March 24, 2022

川瀬賢太郎指揮オーケストラ・アンサンブル金沢の東京定期

●23日はサントリーホールで川瀬賢太郎指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の東京定期。昨年の東京定期は中止だったので、東京でOEKを聴くのは久しぶり。プログラムはOEK委嘱作品の杉山洋一「揺籃歌(自画像II)—オーケストラのための」、ショパンのピアノ協奏曲第1番(亀井聖矢)、メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」。指揮の川瀬賢太郎はOEK常任客演指揮者を務める。杉山洋一「揺籃歌(自画像II)」は、新型コロナウイルスとその変異株が発見された国々である中国、イギリス、南アフリカ、ブラジル、インドの寝かせ歌を用いた曲で、医療関係者への畏敬の念と犠牲者への哀悼が込められているという。ゆりかごが揺れるようなゆったりとしたパルスの上に、静謐で断片的な音が重なり、期待や畏れの感情を交えながらやがて力強い歌へと育ってゆく。淡々とした歩みの中に、揺籃というよりは胎動のような秘めた生命力を感じる。
●ショパンは気鋭のソリスト、亀井聖矢が華麗で自在の独奏を披露。磨き抜かれた洗練されたタッチの持ち主で、音色は非常にきらびやか、まさしく玲瓏たるショパン。ショパンにふさわしくというべきか、弱音の表現に傾いた演奏なので大ホール向きとは言えないかもしれないが、オーケストラも好サポート。白眉は抒情的な第2楽章。後半のメンデルスゾーンはキレがあって、コントラストが鮮やか、推進力にあふれた川瀬節。OEKとの相性はよさそう。特にメッセージもなくアンコールにバッハ「G線上のアリア」が演奏されたが、これはウクライナ情勢を受けての選曲なのだろう。
●OEKは世代交代期にあるようで、メンバー表を見るとだいぶベテランが卒団している。新楽団員としてホルンにアメリカ出身のアンジェラ・フィオリーニが加わるという案内がチラシに挟まれていた。これからさらにフレッシュな奏者が加わって、新たなキャラクターを獲得してゆくのだろう。
●客席はまずまずの盛況。P席が空いているのが珍しい感じ。協奏曲の後、亀井聖矢ファンと思しき若い女性たちが立ちあがって拍手を送っていた。すばらしい光景。

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