October 29, 2003

「あなたの人生の物語」

●巷の評判がとてもいいので、テッド・チャンの短編集「あなたの人生の物語」(ハヤカワ文庫SF)を読んだ。なるほど、これは確かにおもしろい。ワタシが特に気に入ったのは「地獄とは神の不在なり」と「七十二文字」。前者は現代風の社会に自然災害のごとく天使が降臨して、そこに奇蹟と災厄が同時に起きるという世界を描いたもの。後者は「言語」が物質に命を吹き込むというゴーレム的な自然法則にのっとった世界に訪れた「ある危機」を描く。どちらもアイディアが非常に優れている。
●あとは「バビロンの塔」もいい。空という天井に穴をあけるためにバベルの塔を築いた人々の物語。こうして書いているとどれもファンタジー風の話に思えるんだけど、そうではなくてSFそのもの。
●表題作もアイディアは秀逸なんだけど、「いい話」とされてしまいそうな物語部分に受け入れられないところがあって、ワタシは苦手。でも一冊の短編集としては力強くオススメ。読むしか。(10/29)

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