Books: 2005年10月アーカイブ

October 28, 2005

「オヤジ国憲法でいこう!」(しりあがり寿+祖父江慎著/理論社)

オヤジ国憲法でいこう!●この世からオヤジは絶滅して欲しい。若者ならそう思う。ところが、そう言っていた若者(♂)も、生きている以上はいずれオヤジになってしまうんである。で、気づく。実はオヤジっていいじゃん! そういう元若者たるオヤジから、悩めるティーンエイジャーに向けて書かれたのが「オヤジ国憲法でいこう!」(しりあがり寿+祖父江慎著/理論社)であって、たしかに本文にいちいちルビが振られているのだが、でもこれ、「自分はまだ若者だ」と思ってる人なら、年齢にかかわらず読んでいいかも。
●前文で「オヤジは、底抜けに自由な存在である」とし、一方「ヤングは、ほんのちょっとしたことに、『もう死んじゃいそう』というくらい、ヘロヘロになるまで悩む不自由な生き物である」と述べられている。そんな不自由な生き物である若者のみなさんに向けて掲げられた、「オヤジ国憲法」の5条がこちら。

第1条:個性ハ 必要ナシ
第2条:友達ハ 大切ナモノニアラズ
第3条:恋愛ハ ロクナモノデナシ
第4条:真理ヤ理想ハ 幻想ナリ
第5条:ヤングノ敵ハ 隣室ニアリ

●これを見て、「なんだ、そんなの当たり前じゃん」と思った人はフツーのオヤジ。「ええっ! なに言ってんの??」と思った人は若者。ホントに。最後の「隣室」ってのは家族のこと、念のため。
●たとえば「個性」。みんなすぐ「自分探し」とか「本当の自分」とか言うじゃないっすか。あと仕事とかスポーツとかで「自分を表現したい」「自分らしく~したい」って臆面もなく言ったり。これ聞くたびに、オヤジどもは「はぁ? そんなささやかなテメーの『自分』になんて、だーれも興味ねーよ」って心のなかで思ってるんである。あなたもワタシも全然非凡な存在じゃない。どこも変わったところはないし、特異なところもない。われわれはドラクエの主人公みたいに勇者ロトの血はひいてなくて、本当は山や森に無数に棲息するスライムA、B、C、D、EのなかのスライムCくらいの存在である。だから個性だのオリジナリティだのに自分の価値なんか求めてたら、社会じゃ即死確実。ってくらいに思っておかないと、基本的な他者への敬意を必要なときに欠いちゃったり、不躾な他人の批判に直面してボロボロに傷ついたりする。大事だよなあ、「個性ハ必要ナシ」。あ、これは「自分を卑下する」とか「人生をネガティヴに見る」っていうのとはまるっきり別物っすよ(むしろ人生の超肯定)。
●でもなー。若者なのにこんな憲法に共感しちゃったら、それはそれでかなりマズい気がする。一から十まで明後日の方向に誤解するのが普通かも、特にティーンエイジャーだったら。ていうか、これってだれが読む本なんだろ。

October 19, 2005

「サッカーでメシが食えるか?」(スタジオダンク編著/ノースランド出版)

サッカーでメシが食えるか●こりゃ、すげえ取材量だ!と感心したのがこの本。「サッカーでメシが食えるか?」という題の通り、サッカーに関するありとあらゆる職業人に取材した仕事案内で、なんとその年収や待遇までおおむね公開しちゃっている。年収欄はサッカーボール一個で200万円、5個満点でいくつ、みたいな感じで結構生々しい。一見、本屋さんの実用書コーナーに並ぶ若年層向け競技入門書みたいな体裁をしていながら、まさかこんな内容がつまっていようとは。
●で、どんな仕事があるのか。そりゃあJ1のプロ選手から、アマチュア選手、審判、コーチ、トレーナー、フロント職員、このあたりは当然。さらにはオフィシャル写真管理業、スカパーのプロデューサー、WOWOWのアナウンサー、サッカー誌編集長、ライター、カメラマン、翻訳&コーディネイト業、国立競技場職員、toto販売職員、スポーツメーカー社員、アマチュアサッカーマネージメント業、人工芝メーカー、サッカーバー経営者、(主審用の)笛職人、さらにはマリノスクイーンまで(笑)。いやー、よく取材した。思うにこの取材量の1/3でも楽に一冊の本は作れる。きっと編集者さんは若くて情熱のある方にちがいない。
●で、サッカー界はトップレベルの選手を頂点に、下は無報酬のアマチュアクラブ職員まで裾野が広がっている。とはいえなあ。それぞれの職業に添えられたサッカーボールの個数をついつい数えてしまうのだが、4つ5つはぽんぽん出てきて、日本のサッカー界は希望に満ちてるなって気がする。これと同じ企画を斜陽の業界でやったら若者逃げ出すこと必至っすよ(爆)。

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