June 30, 2023

キーボードで文字を入力する

●若い頃、ワタシは音楽雑誌の編集部で働いていた。そのときに同僚と話題にあがったのが「コピー機のなかった時代に、いったいどうやって雑誌を作っていたのか」。あらゆる編集作業にコピー機は欠かせなかったが、あきらかにコピー機のない時代から雑誌が刊行されている。これは謎すぎる謎。が、今にして思えば、当時はPCがなかった。PCなしで雑誌を作っていたことのほうがよっぽど謎かもしれない。
keyboard_icon2.gif●そんな石器時代に、手書き文字を大量に書くのは大変だったので、ワタシは家から私用のワープロ専用機(というものが存在した)を持参して、これをカタカタと打っていた。そのほうが入力が楽だし、誤植も圧倒的に減る(まだデータ入稿ではなく、プリントアウトを入稿していたアナログ時代)。タッチタイピングはしっかり練習してあったので、高速で入力できた。
●が、あるとき、ベテラン編集者にこんなことを言われたんである。「飯尾くんね、それは日本じゃ普及しないと思うよ」。は? なんで。そんなわけないじゃん、と一瞬思った。が、「欧米ではもともとタイプライター文化があったでしょ。だからみんながそうやってキーボードを打てる。でも普通の日本人が一からそんな技術、身につけるわけないじゃないの」。ムッとしたけど、内心ではその指摘は一理あると思った。痛いところを突かれたなと。
●それが今やGIGAスクール構想で、小学生がランドセルにChromebookを入れて登校するようになり、みんな当たり前のようにローマ字入力している。時代は変わる。
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