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January 26, 2023

トゥガン・ソヒエフ指揮NHK交響楽団のバルトーク、ラヴェル、ドビュッシー

トゥガン・ソヒエフ指揮NHK交響楽団
●25日はサントリーホールでトゥガン・ソヒエフ指揮N響。前半がバルトークのヴィオラ協奏曲(アミハイ・グロス)、後半がラヴェルの「ダフニスとクロエ」組曲第1番と組曲第2番、ドビュッシーの交響詩「海」。盛りだくさんのプログラムのように思えるが、N響定期は生中継があるのだから格段に長いはずはないわけで。密度の濃い曲が並んでいるということか。あるいは単にバルトークが協奏曲としては短いからか。
●バルトークのヴィオラ協奏曲ではベルリン・フィルの第1首席ヴィオラ奏者、アミハイ・グロスがソリスト。スマートかつ勢いのある演奏。この曲、シェルイによる補筆が議論を呼ぶ曲ではあるが、どう補筆しようとも、どこか推敲課程にある作品のような気がしてしかたがない。補筆よりも再創造がほしいというか……。ちなみにシェルイはこの補筆をするよりもずっと前に、自身のヴィオラ協奏曲を作曲しているのだが、以前この曲を録音で聴いたときはけっこう驚いた。ある意味、バルトークっぽい。知らずに聴いたら、バルトークの補筆をした後に作曲したのかと勘違いしてしまいそう。そして、当然といえば当然だけど、完成された作品なのだ。だったら未完のバルトークじゃなくて、シェルイのヴィオラ協奏曲を弾けばいいのに……みたいなことを思った記憶が。ソリスト・アンコールでは、N響の首席ヴィオラ奏者佐々木亮が加わってバルトークの44のヴァイオリン二重奏曲(ヴィオラ版)から第37番「プレリュードとカノン」。これは楽しい趣向。
●後半はフランス音楽でソヒエフ節が炸裂。色彩感豊かで華麗なサウンドではあるが、軽くはなく、彫りの深い音楽。ビートが明快で、ダイナミクスが広く、テンポの遅いところはじっくりと入念。「ダフニスとクロエ」第2組曲冒頭など遅めのテンポで「夜明け」というよりは「天地創造」を描くかのようなスケールの大きさ。「海」も壮観。終演後、カーテンコールをくりかえした後、いったん拍手が止みかけたが、熱心なお客さんたちが続けて、ソヒエフのソロ・カーテンコールに。