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November 20, 2023

トゥガン・ソヒエフ指揮ウィーン・フィルのシュトラウス&ドヴォルザーク

トゥガン・ソヒエフ指揮ウィーン・フィル●19日はサントリーホールでトゥガン・ソヒエフ指揮ウィーン・フィル。この日がツアー最終日。プログラムはリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」とドヴォルザークの交響曲第8番。今回の来日公演の曲目でいちばん惹かれたのが「ツァラトゥストラ」だったので、この日に。おなじみオットー・ビーバ博士のプログラムノートに、ウィーン・フィルはスタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」にカラヤン指揮による録音を提供したという一文があって、なんだか感慨深い(じゃないすか?)。
●前半の「ツァラトゥストラはかく語りき」はウィーン・フィルならではの柔らかく豊麗な響きを堪能。力みがなくまろやかで、官能性を感じるほど。ソヒエフのカラーよりもオーケストラのキャラクターが前面に出ていた感。前半ながら曲が終わった後、客席に完璧な沈黙がしばらく続いた。後半のドヴォルザークはぐっとソヒエフの個性があらわれた演奏だったと思う(特に第2楽章以降)。第1楽章、序奏のチェロがスモーキーで芳しい。主部はテンポ速め。第2楽章は彫りの深い音楽でエモーショナル。この日の白眉か。ソヒエフらしい、粘性の高いマグマみたいな流体がゆっくりと動き出して、やがて大きな流れが生み出されるイメージ。エネルギッシュな終楽章が終わるやいなや、盛大な喝采。
●本編が少し短めだったが、アンコールが2曲も。ヨハン・シュトラウス2世のワルツ「芸術家の生活」とポルカ・シュネル「雷鳴と稲妻」。ソヒエフは快適そうにオーケストラをドライブ。これはどう見ても近い将来の「ニューイヤー・コンサート」に招かれるとしか。いよいよソヒエフが大指揮者の域に到達しつつあるのだと感じる。楽員退出後も拍手が鳴りやます、ソヒエフとコンサートマスターのライナー・ホーネックがいっしょに登場、カーテンコールとスタンディング・オベーション。