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Disc: 2026年7月アーカイブ

July 13, 2026

イモージェン・ホルストの「不運な旅人」

●Apple Music Classicalのニューリリースのコーナーを眺めていたら、ダグラス・ボストック指揮南西ドイツ室内管弦楽団のアルバム British Music for Strings IV (CPOレーベル)が目に留まった。聴いてみると一曲目のホルストの The Unfortunate Traveller なる曲がなかなか心地よい。民謡調の旋律が用いられた快活な組曲。でも、ホルストにこんなタイトルの曲、あったっけ? 定訳はあるのかなと思って調べてみたら、自分の思い違いに気がついた。これ、よく見たらI.Holstって書いてあるよ! グスターヴ・ホルストじゃなくて、娘のイモージェン・ホルスト(1907~1984)の曲だ! てっきり、お父さんの曲かと思った。
●曲名はトマス・ナッシュのピカレスク小説「不運な旅人」(邦訳はあるけど入手困難)に由来するのだとか。作曲は1929年で、イモージェンの初期作品。王立音楽大学の卒業制作として書いた金管バンドのための組曲を弦楽オーケストラ用に編曲したもの。いったん失われた楽譜が発見されて、近年に再評価された。イモージェンという人は大変に有能な人だったようで、ブリテンのアシスタントを務め、オールドバラ音楽祭の芸術監督として音楽祭を牽引する一方で、父親の音楽遺産を後世に伝えるための職務にも尽力し、父の作品目録の編纂や楽譜の校訂、伝記の執筆、指揮に奔走し、おかげで作曲活動に割ける時間は限られていたようだ。しかし、女性作曲家再評価の機運に乗って、こうしてレコーディングも増えつつある。「不運な旅人」は初期作品だが、成熟期以降の作品は NMCレコーディングスの Imogen Holst String Chamber Music などで聴くことができる。
●イモージェンはホルストの一人娘で、生涯独身だった。したがって、ホルストに孫はいない。若き日のイモージェンは後に詩人となるマイルズ・トマリンと親密な間柄だったが、なんらかのすれ違いから結婚に至らず、後年になってブリテンに「もしマイルズからプロポーズされていたら、結婚していただろう」と打ち明けたという。

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