December 14, 2004

エリオット・カーターの弦楽四重奏曲

●エリオット・カーターの弦楽四重奏曲全曲演奏会(第一生命ホール)を聴いてきた。演奏はアメリカのパシフィカ・クァルテット。弦楽四重奏曲第1番から第5番まで一晩で演奏してしまうという恐るべき企画で、しかも作曲者のインタヴュー・ビデオの上映まであって、近年ニッポンでこれほどエリオット・カーター密度が高まった時空がほかにあったであろうか、いやない。
●クラシック音楽ファンの間でも、こういう「現代音楽」らしい現代音楽つうかゲンダイオンガクの話題はなかなか通じない。ていうか、クラシック音楽ファンに通じなかったら、誰に通じるのだって気もするが。なので開き直って、自分向けの寝言をメモしておこう、帰宅が遅くなって時間もないし。
●カーターは現代音楽村のなかでは穏健派なんだけど、調性も明快なメロディもない音楽なので、一曲演奏するごとに聴衆の数が減ってしまう(比喩じゃなくてホントに)。現代音楽全般に言えることとして、これを「まだ×××の音楽が十分に受容されていない」的な言い方がされることがあるが、30年経っても50年経っても受容されていないのは、「まだ」なのではなくて、「もう」来ないと考えるのが自然だろう。実際「まだ」どころか、「ゲンダイオンガク懐メロ」的な側面があると思った。しかし偉大な作曲家への敬意を欠くのはまちがいで、たとえばカーターの音楽に大きな慰めを得る精神というのは確かに存在する。個人的には無調の音楽は若者のための音楽だと思っていて(感受性が未来に向かって開かれているからでは決してない。ある種の余裕があるから受容できる)、仕事や勉強ではなく自分の楽しみにエリオット・カーターを聴くのは主に20代までじゃないか、根拠レスだけど。5曲のなかでは、第4番がいちばん安心して聴けて他人に薦めるならこれ。少し力の抜けたような第5番もいい。第2番と第3番はおもしろいけどそろそろもう疲れる、第1番は長すぎ(40分)。文脈が追えない長い作品はどんな曲でも退屈してしまう。あと、一晩で全曲演奏したパシフィカ・クァルテットは化け物。

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