January 28, 2007

ブリュッヘン/新日フィル、18世紀オーケストラ・オルタナティヴ、ではなくて

●すみだトリフォニーホールへ。フランス・ブリュッヘン指揮新日フィルで、シューマンの交響曲第4番(初演版)とベートーヴェンのバレエ音楽「プロメテウスの創造物」(一部省略)。前回の同コンビ、ってもう一昨年なのか、ラモー、モーツァルト&シューマン2番で、18世紀オーケストラ感がすさまじく高いのに驚いたのだった。でも本日はそれが薄まって、もう少し慣れたというかリラックスしたというか、平時の音楽だった、でもそれってリアリズムなのか、2回目だからと自分で創作してる脳内物語なのか。
●シューマンの作品のなかでも、交響曲2番および4番の鬱屈した内向きのロマンティシズムをワタシは特に好んでいて、曲想からオーケストレーションまで、どこにもスペクタクルがない、太陽がさんさんと照りつける晴れ上がった一日に、日が傾いてからようやく寝床から起きてきて、雨戸も開けずに引きこもって詩でも詠む、みたいなロマンティシズムの真髄を味わえると、勝手に共感を寄せている、そしてこの日もブリュッヘンの大きな掌の魔術によって鬱々とこれを満喫した。さらに続く「プロメテウスの創造物」の非連続ドラマ体も。
●ブリュッヘンは老いていた。年をとったから音楽が枯れるってのはウソだってのは、昨秋ウィーン・フィルを指揮したアーノンクールが証明していた。あのときはケンカしたら気迫のみならず腕力でも負けるなって思った、70代の爺相手に。でもブリュッヘンは年相応以上に枯れてた。18世紀オーケストラの初来日だっていつだっけ、80年代に最初に聴いたとき、すでにブリュッヘンは白髪で長身痩躯、猫背で前かがみになりながら大きな掌を使って指揮するスタイルだったように記憶してて、今と同じといえば同じなんだけど、でもその間に来日するごとに少しずつ時は向こう側にもこちら側にも流れてて、今は老ブリュッヘン。静かだ。このブリュッヘンを聴けてよかった。誰もカウカソス山の山頂に磔にされたプロメテウスのような永遠性を望んではいない。

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【2007年1月28日(土)15:00† 第412回定期/すみだトリフォニーホール】 ●シューマン:交響曲第4番ニ短調 Op.120(初稿) ●ベートーヴェン:バレエ《プロメテウスの創造物》 Op.43 より ⇒フランス・ブリュッヘン/新日本フィルハーモニー交響楽団 待ちに待ったる... 続きを読む

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