May 20, 2003

「ミーン・マシーン」はサッカー映画の伝統を守った

●以前から思っていたのだが、野球映画に比べるとサッカー映画というのは質でも量でもずいぶんと見劣りする。いや、そりゃあることはある。「少林サッカー」とか「シーズン・チケット」とか、傑作といえる映画が。しかし、本格サッカー・ファン(笑)のワタシとしては、シリアスな試合シーンを収めたサッカー映画も観てみたい。スタローンの「勝利への脱出」みたいなウソ・サッカーじゃなくて(ましてや中居正広の「シュート!」みたいなお笑い青春映画じゃなくて)、本物のサッカーの香りを映画ならではのフィクションのなかにファンタジー豊かに盛り込んだ名作を観たい。そんな映画があってもいいはずだ。
●で、ついに出たかと思ったですよ→ヴィニー・ジョーンズ主演の「ミーン・マシーン」。ヴィニー・ジョーンズといえばガイ・リッチー監督の「スナッチ」や「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」。技巧的で洒落た映画の中で、脇役ながら強面の渋いオッサン役として、実に味わい深い存在感を醸し出している。しかもこの人、役者になる前は元ウェールズ代表という実績のあるサッカー選手だったのだ。「プロ」なんていうレベルじゃない、代表選手でイングランドのプレミアリーグでプレイしていたんである。そのヴィニー・ジョーンズが八百長でサッカー界を追放された元選手の囚人役として登場、刑務所で囚人チーム対看守チームの熱すぎる試合が繰り広げられるっていうんだから、こりゃ期待するなというほうがムリ。
●と胸躍らせながら観ると、これがかったるいB級映画で、筋は凡庸、役者は大根、アイディア不足、つまらないギャグで、しっかりと「本格サッカー映画に名作なし」の伝統を守ってくれているのだ。「スナッチ」じゃあんなにカッコよかったヴィニー・ジョーンズがボロボロに。うう、悲惨。ただし、映画としては駄作でも、サッカー・シーンはお見事。ヴィニー・ジョーンズが巧いのは当たり前だが、他のメンバーもかつてないほどちゃんとサッカーしている。なんだかこれ見てるとボールを蹴りたくなるんだよなあ。いいなあ、サッカー。あ、悪口言いながら、結局楽しんでるじゃないか、ワタシは(笑)。
●字幕について1つ。Managerを「マネージャー」と訳してはいけない。日本語でマネージャーだと女子マネみたいな雑用係になりかねないが、これは「監督」である(アーセナルのヴェンゲルやマンチェスター・ユナイテッドのファーガソンがManager)。監督と訳さないと、気のいい小柄な黒人囚人がManagerを引き受けたおもしろみや、選手交代を巡ってマネージャーとオーナーの意見が対立したシーンで、審判がマネージャー(監督)に従う意味がわからない。(05/20)

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