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Books: 2019年11月アーカイブ

November 29, 2019

十二国記「白銀の墟 玄の月」第3巻&第4巻 (小野不由美著/新潮社)

●さて、18年ぶりに出た「十二国記」シリーズの最新作「白銀の墟 玄の月」、先日の第1巻&第2巻に続いて、第3巻&第4巻も読み切った。いやー、長かった。読みやすいけど、長かった。第1巻と第2巻はストーリーがぜんぜん展開しなくて、ずーっと人探しをしていて、あっちを探したら見つからない、こっちにいるかと思って来てみたらやっぱりいなかった、みたいな出来事の連続だった。
●で、後半の第3巻&第4巻。どんどん話が動き始めた。そして、第4巻に入ると猛烈な勢いで話が畳まれる。なにしろ登場人物が多いので、最後は「えっと、この人はだれだっけ……?」みたいな事態にもなりがちだが、なんだか途中で物語の設計図が変更されてしまったかのような印象を受けるのはワタシだけだろうか。特に阿選と琅燦のふるまいに違和感が残っていて、「十二国記」世界観を揺るがすような大きな展開があったかもしれないのに、前半が長すぎてうやむやになってしまったような気が。でも、個別にいいシーンはたくさんあったので、読書の楽しみは存分に味わった。講談社X文庫ホワイトハート以来の付き合いという意味では、映画「スター・ウォーズ」に匹敵するくらいの気長なシリーズ。もっと読みたいけど、やっぱり話がどんどん動いたほうが「十二国記」らしいかな。

November 5, 2019

「秋本治の仕事術 『こち亀』作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由」(秋本治 著/集英社)

●世の中に「仕事術」を謳った本はいくらでもあるだろうが、これほど説得力のある一冊もない。なにしろ「秋本治の仕事術 『こち亀』作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由」(秋本治 著/集英社)だ。週刊少年ジャンプの「こちら葛飾区亀有公園前派出所」を40年間、全200巻に及ぶ連載を成し遂げた著者が、仕事の秘訣を語る。マンガ家ならずとも、仕事についての金言のオンパレード。特になにかを書いたり作ったりする人にとっては、深く共感する部分があったり、絶対にまねできない偉大さに圧倒されたりと、おもしろく読めるのでは。
●著者の仕事のスタイルでなにより印象的なのは、規則正しさ。「こち亀」主人公の両津勘吉のキャラ設定とはまったく違って、朝9時から19時までが勤務時間で、その間に昼食と夕食のための時間を1時間ずつとるというスタイル。アシスタントもみんな同じ時間で働いていて、タイムカードで出退勤を管理をする。残業はなるべく少なくする。休日もとる。しかも連載のストックを常に貯めておいて、急な予定にもすぐに対応できるという超優秀さ。考えてもみれば40年も週刊連載を続けられたんだから、〆切間際の火事場の馬鹿力なんて頼りにしているはずはないか。世の中、たいていの人は規則正しく働いているわけで、一見すると当たり前のことを言っているようでいて、「ネタがないと感じたことは一度もなかった」「デビューした後も苦しかった記憶はほとんどない」とさらりと書かれた一言に天才性を感じる。
●特にインパクトがあった言葉をいくつか。

「納期のサバを読まれたら それよりも早く仕上げて渡す」

これは神の領域。編集者には確実に刺さる。文字原稿でも編集者側はサバを読むものだが、それは編集者は複数の著者やプロジェクトを担当しているのに全員にギリギリで原稿を送られると進行が崩壊するから(校閲や組版がパンクする)。いろんな事情を勘案して、「本当の納期」が同じでも、著者ごとに異なる〆切を伝えたりすることもままあるはず。なのに、想定よりも早く原稿が送られてきたら……。

「無茶な仕事を振ってくる人も、その人なりの事情があるはず。別に怒るようなことではありません。相手の事情を察して受け止め、冷静に対処できるように、あらかじめこちらが余裕を持っていればいいだけなのです」

前項が神ならこちらは仏。一般に、編集者側の事情は著者側からは見えにくいもの。特に「組織の事情」みたいなものは、なかなかわからない。

「仕事をはじめる前にコーヒーを飲んで、テレビを観て、これをやって……などということはなく、とにかく座ったら描く」

もうひれ伏すしかない。自分の周囲でも仕事の早い人はみんなそんな感じ。準備運動とか儀式みたいなものがなくて、すっと本質業務から入るイメージ。

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