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June 11, 2021

トリオ・リズル(毛利文香、田原綾子、笹沼樹)のベートーヴェン、ヒンデミット、モーツァルト

●10日はトッパンホールでトリオ・リズル。トリオといってもピアノ・トリオではなく弦楽三重奏で、メンバーは毛利文香(ヴァイオリン)、田原綾子(ヴィオラ)、笹沼樹(チェロ)。昨年開かれた同ホールでのランチタイムコンサートをきっかけとして誕生したトリオで、トリオ・リズルの名では今回が初舞台。今後継続的な活動を見据えているそう。あちらこちらで大活躍中の気鋭ぞろいによる弦楽三重奏は頼もしく、貴重。
●プログラムはベートーヴェンの弦楽三重奏曲ニ長調Op.9-2、ヒンデミットの弦楽三重奏曲第1番Op.34、モーツァルトのディヴェルティメント 変ホ長調K563。弦楽四重奏と違って弦楽三重奏となるとレパートリーはぐっと絞られるが、その中核となる作曲家と作品が並ぶ。ヒンデミットが圧巻。猛烈で強靭。複雑で濃密な作品から作曲者の旺盛な創作意欲が伝わってくる。モーツァルトはのびやかで、隅々まで精彩に富んでいた。
●ベートーヴェンとモーツァルトからは両作品の対照性を感じる。ベートーヴェンは初期作品で、三重奏としてまとまっているけど、ひとり欠けているような感覚がどこかに残る。サッカーで退場者がひとり出たけど、みんなで運動量でカバーして勝ち切った試合みたいな感じ。一方、モーツァルトは成熟期の作品で、三重奏でしかありえない音楽を書いている。調和や対話性を前提としつつも、3人がソリスティックであることを求めている。この曲は終楽章が味わい深い。ピアノ協奏曲第27番の終楽章などと同じで、軽やかなんだけど寂しげ。名残惜しそうに曲を閉じる趣がある。これで終わってもよかったと思うが、盛大な拍手にこたえて、アンコールにベートーヴェンの弦楽三重奏のためのセレナード ニ長調Op.8より第5楽章アレグレット・​アラ・ポラッカと第1楽章行進曲。大いに堪能。
●カメラが何台も設置されていた。

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