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June 2, 2025

ギエドレ・シュレキーテ指揮NHK交響楽団と藤田真央

ギエドレ・シュレキーテ NHK交響楽団
●30日はNHKホールでギエドレ・シュレキーテ指揮N響。ソリストに藤田真央が登場するとあってか、全席完売、当日券なし。3600席のNHKホールで翌日の公演と合わせて2公演分が完売するというすさまじい人気。プログラムは前半がシューベルトの「ロザムンデ」序曲、ドホナーニの童謡(きらきら星)の主題による変奏曲(藤田真央)、後半がリヒャルト・シュトラウスの「影のない女」による交響的幻想曲と「ばらの騎士」組曲。ドホナーニの変奏曲で埋まるのだ。
●それにしてもドホナーニのきらきら星変奏曲、初めて聴いたけどびっくり。遊び心満載の曲、と言っていいのかな。分厚いオーケストラによるによるワーグナーばりの悲劇的な序奏がしばらく続いた後で、独奏ピアノが「きらきら星」を奏でるという壮絶なギャップ。軽快華麗な独奏の妙技がくりひろげられ、ワルツ、行進曲、パッサカリア、コラール、フーガなどが盛り込まれ、作曲者の「なんだって書けるぜ的」な自慢げな表情が浮かぶ。これを鮮やかに、しかし軽々と弾くソリスト。力みのないタッチだが、こういう曲であればNHKホールの巨大空間もそれほど不利ではない。大喝采にこたえて、アンコールにセヴラックの「ポンパドゥール夫人へのスタンス」。これも意表を突いた選曲だが、しっとりとしてしなやか。
●指揮のシュレキーテはリトアニア出身の新鋭。オペラで実績を積んでいる様子。全身を使い、棒を大きくシャープに振る。なんというか、動き出しの加速度が大きい感じ。冒頭、「ロザムンデ」序曲はもうひとつオーケストラと噛み合っていない気もしたが、後半が彼女の本領だろう。「ばらの騎士」は速めのテンポでさっそうと。ウィーン情緒たっぷりというよりは、表からも裏からも光を当てたようなまばゆい「ばらの騎士」で、覇気のある演奏に。
●毎回思うけど「ばらの騎士」組曲はとってつけたような終結部が不思議な感じ。本編の第3幕の終わり方は「はいはい、お話はもうおしまい、とっとと帰った帰った」みたいな照れ隠しが感じられて粋なのに。