December 22, 2021

バッハ・コレギウム・ジャパン「クリスマス・スペシャル・コンサート」

東京芸術劇場
●21日は東京芸術劇場でバッハ・コレギウム・ジャパン「クリスマス・スペシャル・コンサート」。クリスマスと「第九」を組み合わせたハイブリッドな年末コンサートで、指揮は鈴木優人。なんと、先週、鈴木雅明指揮で聴いたばかりのBCJ「第九」を、今度は鈴木優人指揮で聴けるという僥倖。歌手陣等、一部出演者は異なる。さらに今回の公演ではホワイトハンドコーラスNIPPONが特別出演し、聾者が手話をもとに訳した「手歌」と合唱で参加している。ホワイトハンドコーラスとは「聞こえない子も見えない子もその友達も多様な子供たちが互いの力を合わせて活動する」というインクルーシブな合唱団で、白い手袋を着用して手で表現する「手歌」をになうサイン隊と合唱で歌う声隊から構成される。
●前半はクリスマス名曲集。鈴木優人のオルガン独奏によるバッハのパストラーレ ヘ長調BWV590とダカンのノエルXII番の間に、いずれも鈴木優人編曲による「まきびとひつじを」「きよしこの夜」「キャロルメドレー」が歌われる。ここでコロンえりか率いるホワイトハンドコーラスNIPPONも登場。東京芸術劇場のオルガンには表面と裏面があるのだが、バッハでは伝統的なデザインのバロック面で演奏され、途中でくるりと回転して、ダカンではメタリックなデザインのモダン面で演奏されるという趣向もあり(あれ、どっちが表でどっちが裏なんだろ?)。この回転シーンは芸劇のオルガンコンサートでも何度か目にしているが、サービス満点の見せ場。変形する巨大ロボを思わせる男子マインド的に熱い光景。
●後半はいよいよ「第九」。やや速めのテンポによるキレとドライブ感のある第1楽章で開始され、ピリオド楽器ならではの澄明で色彩豊かな響きを今回も堪能。合唱団とホワイトハンドコーラスは最初から舞台に乗っていたが、独唱者の席は空いたまま。先週の公演と同様、そのまま第4楽章まで突入して、いざという場面で袖から大西宇宙が登場して歌い始めるドラマティックな展開。独唱陣は中江早希、湯川亜也子、西村悟、大西宇宙で充実。とはいえ「歓喜の歌」で主役ともいえる活躍を見せたのはホワイトハンドコーラスだろう。はじめて目にしたが、声楽に同期して「手歌」が演じられる。手話がそうであるように言葉を動作にしたものという意味では言語のようであり、同時に表現の要素を持つという意味では一種の踊りのようでもある。あたかも声楽にもうひとつのパートが加わったかのように「歓喜の歌」に一段と奥行きを与えていた。これがベートーヴェンの作品であること、そして「歓喜の歌」で歌われる理念を思えば、「第九」ほどホワイトハンドコーラスにふさわしい楽曲はない。
●通常の公演ならこれでおしまいだが、アンコールで「もろびとこぞりて」。まさかバロックオーケストラの伴奏でこの曲を聴くことになるとは! そしてカーテンコールでは優人さんがサンタクロースに扮して登場、独唱陣にプレゼントの小箱を配っていた。笑。
●今日は22日だから、クリスマスイブは明後日か。サンタさんはすでに日本に入国して、どこかのビジネスホテルで弁当を食べながら隔離期間を過ごしているはず。メリークリスマス。

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