June 7, 2023

SOMPO美術館 ブルターニュの光と風 画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉

SOMPO美術館の「ブルターニュの光と風」展に行った。軽く混乱したのだが、同時期に国立西洋美術館では「憧憬の地 ブルターニュ」展が開催中。期間はどちらも6月11日まで。門外漢だからよくわからないのだが、この「ブルターニュかぶり」って、わざと? それとも偶然? クラシック音楽界でも似たようなことはよくあるわけで、今月めったに演奏されないラフマニノフの交響曲第1番がノセダ指揮N響と尾高忠明指揮東フィルでかぶってるみたいなものか。あるいは過去にはシェーンベルク「グレの歌」三連発ということもあったっけ。
テオドール・ギュダン「ベル=イル沿岸の暴風雨」
●ブルターニュ地方は半島なので海を題材とした絵がたくさん。それも荒涼とした海。たとえば、テオドール・ギュダン「ベル=イル沿岸の暴風雨」(1851)。ぱっと見、これは日本海だと思った。ブルターニュ半島というか能登半島くらいのイメージの荒波(いや、ベル=イルは島か)。ザパーン!と波が岩を打ち付ける音が聞こえてきそう。

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●こちらはアンリ・ジャン・ギヨーム・マルタンの「ブルターニュの海」(1900)。同じブルターニュの海でも印象派の洗礼を受けると、こんなにもキラキラして、こじゃれた感じになるのか。

アルフレッド・ギユ「コンカルノーの鰯加工場で働く娘たち」
●楽しいのはアルフレッド・ギユの「コンカルノーの鰯加工場で働く娘たち」(1896頃)。女子たちが腕を組んで横に並んで歩くというのは、一種の仲良し表現なのか。若い船乗りの男がそこにやってきて、イワシでいっぱいの籠を見せびらかす。ひとりの女がたまらず籠に手を出し、みんなに向かっていう。「うひょ!見て見て、このイワシ、大漁~~!」。浮足立つ女子たち。口中に広がる仮想的なイワシの蒲焼の味わい。ゴクリと唾をのむ音が聞こえてくる。イワシでナンパする男の次の一言はいかに。「おねえさんたち、イワシ一貫、握りましょうか」(んなわけない)。

ピエール・ド・プレ「コンカルノーの港」
●海を主題にしていると、付随的に「労働」というテーマが浮かび上がってくる。これはピエール・ド・プレ「コンカルノーの港」(1927)。写真ではわかりづらいが、絵具が厚塗りで力強く、重労働ぶりが伝わってくる。男たちの寡黙さとともに。