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December 14, 2021

DCHでジョン・ウィリアムズ指揮ベルリン・フィル

●10月に行われた公演をようやく視聴。デジタル・コンサート・ホール(DCH)でジョン・ウィリアムズ指揮ベルリン・フィル。もちろんプログラムには自作がずらり。最初にジョン・ウィリアムズが姿を見せただけで、マスク姿の聴衆たちがいきなりスタンディングオベーション。一曲目の「オリンピック・ファンファーレとマーチ」からブラスセクションの輝かしくも深みのある音色にノックアウトされてしまう。弦楽器はあまりにシルキー。かつてロサンゼルスオリンピックで飽きるほど耳にした実用品のファンファーレが、超高級品になって帰ってきた。もう立派すぎて笑ってしまう。機会音楽の芸術化、なのか。
●続く「未知との遭遇」もクォリティの高さに圧倒されてしまう。良くも悪くもキャッチーで臆面のないところがジョン・ウィリアムズの魅力だと思っているけど、こうして格調高く奏でられることで、やがて彼の音楽が20世紀後半の「クラシック」に登録されていくのだろうか。「スーパーマン・マーチ」のブラスセクションの重厚でまろやかなサウンドと来たらもう。このスーパーマンはアメリカじゃなくて、ドイツの空を飛んでいる。「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」の「オートバイとオーケストラのスケルツォ」を聴いて、これはデュカスの「魔法使いの弟子」オマージュなんだと得心する。
●漆黒の「スター・ウォーズ」も味わい深い。といっても、残念ながら「メインタイトル」はないのだ。その代わり第1作の幕切れに高らかに演奏される「王座の間とエンド・タイトル」があるので、まあ、半分くらいは満たされる。「スター・ウォーズ」がまだ「スター・ウォーズ」だった頃に思いを馳せる。伝説だ。サウンドトラックを聴くのと(配信であっても)ライブを聴くのは、ぜんぜん別の体験。
●コンサートマスターはノア・ベンディックス=バルグリー。フルートのトップを吹いているアジア人男性はどなたなんでしょ? ジョン・ウィリアムズは80歳なのだから動作は若々しいとはいえないが、経験豊富だけあって達者な指揮ぶりで、オーケストラへの信頼感を感じる。随所でフレーズのおしまいに入る「タメ」にかなり「たっぷり」感があって、これがクラシカルなレパートリーだったらくどいと思うかもしれないんだけど、なにしろ作曲者本人がやっているんだから文句のつけようがない。
●最後の「帝国のマーチ」はアンコールなのかな。曲が始まった瞬間に客席が「ウォーーー!」ってなる。うらやましい。