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Disc: 2026年1月アーカイブ

January 9, 2026

ブルッフの弦楽八重奏曲

マックス・ブルッフ
●ブルッフ(1838~1920)の弦楽八重奏曲? そんな曲、あったっけなあ……くらいの存在感だと思うが、わけあって録音を聴いてみたら、たいへんすばらしい。この曲、ライブでは聴いたことがないと思う。あまり人気がない理由はいくつもあって、作曲が1919年から1920年にかけて。つまりブルッフが82歳で世を去る直前に完成している。作風は完全に時代から取り残されたロマン派のスタイル。ブルッフ本人がもっと前の段階から自分が忘れ去られつつあることを自覚していて、若い頃に書いたヴァイオリン協奏曲第1番の作曲家としてのみ名を残すことになるのではないかと危惧していたそうだが(そして実際それはほぼ当たっている)、1920年ともなると完全に過去の人で、弦楽八重奏曲は出版もされないまま楽譜がいったん消失し、1988年になってBBCの書庫からパート譜が見つかったという。出版は1996年だから、Windows95より新しい。
●で、この曲って弦楽八重奏曲といっても、メンデルスゾーンみたいな弦楽四重奏×2じゃないんすよね。一台、チェロの代わりにコントラバスが入る。ヴァイオリン4、ヴィオラ2、チェロ1、コントラバス1という八重奏。なぜ、メンデルスゾーンの超傑作に合わせないのか。きっと音楽的な必然があったんだろうけど、実務的な観点からいえばそこはふつうにチェロ2にしてくれれば、格段に演奏会でも録音でもとりあげやすかったはず。ナッシュ・アンサンブルの録音(Hyperion)のブックレットによると、1937年にBBCは弦楽八重奏曲を放送に乗せたそうなんだけど、そのときはコントラバスのパートを1オクターブあげてチェロ2台で済ませたのだとか。
●スケルツォ楽章がなくて、急─緩─急の3楽章構成。第1楽章は後期ロマン派の香りもいくぶん漂ってるけど、先に進むともっと保守的になっていく。第2楽章冒頭は葬送行進曲風で、告別の音楽にも聞こえる。終楽章は堂々とメンデルスゾーンくらいまで遡っていてすがすがしい。82歳でこれだけの創作力を残しているのもすごい。

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