Disc: 2017年1月アーカイブ

January 26, 2017

ドゥダメル指揮ウィーン・フィル・ニューイヤ・コンサート2017

●ドゥダメルの指揮で話題を呼んだ今年のウィーン・フィル・ニューイヤ・コンサート2017。選曲的にもニューイヤー・コンサート初登場の曲が8曲も入っていて新鮮な感じがあったんじゃないだろうか。
●なかでも印象に残ったのは、ワルトトイフェルの「スケーターズ・ワルツ」かな。この曲、ちゃんと最初から最後まで聴いたのは初めてかも。町のスケート場とかでBGMでかかっている曲というか、ホームミュージック的な印象しかなかったんだけど、こんな曲だったとは。この曲って序奏が付いているんすよね。で、国内盤CDの解説でも言及されているけど、冒頭ホルンがまるでブルックナーの交響曲第3番の冒頭トランペット主題みたい。ドキッとする。あと、曲全体としては思った以上にウィンナワルツ風なのだな、と。
●ニコライのオペラ「ウィンザーの陽気な女房」から「月の出の合唱」も初登場曲。この合唱は夜12時になったことを知らせる場面の曲なんだとか。鐘が鳴るのがそうなのか。プロコフィエフのバレエ「シンデレラ」のなかの「真夜中」と並ぶ、「深夜零時名曲」として記憶しておきたい。
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●ニューイヤ・コンサート仮想批評。

2017 一昨年をわずかに凌駕する出来ばえ
2016 3年連続で偉大な年となった
2015 100年に一度と評された2011年を上回る出来
2014 過去最高と言われた2011年に匹敵する出来ばえ
2013 屈指の出来と呼ばれた2009年を思い起こさせる
2012 100年に一度といわれた昨年に迫る
2011 過去100年で最高の出来
2010 まれに見る出来だった昨年に迫る
2009 ここ50年でもっとも素晴らしい出来ばえ
2008 21世紀最高の出来

●さて、最高なのはどれでしょう。

January 12, 2017

価格と価値

●昔、ある音楽雑誌のベテラン編集者がこんなことを言っていた。「CDはぜんぶ同じ値段で売ってるだろう? あれはおかしいと思うんだよね。だって1回しか聴かないCDと、何百回も繰り返し聴くCDが同じ値段なんて、ヘンじゃないの」
CD棚●いやー、まあ、たしかに購入者にとっての価値と価格が比例すべきであればその通りだろうし、ワクワクしながら買った一枚が期待外れだったときにそういうことを考えたこともなくはない。でもムリじゃん。そうなったら、買ったけど封も開けずに積まれてるCDはタダなわけ? 一見もっともらしいけど、なんだかその考え方って腑に落ちないなー、てなことを、たぶんワタシは思った。
●でも、そのベテラン編集者の言ってたことは、半ば現実になった。ただし、裏返しになって。対価を払う側ではなく受け取る側が、ストリーム配信で再生された回数に応じた報酬を手にするようになったわけだ。そして、聴く側はSpotifyのような形で「買ったけど封も開けずに積まれてるCD」と同等のものを大量にほぼ無料で手にしている。ここまでの事態を予見した人には会ったことがない。

January 10, 2017

ストリーミング・サービスとバヴゼのモーツァルト

●たびたび話題にしている定額制ストリーミング・サービスについてだが、クラシックを聴くことに関して言えば、唯一日本語対応ができているNaxos Music Libraryを別格とすると、今のところApple Music、Spotify、Google Play Musicの順で使用頻度が高い。「クラシックの新譜をチェックしよう」と思ったときに、まずまず頼りになるのがApple Music、(タイトル数が)頼りないけど一応できなくはないのがSpotify、そもそもそういうコーナーが見当たらないのがGoogle Play Music。サービス開始時から契約しているものの、このままなら契約を解除するつもり……。
●と、思っているのだが、困ったことにたまにGoogle Play Musicじゃなきゃ聴けない音源もあるんすよ。最近だと、CHANDOSに録音されたジャン=エフラム・バヴゼが弾くモーツァルトのピアノ協奏曲集。昨年だったか、バヴゼがアシュケナージ指揮OEKと共演したときに、ピアノ協奏曲第17番で自作と思われる攻めたカデンツァを弾いていて「むむ!」と思ったのだが、おそらくそれと同じものがCHANDOSの録音で聴ける(指揮者とオケは別)。ただ、この録音、AppleやSpotifyだと一部トラックしか聴けなくて、なぜかGoogleだとアルバム全体を聴ける。こういうサービスごとの対応の違いはなにが原因なんすかね? アーティストやレーベルが「ウチは配信なんか認めない。モノを売りたいんだ」というポリシーがあって配信では丸ごと聴かせないというのなら(是非はともかく)まだ理解できるんだけど、GoogleではOKなのにAppleやSpotifyでは聴かせないとする理由がわからない。あるいは深い理由なんかなくて、実務上の段取りの問題にすぎないのかも?
●それで、このバヴゼの録音なのだが、ピアノ協奏曲第17番の第1楽章と第2楽章のカデンツァ以降の部分は独立したトラックとして区切られている。ここでバヴゼは自作カデンツァを弾いているが、この曲には幸いモーツァルト自身のカデンツァも残っている。そこで、ボーナストラックで第1楽章と第2楽章のモーツァルト自身のカデンツァ以降が用意されている。つまり普通にCDをかけるとバヴゼのカデンツァが演奏されるが、「やっぱりモーツァルト自身のバージョンで聴きたいよ!」という人はCDのプログラム再生機能を使って、バヴゼのカデンツァを迂回してモーツァルト自身のカデンツァにジャンプすることができるわけだ。
●こういう趣向はそれほど珍しいものではなかったと思うけど、CD時代が終わりストリーム配信が主流になると、せっかくの趣向がイマイチ生きてこない(Google Play Musicのプレイリスト機能を駆使してCD同様にトラック順をコントロールすることはできなくはないのだろうが、かなりめんどくさい感じ)。じゃあどうすればいいのかというと、たぶん、正解は「2種類の演奏をまるごと用意する」なんじゃないだろうか。一枚のアルバムに両方を入れてもいいし(CDと違って長さに制約はないんだし)、あるいはアルバムごと2種類用意しても大きな不都合はなさそう。
●「バヴゼ」って名前の濁点率の高さにたじろぐ。

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