●21日はサントリーホールで上岡敏之指揮読響。プログラムはショパンのピアノ協奏曲第2番(イーヴォ・ポゴレリッチ)とショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」。開演前からニット帽のポゴレリッチがピアノに向かってポロンポロンと和音を鳴らしているのは、もはやおなじみの光景。恒例の第0部というか。舞台袖に下がるときに疎らに拍手が起きた。あれはウォーミングアップなのか、演奏行為なのか。
●ポゴレリッチによるショパンのピアノ協奏曲第2番といえば、ラ・フォル・ジュルネ2010での伝説的怪演が忘れられない。異様に遅いテンポで40分以上かかったうえに、第2楽章をアンコールしたため、終了時間を30分以上超過してしまい、途中で次々とお客さんが次の公演に向かって走り出したという5000席ソールドアウトの公演だった。で、それから時を経た今、ポゴレリッチのテンポはそこまで遅くはない。でも、基本線は変わらないかな。自在の独自様式というか。強靭な打鍵から澄み切った音色が生み出される。ベースとなる打鍵が強く、強弱の幅がきわめて大きく、彫りの深い音楽。時の流れが止まったかのような第2楽章の幻想性が白眉。そして、今回も第2楽章をアンコールしてくれた。いつものように譜面あり、譜めくりあり。オーケストラは献身的。
●で、前半も強烈だったのだが、実は後半の強烈さは前半の記憶を上書きするほどだった。ショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」、かなり久しぶりに聴いたけど、本当に恐ろしく絶望的な音楽で、ひたすら戦慄。集中度が異様に高く、鋭く咆哮する金管セクション、寂寞としたコールアングレの大ソロなど鮮烈。すさまじい緊張感に貫かれ、予想外に長大な音楽に。終わった瞬間のマエストロはエネルギーを使い果たしたといった様子で、抜け殻のよう。終演は21時半を回っていた。
January 22, 2025