイクルで演奏するにあたって、曲をどう配分するかはクァルテットによってまちまち。作曲年代順に進めていく方法もあるが、エルサレム弦楽四重奏団は毎公演ごとに初期、中期、後期の作品がそれぞれ含まれるように全5公演を組んでいる。この方法だとバランスがよく、どの公演を聴いても一通りのベートーヴェンを体験できるという満足感がある。逆に言えば尖がったエクストリームな日もない。
●DSHの配信は十分なクォリティで、エルサレム弦楽四重奏団の骨太で濃密なベートーヴェンをたっぷりと味わう。正攻法の堂々たるベートーヴェン。第1番からは若きベートーヴェンの意気込みが伝わってくる。白眉は「ラズモフスキー第1番」。力強くスケールが大きいが、ニュアンスにも富む。第3楽章のアダージョは崇高。急速楽章と緩徐楽章のコントラストが鮮やか。おしまいの第12番はやや安定感を欠いたかもしれないが、熱量が高く、偉大な傑作を聴いた充足感に浸った。
●ちなみにこの公演は、DSHでライブ&リピート配信が行われていて、6月6日から6月11日の23:00まで配信されている。料金は1000円。同日に東京文化会館でサーリアホのオペラがあって、物理的にはダブルヘッダーは可能だったが自分の集中力を考えると現実的ではないので、翌日にリピート配信で聴いた。やはりオンデマンドはありがたい。